【B787】 †
Boeing 787 "
ボーイング社がB757・B767・B777の後継として開発した中型双発ジェット旅客機。
開発当初はB7E7と呼ばれていたが、2005年1月28日に正式名称をB787へ変更した。
前世代に比してペイロード・航続距離が増大するとともに、20%の省燃費化を達成している。
これはエンジンの効率化・機体デザインの空力学的洗練・複合材の積極利用による機体軽量化などによる。
また、機構の単純化、自己診断機能の改善、複合材料による耐久性の向上により、整備コストの低減も計られている。
内装面では、複合材により与圧性能が向上し、また金属腐食の恐れがなくなった事で加湿器の利用が可能となった。
加えて、LED照明の採用、窓の大型化、シェブロンノズルによる騒音低減など、快適性の向上も図られている。
納入・就航実績 †
当初の計画では2005年に仕様確定、2006年に製造開始、2007年に初飛行、2008年に就航開始という予定だった。
しかし紆余曲折を経て予定は大幅に遅延し、初飛行は2009年12月15日となった。
遅延の主原因は、下請業者から調達した部品の品質低下であったという。
ローンチカスタマーは全日本空輸。
2011年10月末、成田〜香港間のチャーター便で初の商業運航を実施した。
その他、日本航空、ユナイテッド航空、ラン航空、エア・インディア、エチオピア航空など計28社に納入され、合計500機以上が就航済み。
2013年の重大トラブルによる運航停止措置 †
本機は軽量・小型化のために、バッテリーに民間機としては初のリチウムイオン電池を採用していた。
しかし、2013年1月にバッテリー過熱による火災が相次いで発生。
これによって日本・アメリカでの耐空証明は失効し、他の国々でも運用・納入が停止された。
ボーイングは全ての機体のバッテリーを改修する事で耐空証明を回復し、無事に運行を再開している。
ただし、機体とメーカーに対する信頼を完全に回復したとも言いがたく*2、機体トラブルによる騒動は未だ関係者の記憶に新しい。
スペックデータ †
タイプ | 787-3 (開発中断) | 787-8 | 787-9 | 787-10 (一部推定値) |
乗員 | 2名(機長・副操縦士) | |||
座席数 | 2クラス290〜330名 | 3クラス210〜250名 | 3クラス250〜290名 | 3クラス約300名 |
全長 | 57.0m | 56.7m | 62.8m | 68.3m |
全高 | 16.9m | |||
全幅 | 52.0m | 60.1m | ||
胴体最大幅 | 5.74m | |||
客室最大幅 | 5.49m | |||
最大離陸重量 | 170,000kg | 219,540kg | 244,940kg | N/A |
貨物量 | 16t | N/A | ||
エンジン | GE GEnxターボファン×2基 または ロールス・ロイス? トレント1000ターボファン×2基 | |||
最大燃料容量 | 48,600L | 127,000L | N/A | |
巡航速度 | M0.85 | |||
航続距離*3 | 5,650km | 15,200km | 15,750km | 11,910km |
最大巡航高度 | 13,000m | |||
滑走距離 (離陸/着陸) | -/1,730m | 3,100m/1,730m | 2,900m/1,730m | -/1,730m |
運用状況 †
採用国 | 採用会社 | 機数 | 受領日 | 備考 |
日本 | 全日本空輸 | 61機 | 2011年9月25日 | ローンチカスタマー 確定受注残24機 |
日本航空 | 34機 | 2012年3月25日 | 確定受注残11機 | |
アメリカ | ユナイテッド航空? | 28機 | 2012年9月22日 | 北米大陸初の導入会社 日本路線に使用 |
アメリカン航空? | 15機 | 2015年1月28日 | 確定発注残27機 日本路線に使用 | |
カタール | カタール航空 | 25機 | 2012年11月12日 | 欧州路線に使用 |
インド | エア・インディア | 21機 | 2012年9月6日 | 英国路線および日本路線に一部使用 |
