Last-modified: 2016-03-27 (日) 11:39:14 (508d)

【M16(小銃)】(えむいちろく(しょうじゅう))

Colt M16.

アメリカ軍の制式小銃として装備されている突撃銃
多数のバリエーションが存在し、資本主義諸国家でもっとも有名な銃の一つに挙げられる。

基本設計はフェアチャイルド社の小火器部門として立ち上げられた、アーマライト・ディビジョン・オブ・フェアチャイルド・エンジン・アンド・エアプレーン・コーポレーション(以下アーマライト)のチーフエンジニアで、海兵隊出身のユージン・モリソン・ストーナーが担当した。

使用する弾薬は5.56mmx45(.223)弾(ちなみに、この仕様の弾丸を世界で初めて用いた銃である)。

それまでの軍用銃では、一般的にと木がおもな素材であったのに対し、アルミ合金とプラスチックを全面的に採用する事で大幅な軽量化を図っているのが特徴であり、アメリカ空軍にSAC用火器として制式採用された初期のタイプ(M16)では、空マガジン付きでの重量は3kgに満たなかった。

関連:AR-18

初期の開発経緯

本銃のルーツは、1950年代にアーマライトが開発した「AR10」にさかのぼる。
この銃は、アルミ合金製レシーバーやプラスチック製ストック&ハンドガード、さらに初期の試作品ではチタン製バレル(後に耐久性不足からスチール製に変更)等の素材や、発射ガスの一部をボルトキャリアーに直接吹き付けることでボルトを後退させるリュングマン・システムの採用によりガスピストン周りの部品を廃する等、軽量化に徹底して拘った設計となっており(現在のM16A2より軽い)、アメリカをはじめ各国軍にオファーされた。
しかし、登場したのが1955年と遅く、その頃には、すでにアメリカのM14をはじめ、各国の正式採用銃の趨勢はほぼ決まりつつあったため、大量採用には至らなかった。

一方、同時期にアメリカ陸軍で行われていた、M14の後継火器となる予定であったSPIW(特殊目的個人火器)プロジェクトは、あまりに過大な要求スペック*1により、遅々として進まずにいた。
そこで1957年、陸軍はストーナーにAR10の小口径化を打診、これを受けて1958年初頭、後のM16の原型となるAR15が完成し、軍にテストされることになった。
同時に、ウィンチェスターやスプリングフィールド造兵廠からも小口径弾を使用するライフルのプロトタイプが提出されたが、それらは単にM2カービンやM14のサイズ違いに過ぎず、操作性やフルオートマチック射撃時の安定性等、AR15の優位は揺るぎなかった。
しかし、弱小メーカー製の革新的ライフルに対する、保守的なアメリカ陸軍の対応は冷淡であり、またアーマライト自体が軍への納入に対応できる生産設備を持っていなかったことから、1959年末、フェアチャイルドはアーマライトの持つAR10・AR15の製造権をコルト?(コルト・パテント・ファイヤーアームズ)社に委譲し、以後の製造販売はコルト?社が受け持つことになった*2

制式採用

その後、本銃は1962年にアメリカ空軍がSAC用火器として採用(このときにM16の正式名がついた)、合わせて当時戦争の激化しつつあったベトナムへテストのために送られ、ここで挙がった問題点を元にさらなる改良が施された。

軽量で射撃の容易なM16は、陸軍の実戦テストにおいてもおおむね好評ではあったが、陸軍の上層部は保守的な考えが抜けず、難癖を付けてはM16の採用を渋った。
特に陸軍が拘ったのが、「装填不良時にボルトを外から強制的に閉鎖する機能が無い」という点であった。
これは、歴代のライフルM1903M1ガーランドM14等)にはその機能があるのだから、次期制式ライフルにも無ければならない、という、極めて官僚的な理由による物であった。

これを受けて、コルト社は強制閉鎖装置(ボルトフォワードアシスト)を追加(ストーナーは「不要であり、危険ですらある」と主張)、そのほか実戦テストで挙がった問題点を基に改良をくわえた物が、1963年、アメリカ陸軍に納入され、XM16E1の名称が与えられた。
当初は、グリーンベレーなどの特殊部隊に配備された他、南ベトナム軍への援助物資として多数がベトナムに送られた。
しかし、陸軍上層部では次期制式ライフルをめぐり、現場の声を受けてM16を支持する一派と、SPIWプロジェクトを推進しようとする一派に分裂しており、その影響で、追加の納入は1965年まで待つことになった(その後1966年にも追加納入)。

