Last-modified: 2017-07-12 (水) 20:55:20 (69d)

【F-104】(えふいちまるよん)

Lockheed F-104 "Star Fighter(スターファイター)".
1950年代にロッキード社の開発チーム「スカンクワークス」が設計・開発した、世界初のマッハ2クラス戦闘機

同世代の戦闘機音速を超えるため四苦八苦していたのに対し、本機は設計段階からマッハ2クラスの高速性が盛り込まれている。
徹底的な抗力の減少が図られており、主翼に至っては翼厚比36%という刃物のような極薄の直線翼である。

その細身な機体と、三菱重工ライセンス生産していた事から、日本では「三菱鉛筆」の愛称で呼ばれる。

ミサイル万能論の時代に現れたため、次世代はもう登場しないとの(今となっては失笑すべき)予測から「究極(最後)の有人戦闘機」とも呼ばれた。

その加速力と上昇力は21世紀でも通用する水準にあるが、そのために多くを犠牲にしすぎた機体である。
抗力を抑えるために胴体を細く絞りすぎたため、ペイロードに重大な支障を来している。
次世代型のアビオニクスへの換装が困難で、特にSAGEデータリンクや、レーダー誘導ミサイルを使用できない点が致命的だった。
また、燃料タンクすら絞ったために航続距離が短く、その事によって高速性能である事の利点が大幅に失われている。
高い翼面荷重ピッチアップ?など運用面での悪癖も数多く、事故率の高さから「空飛ぶ棺桶」「未亡人製造機」などとも揶揄された。

関連:マルヨン 三菱鉛筆

海外セールス

上記の理由から、ローンチカスタマーのアメリカ空軍では少数しか採用されなかった。
しかし、海外ではF-86の後継機として航空自衛隊NATO諸国に採用され、2,000機以上が生産された。

NATOの尖兵であったルフトバッフェでは戦闘空中哨戒のみならず阻止攻撃にも用いられた。
しかし単発機地形追随飛行を行ったために墜落事故が相次ぎ、攻撃機としての性能要件を到底満たされていなかった*1
また、旧西ドイツ海軍では小型・高速で排気煙が少ないという特性を生かして対艦攻撃任務に就いた。

イタリア空軍ではF-104S型を運用していたが、ユーロファイター・タイフーンへの更新が進み、2005年に退役した。

日本の航空自衛隊も単座型のF-104J(F-104C)と複座型のF-104DJ(F-104D)を導入していた。

台湾(中華民国)空軍も日本ドイツ、デンマークなどから入手した中古機体を1997年まで運用していた。

性能上の問題からF-4E/Fなどの新型機が配備されるにつれてその数を減らし、現在では全ての機体が退役済み。

バトルプルーフ

実戦への投入回数は少ない。

台湾空軍機が中華人民共和国空軍のMiG-19と金門島付近で交戦し、これを撃墜した記録がある。

パキスタン空軍の機体は第二次・第三次インド・パキスタン戦争にF-86ミラージュ3と共に参戦。
第二次では多少の戦果をあげたが、第三次では7機が撃墜され、ヨルダン空軍機ともどもインド軍に惨敗している。
終戦後はアメリカの禁輸処置によって部品の供給が絶たれ、全機が退役している。

ベトナム戦争では南ベトナムに派遣されたが、爆撃機護衛任務においては航続距離ペイロードの不足を露呈して爆撃機編隊に追随できなかった。
戦闘空中哨戒任務ではRWRが未搭載だったためSAMによる被撃墜が多発。
MiGとの空戦の機会は無かった。

イタリア軍機はアライド・フォース?作戦で護衛任務に参加したが、交戦することはなかった。

スペックデータ

乗員1名
全長16.7m
全高4.11m
全幅6.69m
主翼面積18.22
空虚重量5,680kg
最大離陸重量12,490kg
最大兵装搭載量3,400kg
発動機GE J79-GE-7Aターボジェット推力44.5kN/70.3kN(A/B使用時))×1基
最高速度
(高空/海面高度/巡航)
Mach2.2/Mach1.2/530kt
実用上昇限度17,680m
固定武装M61A120mmガトリング砲×1門
搭載兵装下記兵装を搭載可能。
AIM-9「サイドワインダー」AAM×4発
AIM-7「スパロー」AAM(F-104S)
コルモランASM(F-104G)
ロケット弾ポッド
無誘導爆弾等


バリエーション(カッコ内は生産・改修機数)

  • XF-104(2機):
    ライトJ65エンジンを搭載した試作機。

  • YF-104A(17機):
    試験用の前量産型機。

  • F-104A(153機):
    初期生産型。
    米空軍では1958年から1960年にかけて防空軍団(Air Defense Command)において運用され、さらに空軍州兵に移管されて1969年まで使用された。
    一部は、ヨルダンやパキスタン・台湾へ輸出され、実戦に投入された。

  • NF-104A(A型3機):
    宇宙飛行士訓練用に改修された機体。
    武装を降ろし、垂直尾翼基部にLR121/AR-2-NA-1ロケットエンジン(推力:26.7kN)1基を追加搭載している。
    36,830m(120,800ft)の高高度までの上昇能力がある。
    1963年12月10日、当時テストパイロットスクールの校長をしていたチャック・イェーガーがこの機体に搭乗中に事故に遭遇したことは良く知られており、映画「ライトスタッフ」にも描かれている。

