Last-modified: 2019-05-19 (日) 10:14:26 (187d)

【Il-86】(あいえるはちじゅうろく)

旧ソ連のイリューシン設計局が1970〜1990年代に開発・生産した四発ワイドボディ旅客機
西側で就航していたB747A300などの情報に接したソ連当局が「ソ連版エアバス」として開発に着手した。
NATOコードは「キャンバー」であった。

機体はそれまでのソ連製旅客機の「有事軍用機転換」を志向した設計思想から一転し、それまで重視されていたSTOL性は重視されず、2500m以上の舗装滑走路使用を前提とした設計になっていた。
エンジンの装備方法も改められ、それまでの後部胴体に直結する方式から主翼下のパイロンポッドでぶら下げる方式になった。

客室の座席配置も3-3-3のレイアウトになり、それまでのソ連旅客機に比べて快適な座席となった。
本格的な映画上映サービスを行える設備も整えられ、接客サービスの向上も図られた*1

本機を特徴づけるのが乗客の乗降方法で、メインデッキの扉*2ではなく、下部デッキ左側(ポートサイド)3か所にある乗降口から乗り、横の荷物置き場に荷物を置いてから階段で客室へ上がる方式であった*3

本機は1980年に開催が決まっていたモスクワ夏季オリンピックに間に合うように開発が進められ、1976年に初飛行したものの実用化に手間取り、路線就航は1980年12月とオリンピックには間に合わなかった。
同盟国」であるワルシャワ条約機構加盟国や親ソ的な第三世界各国をはじめ、西側ユーザーへの拡販も狙って日本やアメリカなどの航空雑誌に広告を出稿したものの、高バイパス比ターボファンの開発に失敗したために航続距離が短くなってしまい*4、また、西側には既にマクダネル・ダグラスDC-10エアバスA300など、本機より長距離を飛べるワイドボディ機が市場を席巻していたためそれらに食い込むことができず、わずか106機の生産に終わった。

軍用型として、空中司令所型のIl-80が開発され、製造されたIl-86のうちの最後の4機がこの仕様となった。

関連:Il-96

スペックデータ

乗員3名
乗客数234〜250名
全長60.21m
全高15.68m(公称)
翼幅48.06m
翼面積300
アスペクト比7
最大離陸重量215,000kg
最大着陸重量175,000kg
最大燃料容量86,000kg
最大ペイロード40,000kg
エンジンクズネツォーフ NK-86ターボファン×4基(出力127.5kN)
補助装置VSU-10 APU
巡航速度900km/h
最大高度11,000m
航続距離5,000km(乗客300名、燃料満タン時)
4,000km(乗客最大、燃料満タン時)
3,400km(最大ペイロード時)
8,200km(フェリー時)
海面上昇率5m/s〜10m/s(通常時)
15m/s(210,000kg時)
翼面荷重672kg/屐丙蚤舂ノ重量時)
推力重量比0.242(最大離陸重量時)


派生型

  • Il-80:
    空中司令所型。NATOコードでは「マックスドーム」と呼ばれた。
    機体背部にあるSATCOM用レドームが特徴。


*1 なお、個人用テレビモニターなどは装着されなかった。
*2 緊急脱出用とされ、本来の乗降には使用しなかったが、後に正式な乗降用に改造された機体もある。
*3 これは、ボーディングブリッジが備えられていない地方空港での運用を考慮した設計であった。
*4 当時のソ連のフラッグキャリア・アエロフロートの運用方法や、国内で生産される潤沢な石油資源によりそのことが議論されることはあまりなかった。

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