【BMP-T】 †
ロシア連邦が2000年代に開発した装甲戦闘車両。愛称は「テルミナートル」。
正式名称を日本語に訳すと「戦車支援戦闘車」の意。
ロシア国防省はこれを「戦車でも装甲兵員輸送車でもない新機軸の兵器」と称した。
そして、それを理由にヨーロッパ通常戦力条約における保有制限・報告義務の対象ではないと主張した。
第一次チェチェン紛争の戦訓を受け、市街地における対歩兵・対ゲリラ戦闘を想定して開発された。
機甲部隊に帯同して索敵を行い、潜伏している対戦車火器を排除して主力戦車を保護する事を目的とする。
対戦車戦においては二線級の戦力で、敵機甲部隊との遭遇時には主力戦車からの援護を必要とする。
車体は第二世代主力戦車T-72を近代化改修し、砲塔部分を新規設計品に差し替えたもの。
車体後面に対成形炸薬弾用のスラット装甲、全面・側面に爆発反応装甲ブロックが追加されている。
車体及び砲塔は完全な与圧式NBC防護装置を備え、NBC環境下でも行動可能である。
砲塔区画は無人で、車内の乗員区画から火器管制装置による遠隔操作を行う。
高度なベトロニクスを搭載し、公開演習では高度な行進間射撃能力を披露している。
搭載兵装は以下の通り。
- 砲塔中央
- 2A42 30mm機関砲2連装、同軸機銃として機関砲収納部にPKT7.62mm軽機関銃1基
- 砲塔側面
- 9M120「アターカ*1」対戦車ミサイル連装発射機4基(左右1基ずつ)
- 砲塔基部左右
- 煙幕弾発射筒12基(前方から2基、3基、1基で配置)
- 車体中央部左右
- 装甲箱内にAGS-30/AGS-17 30mm自動擲弾筒各1基
2000年のウラル兵器展示会2000で公表され、2005年に配備を開始。
その後まもなくロシア軍が方針を転換し、2010年をもって調達終了。
調達を中断した経緯は定かでないが、おおむね費用対効果の問題と推定される。
車体改修元のT-72は旧式化して久しく、また砲塔や武装についてはいささか過剰性能を疑われる。
一方で輸出も行われており、カザフスタンやアルジェリアが導入している。
その後、2017年に改良型の「テルミナートル2」が内戦状態のシリアに送られ、シリア軍とロシアの軍事顧問団によって初めて実戦投入された。
シリアでの運用をきっかけに有用性が評価され、同年急遽採用が決定、翌年に先行量産車が10両引き渡され、中央軍管区の第90親衛戦車師団で部隊運用が開始された。
関連:BTR-T
スペックデータ †
乗員 | 5名(車長・砲手・操縦手・観測手兼射手) |
全長 | 6.95m |
全高 | 2.1m |
全幅 | 3.59m |
戦闘重量 | 47t |
エンジン | V-92S2 V型12気筒液冷ターボチャージドディーゼル(出力1,000hp) |
登坂力 | 60% |
超堤高 | 0.85m |
超壕幅 | 2.8m |
最大速度 | 65km/h(路上) |
行動距離 | 550km |
兵装 | 2A42 30mm機関砲×2門(弾数900発) |
AGS-17/AGS-30 30mm自動擲弾発射器×2基(弾数600発) | |
9M120「アターカ」(AT-9「スパイラル-2」)対戦車ミサイル連装発射機×2基(ミサイル4発) | |
PKT7.62mm機関銃×1挺(2,000発) | |
煙幕発射筒×12基 |