Last-modified: 2017-03-03 (金) 21:20:57 (19d)

【L-1011】(えるてんいれぶん)

Lockheed L-1011 Tristar(トライスター).

アメリカのロッキード(現ロッキード・マーティン)社が1960年代〜1980年代に生産した旅客機
ロッキード社が初めて開発・生産したジェット旅客機で、2017年現在でロッキード・マーティン最後の民間向け航空機でもある。
先進的でわかりやすいコックピット構造*1エレベーターを備えた中二階構造の客室、軍用機譲りの自動操縦装置*2など、当時の新機軸がふんだんに盛り込まれた機体であった。

開発当時、ロッキード社の生産・販売の中心は軍用機であった*3*4
一方、民間機分野ではジェットエンジンへの移行が遅れたため、ボーイングダグラスなどの同業他社に後れを取りつつあった*5
この市場状況から巻き返しを図るため、アメリカ国内線向けの200〜250席クラスの双発旅客機が構想された。

当時のエンジンの信頼性から、双発ではロッキー山脈や洋上を飛行する際に問題があるとして、3発機として設計・開発されることになった。

しかし、搭載予定のエンジン「ロールス・ロイスRB.211」の設計が遅れ、またロールス・ロイスが経営危機に陥った影響*6を受けて量産が遅延*7
加えて、軍需に依存しすぎて販売能力の衰えた企業体質が災いしてセールスが伸びず、1981年に250機で生産を終了。
ロッキードはこの機体を最後に民間機市場から撤退する事となった*8

しかしながら、機体の設計や整備に起因する事故による機体の損失はなく、安全性の高さは実証されていた。

日本では全日本空輸が1974年から「初のワイドボディ機」として導入。最盛期には21機を運用していた。
1970〜80年代の全日空の主力機として活躍を見せた*9が、より効率の良いB747B767などに置き換えられて1995年までに全機退役している。

この受注に際し、ロッキードは日本政府・全日本空輸などに対して巨額の賄賂を贈っていた。
この事は後に明るみとなり、「ロッキード事件」として世間を騒がせている*10

関連:DC-10 全日本空輸

主な運用社

  • トランス・ワールド航空
  • パンアメリカン航空(その後ユナイテッド航空に譲渡)
  • イースタン航空(ローンチカスタマー)
  • デルタ航空
  • パシフィック・サウスウエスト航空
  • ハワイアン航空
  • エア・カナダ
  • アエロペルー
  • ATA航空
  • 全日本空輸(全日空)
  • キャセイ・パシフィック航空
  • エアランカ(その後スリランカ航空に社名変更)
  • ガルフ・エア
  • TAP ポルトガル航空 
  • タイ・スカイ・エアウェイズ
  • ロイヤルヨルダン航空
  • ブリティッシュ・エアウェイズ
  • BWIA
  • イギリス空軍(トライスター輸送機/空中給油機として運用)
  • オービタル・サイエンシズ (OSC) (ペガサスロケット?の打ち上げ等に使用。愛称「スターゲイザー」)

スペックデータ

型式L1011-1L1011-200L1011-500
乗員3名(機長副操縦士航空機関士
座席数253名
(3クラス)
263名234名
(3クラス)
全長54.2m50m
全高16.7m
翼面積321.1329.0
最大離陸重量195,000kg209,000kg225,000kg
エンジンターボファン×3基
ロールス・ロイス RB.211-22ロールス・ロイス RB.211-524B
巡航速度マッハ0.78(約954km/h)


派生型

民間型

  • L-1011-1:
    基本型の中・短距離モデル。
    イースタン航空・デルタ航空・トランスワールド航空・全日本空輸などが導入。

  • L-1011-50:
    既存の機体に対する改修キットとして販売。
    もっとも簡単な改修を行うもので、最大離陸重量を引き上げた。
    28機が改造されている。

