【BK117】 †
MBB / Kawasaki BK117.
ドイツのMBB(メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム。現在のエアバス・ヘリコプターズ)と、日本の川崎重工が共同開発したライトツイン型ヘリコプター。
1970年代後半、MBBではBo105を拡大したBo107を計画し、川崎重工でも同社初の実用機KH-7を計画していた。
しかし、世界は折りしも(第四次中東戦争を契機とした)オイルショックの最中であり、ともに単独での開発は困難と判断された。
そこで、偶然にも類似の開発計画を持っていた両者が手を組んで造られたのが本機である。
これは日本にとって、開発に参加した初の実用ヘリコプターとなった。
ローターや油圧系統はBo105の設計がベースとなっており、一方で胴体*1・ランディングスキッド・トランスミッションは川崎が開発した。
エンジンは当初ライカミングLTS101 ターボシャフトエンジンが双発で搭載されたが、信頼性が問題視され、後のBK117C-1型ではチュルボメカ・アリエルへと切り替えられている。
開発だけでなく部品の生産も両国で分担され、それぞれの国へ運ばれて組み立てられた。
このため、ドイツ側で組み立てられた機体であっても、日本の武器輸出三原則等の制限を受けないように、軍用派生型の開発は控えられてきた。
21世紀を迎えるにあたり、大幅な改良を施されたBK117C-2も開発されたが、この際に分担生産体制は解消され、ドイツ側で生産された機体は「EC145」と改称された*2。
EC145はアメリカ陸軍の「LUH(軽汎用ヘリコプター)」調達計画にも入札し、「UH-72『ラコタ』」という名称で制式採用されている*3。
また、エアバス・ヘリコプターズへの移行に伴い、現在は製品名が「H145」と改められている。
参考リンク:http://www.airbushelicopters.com/website/en/ref/EC145_31.html
スペックデータ †
乗員 | 2名 |
定員 | 兵員7〜10名 |
主ローター直径 | 11m |
全長 | 9.91m |
全高 | 3.83m |
全幅 | N/A |
回転円盤面積 | N/A |
空虚重量 | 1,650kg |
最大離陸重量 | 2,850kg |
エンジン | ライカミング LTS101-650B-1ターボシャフト(推力410kW(550shp))×2基 チュルボメカ アリエル1E2ターボシャフト×2基(BK117C-1) |
速度 (最大/巡航) | 141kt/135kt |
海面上昇率 | N/A |
実用上昇限度 | 4,530m |
ホバリング高度限界 | 2,530m |
航続距離 | 292nm |
UH-72A | |
乗員 | 2名 |
定員 | 兵士8名または2台の担架と医療要員 |
全長 | 13.03m |
全高 | 3.45m |
ローター直径 | 11.00m |
空虚重量 | 1,792kg |
最大離陸重量 | 3,585kg |
エンジン | チュルボメカ アリエルIE2?ターボシャフト×2基(出力551kW(738shp)) |
超過禁止速度 | 145kts |
巡航速度 | 131kts |
航続距離 | 685km(370海里) |
実用上昇限度 | 5,791m |
バリエーション †
- BK117:
初期型。
エンジンはライカミング LTS101-650B-1×2基を搭載。
- BK117A-3:
有効搭載重量を350kgに増加したタイプ。
- BK117A-4:
上昇力およびホバリング性能を向上したタイプ。
- BK117B-1:
エンジンをLTS101-750B-1×2基に換装し、高温・高空性能を向上したタイプ。
- BK117B-2:
BK117B-1の有効搭載重量を150kgに増加したタイプ。
- BK117C-1:
エンジンをチュルボメカ「アリエル」1E2×2基に換装し、高温・高空性能を向上したタイプ。
- BK117C-2(EC145→H145):
BK117C-1のキャビンスペースを約30%拡大し、全備重量を3,500kgとした、運動性能や客室の快適性を向上させたタイプ。
- UH-72A「
Lakota *4」:
EC145(H145)の軍用型。
州兵航空隊で運用されているOH-58とUH-1Hの後継機(LUH:軽多用途ヘリコプター)として採用した。
*1 最大10人まで乗れるレイアウトや、後部のクラムシェルドアなど、MBB側の意向や思想も反映されたものになっている。
*2 ただし、この名称はドイツ側生産機体の販売にあたってつけられた名前で、各国の航空当局に登録されている型式は日本製機・ドイツ製機双方とも「BK117」となっている。
*3 なお、この機は日本で原設計が行われ、アメリカ軍に制式採用された2番目の航空機ともなった(第一号は三菱のMU-300をベースとしたビーチ・レイセオンT-1「ジェイホーク」練習機)。
*4 インディアンの部族の一つ。スー族とも呼ばれる。