【G11】 †
Heckler & Koch G11(Gewehr 11)
H&K社が1989年に開発したブルパップ式の次世代自動小銃。
1970年代にG3に代わる次世代の自動小銃を求めた西ドイツの要求を満たすため、H&K社が銃の設計を、ダイナマイト・ノーベル社が弾薬の開発を受け持ち、それぞれ開発が進められた。
本銃の最大の特徴は、薬莢を使用しない銃弾である「ケースレス弾」を使用することである。
ケースレス弾は圧縮した固形火薬が薬莢を兼ねており、弾薬の構成成分が「弾丸+発射薬」となっている。
当時、戦車砲では発射後に薬莢が残らない、ケースレスもしくは可燃性薬莢の砲弾が実用化されつつあり、このアイデアを小銃弾に持ち込んだともいえる。
ケースレス弾は様々な口径のものが試作されたが、最終的に1981〜1986年にかけて開発された4.7mm×33 DM11が採用された。
これにより同じ重量でも携行できる弾数が大幅に増加、弾薬の製造に真鍮を使用する必要が無い為、コストダウンも図る事も可能とされた。
弾倉はFN社のP90のように銃身の上に平行に配されており、前部から装着する仕組みとなっている*1。
また、この弾薬は射撃時に排莢が必要ないという特性上、加熱した薬莢による味方の火傷や転倒を防ぎ、かつブルパップタイプでありながら射手の利き腕を選ばないというメリットも生み出している。
さらに排莢のプロセスと機構を一切省略できるため、3バースト射撃時は毎分2,000発という驚異的ともいえる超高速発射速度を誇り*2、反動が発生、或いはそれによって射手の姿勢が変化する前に射撃できたりと、正に驚異の制圧力を持つライフルとなるはずだった。
しかし、実際に使用してみると通常弾よりコストが非常に高い、火薬が剥き出しなので湿気に弱い、機関部に蓄積される熱が原因で装填直後に発火・暴発する危険性がある、弾倉が異様に長いため携行に向かない――などといった様々な欠点が見つかり、各所から酷評された。
西ドイツ陸軍はG3の後継として本銃の完成を待ち望んでいたが、上記のようなあまりの使い勝手の悪さと、冷戦終結による予算削減のあおりを受けたため少数が配備されたのみにとどまり、ドイツ再統一後のドイツ連邦軍では、代用品として急遽開発されたG36へと更新している。
また、4.7mm×33ケースレス弾も普及する気配を見せず、弾道力学の研究データだけがMP7?の4.6mm×30弾へと受け継がれている。
非常に挑戦的かつ未来的なコンセプトを掲げた銃であったが、同社の先端技術に対する飽くなき情熱が裏目に出てしまった、もっとも典型的な例である。
余談ではあるが、H&K社はG11の他にもケースレス弾薬を使用したプロトタイプをいくつか用意しており、その中には4.73mm×25のケースレス弾を用いるピストルサイズの「G11PDW」なるものも存在していた。
この銃は設計上MP7と共通点が多い事から、弾薬のみならずG11PDWの開発プロジェクトそのものがMP7に統合された可能性もある。
スペックデータ †
種別 | 自動小銃 |
口径 | 4.73mm |
全長 | 750mm |
銃身長 | 540mm |
重量 | 4,300g |
装弾数 | 45/50発(箱型弾倉) |
使用弾薬 | 4.7mm×33 DM11弾 |
発射速度 | 2,000発/分(3バースト) 640発/分(フル) |
銃口初速 | 930m/秒 |
有効射程 | 400m |