仮制式のままで60万挺以上が製造され、その殆どがベトナムに送り込まれたが、現場の兵士からは「軽くて扱いやすい」と好評であった一方、停滞していたSPIWプロジェクトはもはやこれ以上の進展は望めないと悟った陸軍は、遂に1967年、XM16E1を「U.S.RIFLE 5.56mm M16A1」として制式に採用した。

ベトナムでの爆発的とも言える需要に対応するため、コルト?社以外にジェネラルモータース社の子会社やハーリントン&リチャードソン社等でも量産が行われた。
ベトナム戦争終結後は、韓国、タイ、フィリピンなど、主に東南アジア方面に供与された他、ライセンス生産も行われた。

判明した欠陥

その後、本銃が一般の兵士に行き渡るにつれて作動不良が続発。
この問題は軍のみならず、連邦議会でも問題にされた。

その理由を調査したところ、現場において、その未来的なスタイルから
「このライフルは『セルフクリーニング機能』を持ったメンテナンスフリーの未来ライフルだ」
といったような誤解が蔓延しており、加えて、
「まともな教育を受けておらず、マニュアルすら全く読まない(読めない)者までが戦場に送り込まれるようになった*3ことによるメンテナンス不足」
「ベトナムに送られた弾薬が、試験の時に使われた物に比べてカーボンの付着が起こりやすい性質を持ち、銃が汚れやすい」
ということが原因であることがわかった*4
そこで、かの有名な「コミック版マニュアル」が作製され、合わせてストック内にメンテナンスキットを収容出来るようにする事で携行を容易にし、メンテナンスの実施を徹底させることで、作動不良問題はほぼ沈静化した。

本銃に関する醜聞の大半は、この時期にささやかれた物であるといえる。
ベトナム戦を戦った兵士から、「マテル・スペシャル」(プラスチックを多用していたことから、アメリカの大手玩具メーカーの社名と掛け合わせて)、「ハイテク・ジャンク」(新型銃のくせに作動不良が多い(自分の取り扱い要領のまずさを棚に上げて、ではあるが))等と揶揄されていた事が伝わってきたことから、「M16は駄作である」というイメージを日本のガンマニアに植え付けることとなった。
しかし、その多くは、あまりに斬新な外観故の先入観から来た物であったり、作動不良についても、前線に行き渡る過程で十分な教育訓練が出来なかったことが原因である。

改良

その後、1970年代後半にはM16A1の老朽化・陳腐化が問題となり、後継となるライフルの選定が急がれることとなった。
これを受け、コルト?社と海兵隊の主導により、M16の近代化改修プロジェクト、「M16PIP」が進められる事になった。

また、ヨーロッパ各国においても、ベトナム戦争における小口径高速弾の有用性に着目し、新たに小口径弾およびライフルの選定・採用へ動き始めていたが、ヨーロッパの地形等の特性などを考慮した場合、米軍採用のM193弾の場合、射距離400mを越えたあたりでの急激な弾速の低下と、それによる弾着のばらつきが問題視されるようになった。
そこでNATOは新たに制式小口径弾のトライアルを開始し、1980年10月、ベルギーのファブリック・ナショナル(FNハースタル)社原案によるSS109弾が採用されることになった。

SS109弾は、外形の寸法はM193弾と同型ながら、M193弾が55グレイン(約3.6g)の弾を12インチピッチのライフリングを持つ銃身で打ち出す設定であるのに対し、62グレイン(約4.0g)の弾を7インチピッチのライフリングを持つ銃身から打ち出す設定となっており、重い弾を早いピッチのライフリングを持つ銃身で打ち出すことで、400mを越える射距離でも弾道を安定させ、有効射程を延ばしているほか、ソ連(現ロシア)軍制式弾である5.45mmx39弾に倣い、ジャケット先端内部に空洞を設けて人体への効果を高めるとともに、スティール製の芯によりボディアーマーに対する効果を高める等の工夫がされていた。

