Last-modified: 2021-08-07 (土) 09:24:41 (47d)

【E-767】(いーななろくなな)

Boeing E-767(B767-27CER).

アメリカのボーイング社が、自社製の中型双発ジェット旅客機B767-200ERをベースに開発・生産したAWACS

本機の開発は、1970〜1980年代、日本政府がアメリカ空軍フランス空軍などが採用しているボーイングE-3「セントリー」航空自衛隊に導入することを検討したのに端を発する。

この当時、空自は1976年に起きたベレンコ中尉亡命事件の教訓から、既にグラマンE-2C「ホークアイ」早期警戒機を導入していたが、同機は元々、アメリカ海軍航空母艦に搭載されることを前提とした艦上機であり、また、警戒管制システムもアメリカ海軍データリンクに関連付けられた構成になっていた*1ことから、空自での運用には必ずしも向いているとはいえなかった。
当初はコスト高からいったんは見送られたが、導入に向けた研究はその後も続いていた*2

しかし、1990年代になって実際に計画が動き出したときには、ボーイングがE-3の母体となるB707の生産を終了していた*3ため、E-3を新規調達することができなくなっていた。
そのため、E-3と同様のシステムをB767に載せることをボーイング側が提案。(E-3よりもさらにコスト高*4となるものの)日本政府はこの案を受け入れ、計4機を発注した。

当時の日本では、1980年代後半の超好景気の影響下で累積した巨額の対米貿易黒字の解消が問題となっていた。
また、本機の母体となるB767は(1970年代に計画されたYS-11の後継機計画「YX」との関連もあって)日本企業が生産工程の15%を担当しているため、完成機輸入となるE-3と違って、日本企業にも調達費の一部が還流されるというメリットがあった。

システムを機体に合わせて細部まで設計し直したため、開発費は日本政府が全額負担したが、(元々が1950年代の設計である)B707よりも設計の新しい機体を採用したため、E-3に比べて居住性や燃費が優れる機体に仕上がった。
なお、1号機・2号機のみ操縦室に第2監視員席*5が追加されている。

本機の生産は1993年に開始され、1994年にアメリカ国籍の民間機「B767-27CER*6」として日本政府に引き渡された機体が初飛行
その後、アメリカの有償軍事援助によりレーダーシステムの搭載などの改修を行ったうえで1998年に空自へ引き渡され、1999年から運用が開始された。
現在、本機は4機とも静岡県・浜松基地の警戒航空団飛行警戒管制群第602飛行隊で運用されている。

なお、本機は空自以外にも韓国・台湾・オーストラリア空軍が導入を検討したが、1990年代末期の「アジア通貨危機」の影響でいずれの国でも導入が見送られ、その後、韓国とオーストラリアはより小型のB737をベースとしたB737 AEW&Cを導入したため、2021年現在、全世界で4機しか存在していない。
ただし、ボーイングでは他にE-3の後継機の開発が進んでいない*7アメリカ空軍での採用を見込んでおり、20機程度の需要があるとしている。

E-3とは違い、本機にはこれといった愛称はつけられていないが、アメリカ軍将兵の間では自国軍のAWACSと混同することを避けるため「J-WACS」と呼ぶことがある。

機体記号の変遷

前述のとおり、本機はアメリカ国籍の民間機として素体のB767-200ERが作られ、これにAN/APY-2レーダーなどの警戒管制システムを組み込んで作られた。
その機体記号の変遷の経緯を下表にまとめた。

 アメリカ民間機としての
機体記号
自衛隊機としての
機体記号
日本への
引き渡し年
1号機N767JA64-35011998年
2号機N767JB64-3502
3号機N767JC74-35031999年
4号機N767JD84-35042000年

スペックデータ

乗員操縦士2名(機長副操縦士)+機器操作員19名
全長48.51m
全高15.85m
翼幅47.57m
翼面積283.3
水平尾翼18.62m
ホイールベース19.69m
ロートドーム直径9.14m
ロートドーム厚1.83m
空虚重量132,903kg(推定)
最大重量
離陸/着陸
174,635kg/144,242kg(推定)
エンジンGE CF6-80C2B6FAターボファン推力273.6kN)×2基
燃料容量91,378L(推定)
速度
(最高/巡航)
800km/h以上 / 722 km/h
航続距離10,370km
実用上昇限度10,360m〜12,222m
連続警戒滞空時間9.25時間(進出半径1,000nm)/13時間(300nm)
アビオニクスAN/APY-2 パルスドップラーレーダー



*1 F-14A火器管制装置・AN/AWG-9は連動が可能だったが、F-15のAN/APG-63は連動出来なかった。
 また、アメリカ空軍SAGEにはデータを直接送信できたが、空自のバッジシステムには直接伝送できなかった。

*2 この当時、B707の民間機としての受注はなくなっていたが、軍用機としての需要があったため、生産ラインはまだ稼働していた。
*3 1991年に生産を終了している。
*4 1機当たりの予算は約500億円で、E-3の約2倍、E-2Cの約6倍となった。
*5 一般のエアライン向けモデルでは「第2オブザーバ席」と呼ばれる。
*6 民間機としてのボーイング社内における顧客コード。「7C」は日本政府を表す(B747-47Cも参照)。
  なお、同じB767-200ERをベースとしたKC-767には(政府を通さず、直接航空自衛隊が発注したため)「FK」が、また、後年、日本政府がB777-300ERをベースにした政府専用機(2代)を発注した際には(日本政府がボーイングビジネスジェットの新規顧客として扱われたため)「SB」が与えられている。

*7 後継として、B767-400ERをベースとした「E-10B(スパイラル2)」の導入が検討されたが、国防予算の縮減によりキャンセルされている。

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