  • QF-104A(A型22機):
    無人標的機型。

  • F-104B(A型26機):
    A型の複座訓練型。
    機関砲を降ろし、機内燃料が減少している。数機がパキスタンと台湾に供与された。

  • F-104C(71機):
    AN/ASG-14T-2改良型火器管制レーダーを搭載した、米空軍戦術空軍(Tactical Air Command)向け戦闘爆撃機型。
    機体中心線と翼下各2ヶ所の計5ヶ所のパイロンを持ち、機体中心線のパイロンにはMk28かMk43核爆弾を搭載できる。
    1個飛行隊(第476戦術戦闘飛行隊)は1965年から1967年の短期間、ベトナムに駐留し、F-105「サンダーチーフ」戦闘爆撃機の爆撃行の護衛を行っていた。
    APR-25/26レーダー警戒装置を装備していたが、撃墜戦果は無く、9機が撃墜された。

  • F-104D(21機):
    C型の複座訓練型。

  • F-104DJ(20機):
    日本の航空自衛隊向けのD型(複座訓練型)。

  • F-104F(30機):
    G型の複座訓練型。
    G型と同じエンジンを搭載しているが、レーダーや武装は搭載していない。
    暫定的な訓練機としてドイツ空軍で使用された。

  • F-104G(1,122機):
    戦闘爆撃機型。
    胴体と主翼および主脚を強化し、垂直尾翼を拡大、フラップを改良、さらには機内燃料タンクの容量を増加させている。
    空対空モードのほか空対地モードを備えたNASARR F15A-41Bレーダー、LN-3慣性航法装置を備えている。

  • RF-104G(189機):
    G型ベースの戦術偵察機型。
    通常は機銃の搭載箇所である胴体前部に、通常3基のKS-67Aカメラを搭載している。

  • TF-104G:
    G型の複座型。
    機関銃もしくは機体中心線のパイロンが無く、機内燃料が減少している。
    これには、民間所有の機体(L104L)があり、Jacqueline Cochranによって1964年に女性の世界速度記録を出している。

  • F-104J(178機):
    航空自衛隊向けの迎撃戦闘機型。
    日本での公式愛称は「栄光」。
    1962年から三菱重工業によりライセンス生産された。

    機関砲は、後期の機体は最初から装備しているが、実は初期の機体は装備しておらず、後に全機ではないものの改修で取り付けた。
    装備しなかった機体では、その搭載スペースを増設タンクという燃料タンクに当てていた。
    そのほか、4発のサイドワインダー空対空ミサイルを搭載できるが、爆撃能力は持っていない。
    一部の機体は米国経由で台湾でも使用された。1995年退役。

  • UF-104J(2機):
    J型を無線で遠隔操作できるようにしたもので、UF-104JAの試改修型という位置づけだった。
    当初はQF-104Jと呼ばれていた。
    武装などを撤去し、遠隔操作用の機器と重心を合わせるためのバラストが追加された。
    有人飛行が可能なように射出座席は残され、開発やパイロットの技量維持訓練に使用された。
    後に全機UF-104JAに改修された。

  • UF-104JA(12機):
    無人標的機
    UF-104Jから射出座席を撤去し、無線による遠隔操作のみにしたもの。
    のちにUF-104Jの2機もこの仕様に改修された。
    1997年に全機任務を完了している。

  • F-104N(G型3機):
    NASAの高速試験飛行チェイス機。1963年より使われている。

  • F-104S(246機):
    イタリア空軍向け迎撃戦闘機型。FIATで製造された。
    垂直尾翼を拡大し、エンジンをJ79-GE-19(推力52.80kN)に換装・強化している。
    また、ハードポイントが2ヶ所増加されているほか、NASARR R-21G/Hレーダーを搭載し、AIM-7スパローの運用が可能となっている。
    なお、機銃は装備していない。

  • F-104S-ASA(147機):
    S型の性能向上型。
    周波数跳躍など対電子妨害能力、ルックダウンシュートダウン能力が向上したフィアットR21G/M1レーダー、新型のIFF装置火器管制装置(AIM-9Lサイドワインダーミサイル・セレニアAspideミサイルが使用可能)を搭載、また電子装置の小型化により機関銃装備が復活している。

  • F-104S-ASA/M(49機(単座型)・15機(TF-104G)):
    F-104S-ASAの改修型。
    航法装置としてGPS、TACAN、Litton LN-30A2INSが装備され、操縦席の計器が改良されているが、機銃および爆撃関係の装備は取り外されている。

  • CF-104(200機):
    カナディア社(現ボンバルディア・エアロスペース)でライセンス生産されたタイプ。
    空対地モードのみを備えたNASARR R-24Aレーダーを搭載し、機関砲を装備していない*2
    また、機内燃料が増加しており、カナディアJ79-OEL-7エンジン(推力:44.48kN/A/B時70.28kN)を搭載している。
    後に数機がデンマーク・ノルウェー・トルコに送られた。

  • CF-104D(38機):
    CF-104の複座訓練型。
    カナディアのJ79-OEL-7エンジンを搭載している。
    後に数機がデンマーク・ノルウェー・トルコに送られた。


*1 ルフトバッフェによる阻止攻撃任務が満足に担うにはトーネードの登場を待つこととなる。
*2 ただし、機関砲装備は1972年に復活。

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