【E-10】 †
Boeing/Northrop Grumman E-10.
アメリカのボーイングとノースロップ・グラマンが、中型セミワイドボディ双発ジェット旅客機・B767-400ERをベースに開発していたマルチセンサー指揮管制機(MC2A(Multi-Sensor Command and Control Aircraft))。
従来、アメリカ空軍が用いていたE-3C「セントリー」・E-8「ジョイントスターズ」・EC/RC-135の代替となる機体として開発されたが、連邦政府の国防予算縮小により2007年に開発が中止された。
従来、アメリカ空軍では航空/地上部隊の指揮・管制やELINT/SIGINTに、ボーイングB707/KC-135をベースにしたE-3・E-8・EC/RC-135といった機体を用いていた。
しかし、これらの機体は母体となるB707/KC-135(B717(初代)*1)の原設計が1950年代と古く、機体自体の老朽化・陳腐化が進んでいる*2*3のと同時に、(搭載機器の増加による)機内スペースの狭さなども問題になっていた。
そこで、より設計の新しいB767をベースに、これらの代替となる機体を目指して開発されたのが本機であった。
計画では、B767の近代化モデルである-400ER型をベースにして、空地両用の"MP-RTIP*4"アクティブフェイズドアレイレーダーなどを搭載することになっていたが、2006年に国防予算縮小のあおりを受けて追加予算が立てられなくなり、2010年に初飛行する予定の実証実験機の開発に注力することになった。
しかし、この計画も後に中止され、機器の搭載を予定していた機体はバーレーンに売却されて王室専用機として用いられることになった。
なお、本機のために開発された各種技術は、(本機によって更新される予定だった)E-3・E-8・EC/RC-135の改良に用いられた他、搭載を予定していたアクティブフェイズドアレイレーダーは小型化され、RQ-4「グローバルホーク」Block.40無人偵察機に搭載されることになった。
さらに2023年には、E-3の後継として双発小型旅客機・B737をベースにした「E-7A『ウェッジテイル』(B737 AEW&C)」が発注されている。
派生型(予定) †
予定されていた本機の派生型は以下のとおりである。
- スパイラル1:
E-8 Joint STARSの後継機。制式化時にはE-10Aになる予定だった。
- スパイラル2:
E-3C「セントリー」の後継機。制式化時にはE-10Bになる予定だった。
- スパイラル3:
EC-135やRC-135などSIGINT/ELINT任務機の後継機。制式化時にはE-10Cになる予定だった。
*1 ただし、実際にはこの型式は欠番状態であり、後にマクダネル・ダグラスとの合併に伴い、同社のMD-95をボーイングの製品として販売することになった際に与えられた。
*2 B707の民間型の生産は1982年に終了し、軍用型も1991年に生産を終了していた。
*3 機長・副操縦士に加え、航空機関士や航空士(航法員)の搭乗も必要で、その分運用コストがかかっていた。
*4 Multi-Platform Radar Technology Insertion Program(多重プラットフォーム・レーダー技術挿入プログラム)の略。