このため、「M16PIP」においても、弾薬についてはSS109弾を使用する方向で作業が進められることになった。
その後、ストーナーが移籍した兵器開発会社、ナイツ・アーマメントの協力もあり、1982年末、M16A2として制式化され、海兵隊を皮切りに全軍に採用、あわせて弾薬もM855弾として採用されることになった。
M16A1からM16A2への主な変更点は、

  1. ストックの材質をナイロン系として耐久性を向上させるとともに全長を1インチ延長
  2. ハンドガードキャップより前方のバレルの外径を0.625インチから0.750インチに増やし、強度と耐久性を向上
  3. フルオートマチックモードに代わり3発バーストモードを採用
  4. 工具を使わずにリアサイトを調整できるように変更
  5. ハンドガードを左右分割の三角形状から上下分割の円筒形状とし、強度を向上
  6. グリップにフィンガーチャンネルを追加
  7. エジェクションポートにブラスデフレクターを追加し、左利き射手に対応
  8. フラッシュハイダーのスリットを等間隔に6本から上方に5本に変更
  9. エジェクションポートカバーのプランジャーを強化
  10. ハンドガードリングをテーパー形状に変更
  11. ロアレシーバーのテイクダウンピン周りに補強を追加
  12. フロントサイトベースを強化、フロントサイトポストを円柱から角柱に変更

等々となっている。

更新が始まった当初は、完成したライフルの他に、コンバージョンキットを部隊のアーマラーが組み替えるという形での更新も行われた。そのため、ロアレシーバーにM16A1の特徴を残す個体も多く存在した。
現在でも、部隊によってはM16A2からM4ないしM16A4への更新の際にコンバージョンキットによる更新が行われている。

1990年代半ば頃、M16A2の米軍納入の為の入札が行われ、コルト?社とFNマニュファクチャリング社(FNハースタルの北米法人)との競合の結果、FNマニュファクチャリング社が納入権を獲得した。
以降、20インチバレルを持つライフルサイズのモデルに関してはFNマニュファクチャリング社が現在に至るまで(現在は海兵隊向けのM16A4)納入を担当している。

現在、アメリカ陸軍はM4カービン海兵隊は主にM16A4と、使用している火器が異なる。
これは第二次世界大戦初期、陸軍がM1ライフル、海兵隊がジョンソンライフルをそれぞれ採用していた時以来の事態であると言えよう。

なお、アメリカ軍はM16やM4の後継となる次期制式ライフルの選定に向けて様々なテストを行っているが、有力候補とみられていたH&KのXM8もキャンセルとなっており、また、現場では様々なアクセサリーを追加・交換する事によりあらゆる任務に対応できる環境が整備されており、もはや「M16というインフラ」とも言えるような状況であるだけに、アメリカ軍制式ライフルの座はM16あるいはM4シリーズということで当分揺るぎそうに無いようである。

狙撃銃としての特性

余談だが、M16は日本では劇画「ゴルゴ13」の主人公が愛用する銃として有名である。
後に同作のファンから、(先述のベトナム帰還兵の証言を受けて)「どうして超一流のスナイパーがあんな欠陥品の銃を使っているのか」という指摘もあった*5が、 実際のところ、狙撃については、不向きどころか高い精度が出せる資質を秘めた構造で、高度なカスタマイズによって100ヤードで1/2MOA前後の精度を出せる物もあり、アメリカ軍でも各種狙撃仕様が運用されている。
ただ、おおむね射距離300〜500m以下の狙撃になら対応できるが、使用する弾薬の威力により、600m程度を越えるような狙撃には専用の大口径狙撃銃が使われる。

スペックデータ

種別アサルトライフル
口径5.56mm
全長999mm
銃身長508mm
重量3,500g
ライフリング6条右回り
使用弾薬5.56mm NATO弾
装弾数20発/30発(箱形弾倉)
作動方式ガス圧作動・リュングマン式、ロータリーボルト/マイクロ・ロッキング・ラグ閉鎖
発射速度900発/分
銃口初速975m/秒(M16A1)/ 884m/秒
有効射程500m

