【BMP-1】 †
旧ソ連のチェリャビンスク・トラクター工場が開発した、世界初の歩兵戦闘車。
BMPはバエヴァヤ・マシーナ・ピェホートゥィ(歩兵用戦闘車両)の略。
兵員輸送車でありながら旧世代の戦車に匹敵する重武装が施され、歩兵の展開後に積極的な火力支援を行う事ができる。
その画期的なコンセプトから、登場時には「BMPショック」を各国にもたらし、本車を配備された機械化歩兵部隊は「自動車化狙撃兵」と呼ばれ、畏怖の的となった。
車体は避弾径始を考慮して大きく傾斜した舟型で、被弾率を下げるために車高を低く抑えてある。
水上に浮行できるスカートを装備し、浅瀬であれば無限軌道で水上航行が可能。
後部兵員室には小さな銃眼が設けられており、車内の兵士も小銃を突き出して攻撃を行える。
一方、画期的な設計ゆえか完成度は低く、アフガニスタン侵攻に投入された際に種々の問題点を露呈させている。
顕著な問題としては兵員室の極端な狭苦しさがあげられ、その窮屈さ、乗り降りの困難さは非常な苦痛であったという。
また、後部ドアと燃料タンクが一体化した構造のためダメージコントロールにも難がある。
加えて、搭載武装も不評を受け、現地改造で対戦車ミサイル発射器が擲弾発射器に換装されたり、兵員室の屋根に迫撃砲が搭載される事があった。
主砲は低初速で発射した後で再加速するロケット弾を用いたため気流に影響されやすく、500m先への命中率は50%以下とされる。
また、主砲の仰角が33°までしか取れなかったため、近距離で高所に陣取る敵には効率の良い攻撃が不可能だった。
加えて、対戦車ミサイルを装填する際には停車して砲手が砲塔上で作業する必要があった。
このため、実戦では最大射程1,500m程の重機関銃相手にアウトレンジから狙撃される事例が相次いだという。
ソビエト連邦・ロシアの友好国に対する輸出も行われ、配備している国は今も多い。
また1990年代に入ってからは中国で「86式歩兵戦闘車」としてライセンス生産も行われている。
スペックデータ †
乗員 | 3名+兵員8名 |
全長 | 6.46m |
全高 | 1.88m |
全幅 | 2.94m |
戦闘重量 | 12.6t |
懸架・駆動方式 | トーションバー |
エンジン | UTD-20 V型6気筒液冷ディーゼル(出力300hp/2,000rpm) |
登坂力 | 70% |
超堤高 | 0.7m |
超壕幅 | 2.5m |
速度 (路上/不整地/浮航) | 65km/h / 45km/h / 8km/h |
航続距離 | 600km |
装甲 | 33mm |
兵装 | 2A28 73mm低圧滑腔砲×1門(弾数40発) 9M14M「マリュートカ(AT-3『サガー』)」対戦車ミサイル発射機×1基 (ミサイル4発(砲塔に2発、兵員室に2発格納)) PKT 7.62mm機関銃×1挺(弾数2,000発) 9K32「ストレラ2」携行式SAM×2基 3連装発煙弾発射器×2基 |
派生型 †
- ソ連/ロシア製
- BMP-1P:
対戦車ミサイルを9M113「コンクールス(AT-5「スパンドレル」)」もしくは9M111「ファゴット(AT-4「スピゴット」)」に換装した型。
現在でも使用されている物はこのタイプに改修されているものが多い。
- BMP-1PG:
リモコン操作式のAGS-17 30mm自動擲弾発射機を搭載した型。
- BMP-1D:
対戦車ミサイルの換装及びBMP-2の増加装甲型に準じた装甲の強化を図った改修型。
外見上ではサイドスカートを大型の物に変更しているのが特徴である。
- BMP-1K:
自動車化狙撃兵(機械化歩兵)連隊の移動司令部として使用される指揮官用車両。
通信機器が強化されており、後部兵員室には連隊長及び副官など3名が乗車する。
- BMP-1AM「Basurnanin」:
2018年に公開された改良型。
2A72 30mm機関砲、PKTM 7.62mm機関銃を備えたBPPU-1モジュラーウェポンシステムの装備、全天候の対空照準器と統合した火器管制システム、2面式の武器スタビライザー、9K115-2「メティス-M」対戦車ミサイル等を備える。
エンジンはUTD-20S1に換装され、トーショナルシャフトを設置することで出力が向上し機動力が向上、水中翼の設置により浮力および水流が改善されている。
- BRM-1K:
司令部付偵察隊用の偵察車型。
砲塔を2名用の大型砲塔に換装しており、砲手の他に偵察要員が搭乗できる。
また、後部兵員室にも2名の偵察要員が搭乗する。
2名用砲塔はBMP-2の砲塔の原型になった。
- PRP-3(オブイェクト767)「ヴァル*2」:
砲兵/偵察部隊用観測車両型。
ソビエト(ロシア)軍では「機動戦場観測システム搭載車」と呼ばれる。
BRM-1Kと同じ大型砲塔に各種光学精密観測機器と方位指示機を搭載し、砲塔後部には弾道探知レーダーを搭載している。
また、車体後部には発煙信号弾発射用の2P130-1 90mm擲弾発射機を装備している。
武装はPKT 7.62mm機関銃1挺のみ。
- RTV:
各種整備機材を装備する野戦工作車型。
- BMP-1P:
- ウクライナ製
- ハンガリー製
- 2B9M(BMP-1ベース型):
ハンガリー軍の自走迫撃砲調達の動きに合わせて開発された自走迫撃砲型。
後部兵員室を拡張した上にシャッターを備え、2B9 82mm自動迫撃砲を装備する。
- 2B9M(BMP-1ベース型):
- ルーマニア製
- MLI-84:
ルーマニアでのライセンス生産型。詳しくは項を参照。
- MLI-84:
- ポーランド製
- チェコスロバキア
- BVP-1:
チェコスロバキアでの名称。
チェコとスロバキアに分離した後もそれぞれの国で引き続き使用されている。
- BVP-1:
- チェコ製
- スロバキア製
- スウェーデン
- Pbv.501:
旧東ドイツから購入したBMP-1のスウェーデン軍での名称。
すでに退役。
- Pbv.501:
- 中国製
- 86式歩兵戦闘車(WZ-501/ZBD-86):
中国北方工業公司によるBMP-1のフルコピーモデル。
詳しくは項を参照。
- 86式歩兵戦闘車(WZ-501/ZBD-86):