Last-modified: 2019-10-09 (水) 21:30:47 (57d)
【B707】 †
Boeing 707.
1950年代、ボーイング社が初めて開発したジェット旅客機。
後退翼に四発のジェットエンジンを装備し、当時の旅客機としては非常に大型の機体に仕上がった。
本機の原型に当たる試作機、モデル367-80(通称「ダッシュ80」)*1は1954年に初飛行したが、平行して開発されていた空中給油機型のKC-135(B717)にアメリカ空軍が興味を持ち、こちらの契約が先行してしまったため、本機の登場は若干遅れた。
1958年には本機が大西洋路線に就航したが、「ジェット機による世界初の大西洋横断」の称号は英国のデ・ハビランド「コメット4」に取られてしまった*2。
後述のとおり、派生型が多数あり、1991年に生産終了*3となるまで、各タイプ合わせて1,010機もの生産数を誇り、世界各国でいまだに現役機が数多い*4。
(この他、準同型機であるKC-135系列の820機を含めると、総生産数は1,830機となる)
なお、日本ではフラッグキャリアの日本航空がダグラス社製品*5を使い続けていたため、日本籍のオペレーターによる新造機の運用はなかった*6。
関連:KC-135 RC-135 大韓航空機爆破事件? パンアメリカン航空
スペックデータ †
形式 | 707-120B | 707-320B |
乗客数 (2クラス) | 110名 | 147名 |
乗客数 (1クラス) | 179名 | 202名 |
全長 | 44.07m | 46.61m |
最大離陸重量 | 116,570kg | 151,320kg |
エンジン | ターボジェット×4基 | ターボファン×4基 |
P&W JT3C-1 | JT3D-3またはJT3D-7 | |
推力 | 75.6kN | 80kN(JT3D-3) 84.4kN(JT3D-7) |
航続距離 | 6,940km | 10,650km |
主な派生型 †
※KC-135及びRC-135シリーズについては別項目で解説。
民間型 †
- モデル367-80:
初期試作機。
1機のみ製作され、シアトルのボーイング本社工場で飛行可能な状態で維持されていたが、現在はスミソニアン航空宇宙博物館別館に永久保存されている。
- B707-120:
P&W社製「JT3C」ターボジェットを搭載した初期型。
パンアメリカン航空に納入された。
- B707-120B:
エンジンをJT3Dに換装した型。
- B707-138:
707-120の胴体を短縮して航続距離を伸ばした型。
オーストラリアのカンタス航空が使用。後にエンジンはJT3Dに換装された。
- B707-120B:
- B707-220:
エンジンをJT3Cのパワーアップ型「JT4A」に換装した型。
燃費の悪さから5機のみの生産にとどまる。ブラニフ航空で使用された。
- B707-320 "
Intercontinental *7":
707-220をベースに胴体と翼を延長して搭載量を増加させ、航続距離を伸ばした発展型。
- B707-320B:
707-320のエンジンを、P&W社製の「JT3D-3B」ターボファンに換装した型。
ターボファン化によって更に航続距離が伸び、「東京〜モスクワ間ノンストップ飛行」や「太平洋無着陸横断*8」などといった長距離飛行を可能にした。
後に、より強力な「JT3D-7」ターボファンを搭載するタイプもある。
- B707-320C:
B707-320Bの貨客混載・純貨物型。
- B707-320C:
- B707-420:
707-320の機体に、英国ロールス・ロイス?社製のコンウェイ「Mk.508」ターボファンを搭載した型。
英国海外航空*9の依頼によって開発された。
英国海外航空の他にも、ルフトハンザやヴァリグ・ブラジル航空、エル・アル航空で導入されたほか、エア・インディアなどの英国及び英連邦諸国の航空会社が使用した。
- B707-700:
エンジンを高バイパス比・低騒音のCFMインターナショナル「CFM56」に換装した型。
B757との競合を避けるため試作のみで終わる*10。
- B720(B707-020):
707-138を母体に、胴体を短縮し、少なくなったペイロードと燃料搭載量に対応して軽量化した短中距離バージョン。
主翼は前縁内側の形状を変更し、空力も改善されている。
イースタン航空、ウエスタン航空、大韓航空などに導入されたが、より本格的な短中距離機であるB727やダグラスDC-9などの登場により少数の生産に終わる。
- B720B:
エンジンを「JT3D」に換装した型。
- B720B:
- 運輸10(Y-10)「上海」:
中華人民共和国の上海航空機製造会社が、1970年代末期、中国民用航空総局(中国民航(CAAC))の運用していた707をデッドコピーした機体。
当時の技術力不足により2機(構造試験機含む)のみの製造に終わる。
軍用機型 †
下記の通り、主にアメリカ軍が使用しているが、これ以外にもイスラエルやブラジル、オーストラリア、イランなど、各国の空軍や政府に納入された。
- C-18A:
アメリカン航空から購入した中古の320Bの貨物機に付けられた呼称。
殆どの機体は特殊用途に改造された。
- C-137「ストラトライナー」:
アメリカ空軍に納入された輸送機。
主に人員・軽貨物の輸送に使われた。
- VC-137A:
要人輸送機型。B707-153相当。
- VC-137B:
A型のエンジンをP&W JT3D-3に換装した型。
後にC-137Bに改称。
- VC-137C:
アメリカ大統領専用機(エアフォースワン)。B707-353B型。
VC-25およびC-32の就役に伴い退役。
- C-137B:
VIP輸送機から外されたVC-137Bを改称した機体。
- C-137C:
輸送機型。
大統領専用機から外されたVC-137Cが改称された他、新たに民間から2機が取得され改装された。
- EC-137D:
707-320B相当の機体を改造したAWACS機のプロトタイプ。
後に通常のE-3A同様の仕様に改装された。
- EC-137D:
アメリカ南方軍用空中指揮機。1機のみ改装。
EC-137Eとする資料もある。
- VC-137A:
- E-3「セントリー」:
早期警戒機(AWACS)。詳細は上記項目を参照。
当初の形式呼称は「EC-137D」であった。
- E-6「マーキュリー」:
C-130G/Qの後継として、707-320をベースに、潜水艦との超長波通信を中継するために改造したTACAMO*15(空中通信中継)機。
アメリカ海軍航空隊に採用された*16。
- E-8「J-STARS」:
707-320をベースに改造した地上警戒監視機。詳細は上記項目を参照。
- CC-135「ハスキー」:
カナダ空軍の要人輸送機兼給油機型。B707-347Cベース。
- KC-137:
ブラジル空軍の空中給油機型。
- 707:
イラン空軍の空中給油/輸送機型。
- K707:
オメガエア社で運用される空中給油機型。
- 707T/T:
エア・ポルトガルの機体を改装したイタリア空軍の空中給油/輸送機型。
- KE-3A:
サウジアラビア空軍向け空中給油/輸送機型。
- ファルコン707/コンドル:
イスラエルが独自に製作したAWACS。
上記のE-3とは異なり、索敵レーダーを機首部に搭載している(E-3は機体上部に搭載)。
イスラエル空軍ではE-2Cの導入により退役。
*1 元々「モデル367」とは、同社製の超大型レシプロ輸送機・C-97の社内呼称だったが、競合他社を欺くためにこの型式を名乗ることになった。
*2 しかし同機は、前型の「コメット1」が機体構造の欠陥により墜落事故を続発させて信用を失っていたため受注が伸びず、1964年に74機で生産を終了している。
*3 民間向けモデルは1982年に生産を打ち切っており、その後は軍用機モデルのみを生産していた。
*4 現在旅客機として使われている機体は少なく、民間向けモデルの多くは貨物機や個人所有の自家用機に改造されているという。
*5 DC-4/-6/-7C/-8。
*6 なお、日本の機械メーカーであるミネベアがかつて子会社として「ミネベア航空」を保有し、エールフランスから譲り受けた貨物機型を運用していたが、同社はアメリカに本社を置いていた。
*7 この愛称はB747-8で再度使用されている。
*8 ただしこれは、飛行コースの気象状況やペイロードの制限などの条件が揃って可能になるものであり、恒常的に無着陸横断が可能になるのはB747の登場を待たねばならなかった。
*9 後のブリティッシュ・エアウェイズ。
*10 なお、軍用型のE-3やKC-135などではCFM56が取り入れられている。
*11 Military Strategic and Tactical Relay Systemの略。
*12 Advanced Range Instrumentation Aircraft.
*13 Apollo / Range Instrumentation Aircraft.
*14 Cruise Missile Mission Control Airclaft.
*15 Take Charge And Move Out.
*16 現在はアメリカ海兵隊及び空軍との統合運用部隊で使用している。