主なバリエーション

アメリカ本国採用型

M16(604)
初期型。ガス直圧機構が原因でボルトが汚れ、回転不良や不完全閉鎖が多発した。
XM16E1
アメリカ陸軍の要求により、ボルトフォワードアシストノブを加えた、A1への布石とも言うべきモデル。
M16A1(603)
上記モデルの改良型。
密林での行軍中に枝などに引っかかることを防止するために、消炎機をクローズドなバードケージタイプへ変更した。
M16A2(645)
M16A1の改良型。
M16A3(901)
セレクターの3点バーストをフルオートに置き換え、信頼性を向上させたもの。
M16A4(905)
M16A2をベースにキャリングハンドル部分を着脱式とし、ピカティニー・レールを追加したもの。
M4カービン
カービンモデル。詳しくは項を参照。
AR-15 9mmサブマシンガン
M16A2を9mmパラベラム弾使用のサブマシンガンにしたもの。
AR-15 ピストル
M16をピストルサイズにしたもの。使用弾は9mmパラベラム弾と5.56mm NATO弾が有る。
M16 LSW(741)
M16A2を基に開発されたLSW(Light Support Weapon:分隊支援火器)モデル。
ハンドガードがグリップ付の角が丸い四角形になっている。
SPR Mk12
M16A4、M4A1を狙撃銃として改良した特殊目的ライフル(SPW*6)。
精密射撃を実現するため、専用弾薬として弾頭重量を4g(62グレイン)のM855から5g(77グレイン)に増した新設計のMk262 Mod0/1を使用する。
SAM-R
M16A4を狙撃銃として改良した分隊上級射手ライフル(SAM-R*7)。
SPR Mk12とのコンセプトや仕様の共通点も多い。
SDM-R
M16A4を狙撃銃として改良した選抜射手ライフル(SDM-R*8)。
SAM-Rのアメリカ陸軍向けモデルである。
SR-25?
ナイツ・アーマメントがAR-10(AR-15、M16)をベースにして開発した7.62mm NATO弾(.308 ウィンチェスター弾)を使用する狙撃銃。
詳しくは項を参照。
AR-15
M16がアーマライトで開発された時の製品名。
M231 FPW
M2/M3「ブラッドレー」歩兵戦闘車のガンポートで使用するために開発された小銃。
フルオートオンリーでオープンボルト作動方式、照準器やストックは取り外されている。
ブラッドレーのガンポートが廃止されたため、現在は使用されていない。
CAR-703
M16をガス・ピストン作動方式にしたもの。

その他の派生型

C7(カナダ/コルト カナダ[旧ディマコ])
カナダ軍制式銃。M16A2のライセンス品。
C7A1(カナダ/コルト カナダ[旧ディマコ])
カナダ軍制式銃。M16A3のライセンス品(Elcan C79 optical sightが装備されている。)
M16A1-603K(韓国/大宇)
韓国軍制式銃。M16A1のライセンス品。
K2(韓国/大宇)
韓国軍制式銃。M16をベースに、AK47を参考にしてガス圧利用にした派生型。
65式歩槍(台湾/聯勤)
中華民国軍制式銃。M16をベースに、AR-18を参考にしてガス圧利用にした派生型。
M15
アメリカ・アーマライト社製。主に民間用。
XM15
アメリカ・ブッシュマスター社製。主に民間用。
XR15
イギリス・セイブルディフェンス社製。主に民間用。
OA15
ドイツ・オバーランドアームス社製。主に民間用。
CQ 311
中国・ノリンコ製のM16A1のデッドコピー
フルオート機能を備えた軍用向けと、セミオートのみの欧米民間市場向けが存在する。

*1 「フレシェット弾の採用」「40mmグレネードを3発以上連射出来る」「重量10ポンド以下」等々。
*2 その直後、ストーナーはアーマライトを去っている。
*3 当時のアメリカは徴兵制を採っており、そうした兵士としての資質に欠ける人物まで戦場に送られていた。
*4 練度の高い部隊ほど、きちんとしたメンテナンスをしているために作動不良の確率は低かった。
*5 作者が専門家に相談した際に「狙撃に用いる」という点を説明し忘れた為、当時最新鋭のM16を薦められたことが原因らしい。
  作品中に於いては、『様々な状況に対応可能な様、狙撃だけでなく近・中距離戦にも対応できるM16が選ばれた』という設定になっている。

*6 Special Purpose Rifle.
*7 Squad Advanced Marksman Rifle.
*8 Squad Designated Marksman Rifle.

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