Last-modified: 2023-01-31 (火) 19:06:48 (128d)
【M110】 †
アメリカ陸軍の現用主力自走榴弾砲。
M107 175mmカノン砲と平行開発され、1961年に制式化。アメリカや日本のほか9ヶ国で採用された。
現在では、M270多連装ロケットシステムなどの後継機種に移行して順次退役中。
戦略レベルでの大規模な運用が想定され、主に軍団直轄の砲兵部隊に配備された。
開発に当たっては他車のコンポーネントを利用しており、車体はM107、エンジンはM108/M109?、サスペンションはM113から流用され、コストの低減が図られている。
また、C-130輸送機での空輸も考慮されており、車体は非常に小型で大口径自走砲としては極めて軽量である。
採用国 †
- アメリカ合衆国
- イギリス
- イスラエル
- イラン
- エジプト
- オランダ
- 韓国
- ギリシャ
- スペイン
- 中華民国(台湾)
- ドイツ
- トルコ
- 日本(陸上自衛隊)
- パキスタン
- バーレーン
- 南ベトナム
- ベルギー
- モロッコ
- ヨルダン
配備部隊・機関(陸上自衛隊) †
- 防衛大臣直轄部隊
- 富士学校
- 富士教導団特科教導隊(第4中隊)
- 武器学校
- 富士学校
- 北部方面隊
- 第1特科団
- 第1特科群(第101・第102特科大隊)
- 第4特科群(第104特科大隊)
- 第1特科団
性能諸元 †
形式 | M107 | M110 |
乗員 | 5名 | |
全長 | 11.3m | 7.478m(M110) 10.732m(M110A1以降) |
全高 | 3.68m | 3.145m |
全幅 | 3.15m | |
戦闘重量 | 29.2t | 28.3t |
懸架・ 駆動方式 | トーションバー方式 | |
エンジン | デトロイト・ディーゼル 8V-71T 2ストロークV型8気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル (出力405hp) | |
登坂力 | 60% | |
超堤高 | 1.01m | |
超壕幅 | 2.36m | 1.90m |
最大射程? | 32.7km | 16.8km(M110) 21.3km(M110A1) 29.1km(M110A2) |
最大速度 (路上) | 56km/h | 54.7km/h |
行動距離 | 725km | 523km |
装甲 | 13mm(車体前面) | |
携行弾数 | 2発 | |
兵装 | M113 64.5口径175mmカノン砲×1門 | M2A2 25口径203mmカノン砲×1門(M110) M201 37口径203mmカノン砲×1門(M110A1) M201A1 37口径203mmカノン砲×1門(M110A2) |
主な派生型(カッコ内は試作時名称) †
- M107(T235E1):
1961年に制式化された自走榴弾砲。1961年6月〜1980年5月までに524両が生産された。
イスラエル軍では「ロマク(Romach、ヘブライ語で槍の意) 」のニックネームを付け、1973年の第四次中東戦争において実戦投入された。
後に、統一化で余剰となった車両は搭載砲を換装してM110A1に改造された。
- M110(T236E1):
初期型。M107と並行して開発され、1961年に制式化された。
1969年までに約750両が生産された。
イスラエル軍では「カードム(Kardom"、ヘブライ語で斧の意) 」のニックネームを付け、M107"ロマク"と共に1973年の第四次中東戦争において運用された。
搭載砲の射程が短いという欠点があったため、後に砲の換装が行われ、M110A1/A2に改造された。
- M110A1:
M107/M110の搭載砲を換装した射程延伸型。1976年に制式化された。
主砲を37口径のM201 37口径203mm榴弾砲(最大射程21,300m)に換装したほか、車体など数箇所を再設計し、信頼性の向上がなされている。
- M110A2:
M107/M110A1を改造した強化型弾薬運用型。1978年に制式化され、250両が改造された。
主砲はM201にマズルブレーキなどを追加した改良型であるM201A1を搭載している。
アメリカ陸軍以外にも日本を含む9ヶ国で採用されたが、アメリカ陸軍では順次退役中。
- M578 LRV(軽回収車:Light Recovery Vehicle):
M107/M110をベースにした戦車回収車。
機械化歩兵および砲兵部隊に配備され、主にベトナム戦争で活躍した。
360度回転可能な上部構造物にクレーンブームとウィンチを備えている。
- W-90:
M107/M110の車体にNORINCO(中国北方工業公司?)製の203mm榴弾砲(駐退器・マズルブレーキの形状が全く異なる)を搭載した、中華人民共和国開発の半オリジナル車両。
車体はアメリカが援助したパキスタン軍の車両もしくはベトナム戦争時にアメリカが放棄したものを入手したと考えられている。
- 203mm自走りゅう弾砲:
M110A2を陸上自衛隊向けに日本でライセンス生産したモデル。
砲架を日本製鋼所、車体を小松製作所が分担して製造している(砲身はアメリカから有償援助で取得)。
愛称は「自走20榴」「20榴」。自衛隊の伝統に漏れず、広報愛称「サンダーボルト」は黙殺されている。
砲身はアメリカからのFMS(有償援助)で取得し、砲架を日本製鋼所、車体を小松製作所が分担して製造している。
運用の際には87式砲側弾薬車が随伴し、弾薬の運搬と補給を行う。
北海道以外での部隊運用の終了や北海道における運用部隊の削減が実施され、2019年3月末現在で北部方面隊の特科部隊3個大隊のみの運用とされている。