チリ | ラン航空 | 16機 | 2012年8月31日 | 大西洋横断路線、スペイン線に使用 |
イギリス | ブリティッシュ・エアウェイズ? | 13機 | 2013年6月27日 | 東アジア路線に使用 |
トムソン航空 | 9機 | 2013年5月30日 | 大西洋横断路線、カリブ海 英連邦路線に使用 | |
ヴァージン・アトランティック航空? | 6機 | 2014年10月10日 | 大西洋横断路線、アメリカ 合衆国線に使用 | |
カナダ | エア・カナダ | 12機 | 2014年5月18日 | |
オースト ラリア | ジェットスター航空 | 11機 | 2013年10月7日 | 日本路線に使用 |
カンタス航空 | 1機 | 2017年9月20日 | 8機受領予定 超長距離路線*4に投入予定 | |
中国 | 中国南方航空 | 10機 | 2013年5月31日 | 欧州路線に使用 |
海南航空 | 7機 | 2013年7月4日 | 太平洋横断路線・北米路線 に使用 | |
中国国際航空 | 1機 | 2015年2月6日 | ||
エチオピア | エチオピア航空 | 10機 | 2012年8月14日 | アフリカ大陸初の導入会社 日本路線に使用 |
オランダ | KLMオランダ航空 | 10機 | 2015年11月14日 | 787-9型 エールフランスと共同発注で 受注残22機 |
アークフライ | 3機 | 2014年6月5日 | ||
メキシコ | アエロメヒコ航空 | 9機 | 2013年8月16日 | 太平洋横断:日本路線に使用 |
ケニア | ケニア航空 | 9機 | 2014年4月4日 | アフリカ大陸二社目の導入会社 英国路線に使用 |
ポーランド | LOTポーランド航空 | 8機 | 2012年11月11日 | ユーラシア大陸横断:日本路線 に使用 |
ベトナム | ベトナム航空 | 8機 | 2016年12月5日 | 787-9型 |
ノルウェー | ノルウェー・エアシャトル | 7機 | 2013年6月28日 | 長距離格安航空会社 東南アジア路線に使用 |
ニュージーランド | ニュージーランド航空 | 6機 | 2014年7月10日 | 日本路線に使用 |
韓国 | 大韓航空 | 5機 | 2017年2月22日 | 787-9型 計10機受領予定 |
ブルネイ | ロイヤルブルネイ航空 | 4機 | 2013年10月3日 | |
- | ビジネスジェット | 3機*5 | 2014年2月5日 以降 | 欧州立憲君主制国家より 政府専用機新規受注 |
ベルギー | ジェットエアフライ | 1機 | 2013年12月4日 | |
イスラエル | エル・アル航空 | 1機 | 2017年8月23日 | 計18機受領予定(リース込み) |
UAE | United Arab Air Wing | 1機 | 不明 | 787-9型。 政府専用機として使用。 |
派生型のラインナップ †
「##」には顧客ごとのカスタマーコードが入る。
- B787-3##:
交通量の多い路線を的にした290人級の短距離型。航続距離6,500km。
事実上日本専用モデルとして売り込まれたが、開発スケジュールの遅延に伴ってB787-8へ発注が振り替えられ、実機の生産は現時点で行われていない。 - B787-8##:
B787の基本型で、220人級の長距離型。航続距離15,700km。 - B787-9##:
260人級の長距離型。航続距離15,400km。 - B787-10##:
290〜330人級の長距離型。航続距離14,300km(推定)。
2013年6月に発表された長胴型(全長約70m)で、性能上B777-200ERの完全な代替を目指している。
対抗馬であるエアバスA350-900に推定性能で劣るため、さらなる改良が噂されている。
*1 このうち1機(試作6号機)はメキシコ空軍で政府専用機として運用されていたが売却されている。
*2 そのことと(有事の兵員・避難民の輸送も考慮した)ペイロードの問題もあって、日本国政府専用機の後継機トライアルにおいてもB777-300ERに敗れている。
*3 最大積載(旅客及び貨物)時。
*4 パースーロンドン線など。
*5 うち1機は元メキシコ政府専用機。