Last-modified: 2020-07-05 (日) 13:13:25 (4d)

【B777-3SBER】(びーなななななな さんえすびーいーあーる)

Boeing B777-3SBER.

日本国政府が導入し、航空自衛隊が運用する政府専用機
ボーイング社の大型双発旅客機B777-300ER*1をベースとしている。

「B777-3SBER」はボーイング社の顧客コード*2を付した型式表記。
日本政府・自衛隊では「B-777-300ER」と表記している。

なお、B777にとっては本機が初の軍用機型となった*3*4

従来のB747-47Cの後継として2018年に導入。
2019年度から2機(機体記号:80-1111/80-1112)が防衛省航空自衛隊により運用開始された。
主たる用途は皇族・要人・賓客等の(主に海外への)移動、および国外の事変に際して自衛官・避難民を緊急輸送する事。

法令上、皇族・内閣総理大臣・国賓・衆議院議長・参議院議長・最高裁判所長官が利用してよい事となっている。
しかし、防衛省所管の国有財産であるため使用要件は厳しく、単に要人が移動するだけの理由では使用許可が下りないという。
また、道路・鉄道網が高度に発達している日本の国土事情では空路を選択する機会自体それほど多くない。

現在の所属は航空支援集団特別航空輸送隊・第701飛行隊。根拠地は千歳基地
部隊の庁舎は基地側にあるが、本機の格納庫・専用スポット及び整備拠点は新千歳空港側にある。

航空自衛隊B777の運用教則を保有していないため、重整備・乗員及び整備員の教導・グランドハンドリングは一部全日本空輸に委託されている。
ただし、実際の運航スタッフは乗員(パイロット*5フライトアテンダント*6偵察航法幹部*7航空通信士*8)・整備士*9含め全員が航空自衛官から選抜されている。

関連:B777 B747-47C エアフォースワン VC-25 シグナス(コールサイン) ボーイングビジネスジェット

機内構成

コックピット
操縦系統は通常のB777と同じ2マンクルーであるが、偵察航法幹部航空通信士の席も用意されている他、軍用機であるため独自の改装*10が施されていると推定される(機密につき詳細非公開)。
なお、前作のB747-47Cにあった天測用ハッチはないため、駐機中の国旗はコックピットの窓から出すことになっている。
運航要員区画
座席はエコノミークラス相当。
貴賓室等
機体前方部にあるとされるが非公開。
なお、要人の出入りはL2ドア*11*12から行われるため、この付近にあるものと推定される。
会議室
6席。パーテーションで区切ることで2室に分けることができる。
事務室
ファクシミリやコピー機、ワークステーションなどが置かれているとみられるが、詳細は不明。
随行員区画
座席はビジネスクラス相当・21席。
一般区画
座席はプレミアムエコノミー相当・85席(通常)。
マスコミ関係者などの民間人が搭乗する際には運賃(エコノミークラス相当とされているが、詳細な金額は非公開)が請求される。
ギャレー(数か所)
一般のエアライン向け旅客機と同様、機内食・ドリンクの準備などを行う。
食材は千歳基地羽田空港で調達するものと現地調達するものがあり*13、栄養ドリンクなども供される。
貨物室(階下)
B747-47Cと同様、海外の寄港先で不具合が生じた場合に備えてスペアパーツ類が搭載されているという。

座席のグレードは全日本空輸の基準による。

一般のエアライン向けの旅客機と同様、客室には座席ごとに娯楽設備が備えられており*14、機内Wi-Fiによるインターネット接続も可能。
また、B747-47Cに備えられていた記者会見席は廃止されている。

導入の経緯

日本政府は1992年以来、B747-400をベースとしたB747-47Cを政府専用機として用いていた。
しかし就航から20年以上の時間が経過した事により運用寿命が近づいてきた*15

加えて、機体の運航支援を行っていた日本航空が2010年に経営破綻し、経営再建のため*16B747の退役が決定。
これによってB747-47Cの運航支援が継続困難になった*17ため、日本政府は2014年に後継となる政府専用機の選定に着手。
ボーイング社製の中型双発旅客機B787・同社製の大型双発旅客機B777-300ERエアバス社製の大型双発旅客機A350-900が候補に挙がった*18
このうちB777-300ERが採択され、B747-47Cと同数の2機が発注された。

候補に挙がった3機種のうち、B787は「(有事の兵員・避難民の輸送も考慮した)ペイロードの小ささ*19」「機体の信頼性の問題*20」から、A350-900は「現行のB747-47Cと同一メーカーであることの継続性」「日本とアメリカとの同盟関係」「当時、日本での運用実績がなかったこと*21」などで選から漏れている*22

機体は2016年にBBJ 777として完成し、スイスのバーゼルで軍用機及びVIP輸送機としての改装工事を行った後、2018年8月に1号機「N509BJ(→80-1111)」、12月に2号機「N511BJ(→80-1112)」が千歳基地回航された。

また、これと併せて、運航支援にあたる業者も公募。
B777-300ERで応募してきた日本航空ANAホールディングスの二社から、納期やサポート体制などを考慮してANAホールディングスが選定された。

日本航空は老朽化したB777(及びB767)の代替としてA350-900及びA350-1000を導入する計画を持っており、B777を保守する設備・技術を喪いつつあるものと判断された。
一方、ANAホールディングス(全日本空輸)は同じ理由でB777系列の近代化モデル(B777-9)を導入する計画を持っていた。


*1 正確にはビジネス機仕様のBBJ 777(-300ERベース)。
*2 日本国政府が発注したB747-47CE-767では、顧客コードには「7C」が、航空自衛隊が発注したKC-767Jでは「FK」が与えられていたが、本機の発注に際しては、日本国政府が「ボーイングビジネスジェットの新規顧客」として扱われたため「7C」ではなく「SB」が与えられている。
*3 これより以前、アメリカ空軍空中給油機輸送機型が提案されていたが不採用となっていたため。
*4 なお、2015年にはインドも本機と同様にB777-300ERを政府専用機として導入し、空軍で運用することを発表している。
*5 本機を含め、自衛隊機は航空法の適用を除外されているが、部外(全日本空輸)での教育により「B777限定の定期運送用操縦士」の資格も取得している。
*6 航空自衛隊は客室サービスの教則を保有していないため、全日本空輸の関連会社に候補者を派遣し、全日本空輸フライトアテンダントと同様の教育を施して任務につけている。
*7 VIP輸送中の航路設定を行う隊員で、航法士に相当する。
*8 搭乗中の要人が行う通信を受け持つ。
*9 本機を含め、自衛隊機は航空法の適用を除外されているが、部外(全日本空輸)での教育により「B777限定の航空整備士」資格を取得している。
  また、部外の有資格者を技術空曹として採用することもある。

*10 B747-47Cと同様、IFFミサイル接近警報装置、軍用UHF無線機などが備えられていると思われる。
*11 この上部に日章旗の図案がペイントされている。
*12 なお、反対側のR2ドアにあたる部分は締め切られている。
*13 アメリカのVC-25の場合、毒物混入の危険を警戒して食材はすべてベースのアンドリューズ空軍基地で調達される。
*14 前任のB747-47Cには座席ごとの娯楽設備はなかった。
*15 軍用機であることから地上での待機時間が比較的長く、一般のエアライン向け旅客機に比べれば離着陸回数や飛行時間は少なかったが、これによって、同機はB747-400の中古機の中でも特に状態の良い機体になったという。
*16 かつての日本航空は、国内外幹線の主力機としてB747を多く用いていた(-SP及び-8を除く各型合計110機)が、21世紀に入ってからフリートは中〜小型の双発機が主力となり、また、燃料費の高騰もあって、大型で4基のエンジンを備えるB747は「燃費効率の悪い機体」になっていた。
*17 B747の運用自体は全日本空輸と日本貨物航空が行っていたが、全日空は日航と同様にB747の退役を進めており(最終的に2014年に全機退役)、一方の日本貨物航空は、自社にB747の重整備を行える施設を持っていなかった。
*18 三機種とも、ビジネス機仕様にカスタマイズされたモデル(BBJ 787、BBJ 777及びACJ350)がある。
*19 一方、B777-300ERはモノクラスなら550席まで設定可能(加えて、キャビン内部に客室・貨物室とは別に交代乗員用の休憩室を設けることができる)な収容力を持っており、要人輸送と有事の兵員・避難民輸送を両立させることが可能とみられた。
*20 構造材に複合材料が多用されていることが不安視されたことと、就航後まもなく、バッテリーの過熱による火災事故を続発させて耐空証明を一時取り消されたことがあった。
*21 その後、2019年から日本航空が運用している。
*22 なお、アメリカのVC-25の後継機候補であった超大型旅客機・B747-8ICA380は当初から選考対象外だった(後者は2019年から全日本空輸が運用している)。

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