  • L-1011-100:
    航続距離延長型。
    当初はDC-10の長距離型に対するカウンターパート「-2型」として計画されていた。
    エンジンは、1型と同じRB211-22Bか推力向上型のRB211-22Fを搭載。
    サウジアラビア航空・ガルフエア・キャセイパシフィック航空等が採用した。

  • L-1011-150:
    50型同様、改修キットとして販売。
    6機が改造された。

  • L-1011-200:
    床下にあったギャレーをキャビンに移し、貨物室の容積を確保した型。
    エンジンをRB211-524Bに変更し、燃費を改善したことにより100型に比べて航続距離が5%程度延長されている。
    サウジアラビア航空が採用した。

  • L-1011-250:
    200型の航続距離を伸ばした型。計画のみ。

  • L-1011-300:
    胴体ストレッチ型。計画のみ。
    当初は「-3型」と呼ばれていた。

  • L-1011-400:
    500型の胴体に1型のエンジンを搭載した短・中距離型。計画のみ。

  • L-1011-400A:
    短胴型。計画のみ。

  • L-1011-500:
    長距離型。
    ブリティッシュ・エアウェイズやパンアメリカン航空などが採用。

  • L-1011-600:
    双発機型の「バイスター」として提案された型。計画のみ。

  • スターゲイザー:
    アメリカのオービタル・サイエンシズ社(OSC)が運用する改造機。
    空中発射式人工衛星打ち上げロケット「ペガサス?」の打ち上げに用いられる他、NASAX-34?、APO計画をはじめとした様々な空中実験に用いられる。

軍用型

英国空軍ではブリティッシュ・エアウェイズやパンアメリカン航空などの中古機を購入して空中給油機輸送機に改修した。
なお、下記のいずれも、2014年に後継のA330 MRTTに更改されて退役している。

  • トライスター K1:
    元ブリティッシュ・エアウェイズのトライスター 500であり、貨物ドアを有さない空中給油機/輸送機へ2機が転換された。

  • トライスター KC1:
    K1と同じく元ブリティッシュ・エアウェイズ機で、空中給油機/貨物機/輸送機へ4機が転換された。

  • トライスター C1:
    元ブリティッシュ・エアウェイズ機の輸送機。1機のみ。

  • トライスター C2:
    元パンナム機で、輸送機へ2機が転換された。

  • トライスター C2A:
    元パンナム機で、C2とは異なる電子機器を搭載した輸送機。1機のみ。


*1 現在のボーイングエアバス製の機体でも採用されていない装置も取り入れられていた。
*2 INSVOR/DMEの電波などから自機の正確な位置情報を取得し、これを自動操縦装置に接続したもので、計器着陸装置の「カテゴリーA」に対応できた。
*3 主な製品はF-104P-2P-3C-5C-130C-141など。
*4 しかし、必ずしも順調だったとはいえず、アメリカ陸軍から契約を受けたAH-56の開発に失敗した他、F-104の後継として計画されたCL-1010「スーパースターファイター」も挫折していた。
*5 4発ターボプロップ機L-188「エレクトラ」を生産・販売していたが、同機の販売は不振で、167機の生産にとどまっていた。
*6 余談であるが、同じ時期に日本がYS-11の後継として計画していた「YS-33(YX)」もこの影響で開発が暗礁に乗り上げ、最終的には中止されている。
  なお、YX計画自体はその後、ボーイングとの共同開発という形で進められ、B767B777として実現している。

*7 機体構造がRB.211の搭載を前提としていたため、他社製のエンジンを載せるためには大幅な設計変更が必要とされた。
*8 一方、DC-10で本機と真っ向からぶつかったマクダネル・ダグラスも、この競争で経営体力を消耗し、回復することができないままボーイングに吸収合併された。
*9 1986年に初めて定期国際路線を開設した際(成田〜グアム間)、本機(機体記号:JA8509)がその第一便を務めていた。
*10 ロッキードは同じ頃、イタリア(C-130の導入)やオランダ(F-104の導入)でも同様の贈賄事件を起こしている。

トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS