Last-modified: 2017-07-15 (土) 18:12:46 (126d)

【F-8】(えふはち)

Chance Vought F-8(F8U) "Crusader(クルセイダー)*1"

アメリカのチャンスヴォート社が開発した艦上戦闘機
それまでの艦上機陸上機に比べて大幅に劣っていたこともあり*2アメリカ海軍初の「実用」超音速戦闘機と呼ばれる。

最大の特徴は主翼の取り付け角が胴体に対して可変式であることで、低速時に機首を上げなくても大きな迎え角をとることができる。
これは前任のF7Uにおいて、低速時の迎え角が極端に大きく事故を多発したことの反省によると思われる。
ただしF7Uの問題は水平尾翼を省略するという奇抜な設計が原因であり、本機を基にした攻撃機A-7ではこの取り付け角可変機構が省略されていることから、過剰な機能とも言われている。

本機の後継となったF-4ミサイリアーであったことから、「最後のガンファイター」とあだ名された。

ただし、本機に搭載されている機関砲「コルトMk.12」は、弾倉の配置及び給弾器の設計不良により、3G以上の環境下における発射は故障に直結した。
そのため、ベトナム戦争では機関砲単体による撃墜記録はなく、牽制などの補助的な使い方をされたといわれる。

ベトナム戦争中、本機によるキルレシオは8:1と、当時、アメリカ軍が運用していた固定翼戦闘機の中で最高のものであった。
一時期は「陸上機を超える艦上機零戦とクルセイダーだけ」といわれたほど、高い運動性を誇った。

アメリカ海軍エセックス級の艦載機としてベトナム戦争中に活躍したほか、フランス海軍ではラファールが就役するまでの長い間、空母クレマンソー?」の艦上戦闘機として活躍した*3
また、フィリピン空軍においてもアメリカ海軍払い下げの機体が使用されたが、エドゥサ革命の混乱にともなう禁輸措置やスペアパーツ不足*4、資金不足で次第に稼働率が低下し、1991年のピナトゥボ山噴火によりダメージを受けたのを機に廃棄された。

偵察機型のRF-8も存在し、F-14用の偵察ポッドやRF-18が充足するまで運用された。
また、NASAではスーパークリティカル翼やデジタル式フライバイワイヤー実験機として用いられた。

AIM-7運用能力を持つXF8U-3「クルセイダー3」も試作されたが、搭載能力に余裕がなかったためF4H-1との競争試作に敗れた。

関連:A-7 トンキン湾事件 キューバ危機

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スペックデータ

乗員1名
全長16.61m
全高4.80m
全幅10.87m/6.86m(主翼折り畳み時)
主翼面積35.52
空虚重量9,038kg
離陸重量
(通常/最大)
12,701kg/15,400kg
エンジンP&WJ57-P-20ターボジェット×1基
推力48.1kN/80.4kN(A/B使用時)
速度
(最高/最大水平/巡航)
マッハ1.8/986kt/486kt
海面上昇率6,400m/min
実用上昇限度17,700m
フェリー航続距離1,216nm
戦闘行動半径521nm
固定武装コルトMk.12 20mm機関砲×4門
兵装翼下2ヶ所のハードポイントに下記兵装を搭載可能。
空対空ミサイル
(4発)
AIM-9R-550R-530
空対地ミサイル
(2発)
AGM-12「ブルパップ」?
ロケット弾ズーニー・ロケット弾ポッド(ロケット弾8発)
爆弾
(2,000kgまで)
Mk.80シリーズ
Mk.81 250lb(110kg)爆弾×12発
Mk.82 500lb(225kg)爆弾×8発
Mk.83 1,000lb(450kg)爆弾×4発
Mk.84 2,000lb(900kg)爆弾×2発


バリエーション(カッコ内は旧称)

  • XF-8A(XF8U-1):
    試作機。

  • YF-8A(YF8U-1):
    A型が開発試験に使用された時の呼称。

  • F-8A(F8U-1):
    初期生産型で昼間戦闘機型。311機生産。

  • YF-8B(YF8U-1E):
    F-8Bの原型機。

  • F-8B(F8U-1E):
    APS-67レーダーを装備する限定全天候能力改良型。130機生産。

  • XF-8C(YF8U-2):
    A型のエンジンを換装した改良型原型機。

  • F-8C(F8U-2):
    エンジンをJ57-P-16に換装し、ベントラルフィンを追加した型。187機生産。

  • YF-8D(YF8U-2N):
    F-8Dの原型機。

  • F-8D(F8U-2N):
    エンジンをJ57-P-20に換装し、FCSをAWG-4に更新した型。
    AGM-122「SARHM」対レーダーミサイルの運用能力を獲得した。152機生産。

  • F-8E(F8U-2NE):
    レーダー換装や翼下のハードポイントの追加などの改修を行った型。

  • F-8H:
    D型よりの改装を行った型。89機改装。
    一部はフィリピンに輸出された(F-8Pとも呼ばれる)。

  • F-8J:
    E型よりの改装を行った型。
    F-8E(FN)の経験を還元しSTOL性能を強化した。136機改装。

  • F-8K:
    C型よりの改装を行った型。
    第一線部隊には配備されず、もっぱら予備役飛行隊や混成飛行隊、実験部隊に配備された。
    87機改装。

  • F-8L:
    B型よりの改装を行った型。
    上記のF-8Kと同様に予備役飛行隊や混成飛行隊、実験部隊に配備された。
    61機改装。

  • YRF-8A(YF8U-1P):
    RF-8Aの原型機。

  • RF-8A(F8U-1P):
    機首の機関砲を撤去し、5基のカメラを搭載した偵察機型。144機製造。

  • RF-8G:
    RF-8Aよりの改装を行った型。73機改装。

  • DF-8A(F8U-1D):
    RGM-6「レギュラス」?潜水艦発射型戦術巡航ミサイルの誘導母機。
    後に、BQM-34「ファイア・ビー」標的用ドローンの管制機に改装された。
    20機改装。

  • DF-8F:
    DF-8Aの性能向上型。

  • DF-8L:
    L型ベースのドローン管制、標的曳航機。

  • F-8E(FN):
    フランス海軍向けのE型。42機が製造された。90年代には電子機器を更新している。
    ラファールへの更新が進み、2000年に退役。

  • F-8P:
    フランス海軍のF-8E(FN)を、デビスモンサン空軍基地に保管されていたF-8Jの部品を流用してリファビッシュを行った型。17機改修。

  • QF-8A(F8U-1KD):
    A型を無人標的機に改装した型。

  • F8U-3「クルセイダー3」:
    全天候戦闘機化計画に基づき、エンジンをJ75-P-6に換装、折畳式ベントラルフィンの追加など、胴体をほぼ全面的に再設計した発展型。5機のみ完成。
    より大型のF4Hとの競争試作に敗れ米海軍には不採用になったが、NASAの高速試験機として運用された。
    実際には表皮温度制限から実現しなかったものの、低抵抗と高推力重量比によってマッハ2.9級の速力を出すポテンシャルを有していた。

  • V-1000:
    J79エンジンを搭載するF-8の改良型。
    1970年のアメリカ空軍による海外供与機の審査に応募した機体。
    性能面では高く評価されたが、コストの面でノースロップ案のF-5E/Fに敗れた。

  • F-8SCW:
    NASAのスーパークリティカル翼?実用試験機。

  • F-8DFBW:
    NASAのデジタルフライ・バイ・ワイヤ実用試験機。


*1 十字軍の戦士の意。
*2 特に、米海軍初の超音速機であるF11Fは、性能に対する不満から就役後わずか7年で退役してしまった。
*3 艦載機が大型化するなかで、旧来の小さな空母では比較的小型のF-8が重宝された。
*4 晩年はヴォート社の在庫自体も底をついており、現地でオーバーホールする際は、現地で調達したベニヤ板とアルミ箔を用いて木製の部品を作り、損耗した金属製の純正部品の代用とする苦肉の策がとられた。

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