Last-modified: 2017-02-24 (金) 21:32:22 (90d)

【A-1】(えーわん)

Douglas A-1 Skyraider(スカイレイダー).
第二次世界大戦末期にダグラス社で開発された、アメリカ海軍単発レシプロ艦上攻撃機
空軍との形式名称統合前は「AD」、また、開発当初は「BT2D"デストロイヤーII"」と呼ばれていた。

開発の経緯

1940年代まで、航空母艦に搭載される艦載機は主として次の3タイプがあった。

艦上戦闘機
主に機関銃で武装し、自艦隊及び攻撃目標の上空で戦闘空中哨戒(またはファイタースウィープ)を行って航空優勢を獲得・維持する。
艦上爆撃機急降下爆撃機
爆弾で武装し、急降下爆撃によって目標(敵艦隊・地上目標など)を攻撃する*1
艦上攻撃機雷撃機
航空魚雷もしくは爆弾で武装し、敵艦艇に対する雷撃、艦船・地上目標に対する水平爆撃、艦隊前方海面における敵艦隊の捜索などを行う。

しかし、艦船の対空防御力が強化されるにしたがって、艦上(急降下)爆撃機に搭載できる程度の爆弾では艦船の甲板を破ることが難しくなってしまい*2、また、雷撃機にも対空火器の火線をかいくぐれる敏捷性が求められるようになってきた。
加えて、陸上の飛行場よりも狭い空間である航空母艦の艦内に多種多様な機体を搭載することによって起きるさまざまな不都合も問題となってきた。
そこで、これらの問題を解決すべく、艦上爆撃機雷撃機の2機種を統合した機体として「BTD"デストロイヤー"」が開発され、1943年にデビューした*3が、この機は重量オーバーによる操縦性の悪化が欠点となり、28機で生産が打ち切られた。
本機は、これを教訓に根本的な改良を加え、汎用攻撃機(マルチロールアタッカー)として開発された。

日本との交戦中であった1945年3月に試作機が初飛行した本機であるが、実戦配備は対日終戦後の1946年12月にずれ込み、太平洋戦争には間に合わなかった。

特徴

本機最大の特徴は、単発レシプロ機としては桁外れのペイロードにある。
左右主翼下7ヶ所及び胴体下部1ヶ所の計15ヶ所のハードポイントに、最大3.1トンもの兵装を搭載できたが、これによって、非常に高い攻撃力と汎用性を得ることができ、後述するような多数の派生型を生み出した。

このパワーは、2,600〜3,000馬力を発するライトR-3350エンジンの実用化と、ウェポンベイ構造を廃して全兵装を外部装着とし、機体の剛性を強化する設計を採用する事で実現された。
これは本機の開発当時、陸軍航空隊が使用していた四発重爆撃機B-17「フライングフォートレス」にも匹敵するものであり、同じ頃、日本で開発された同種の機体である「流星」が約1トンしか搭載できなかったことと比べれば破格のものであった。

本機のこの桁外れなペイロードは、現場兵士からは「キッチン以外に運べないものはない」と評された。
これに対し、朝鮮戦争でとあるミッションに参加した機体が爆弾の代わりに流し台をパイロンにぶら下げて飛び、投下したことがある。
また、後のベトナム戦争時には更にここから発展して「この機が運んだことがないのはトイレぐらいであろう」というジョークが語られ、「それならば」と洋式便器を搭載して飛んでみせた、という逸話もある*4

その後、更に派生して「さすがにバスタブは無理だろう」という話が生まれ、実際に機外搭載物として運ぶ準備も進められていたが、これは上官に「さすがにやりすぎ」として出撃直前に止められたという。

最終改装型では核爆弾の運用能力まで実装予定されており、文字通りあらゆる武器を搭載できうる攻撃機とされていた。

戦果

上記の通り、第二次世界大戦には間に合わなかった本機であるが、1950年に勃発した朝鮮戦争では、(「流し台ですら運べる」と称された)大きなペイロードと戦闘機並みの空戦能力を生かして、海軍・海兵航空隊の主力攻撃機として活躍した。

この戦争中、空母「プリンストン(CV-37)」の搭載機が北朝鮮領内のダムを航空魚雷で攻撃する戦果を上げたが、これは2017年現在、世界軍事史上最後の「無誘導魚雷による攻撃によってあげられた戦果」となっている。

その後、1960年代にはジェット機の発達で旧式化したかに見えたが、ベトナム戦争では(ジェット機と比較して)小回りのきくことと大きなペイロードを買われ、ヘリボーン部隊の護衛やCSAR(戦闘捜索救難)といった任務で活躍した。
特に後者では、救難ヘリの到着に先立つ要救助者の位置特定、要救助者を捕虜に取ろうとする敵に対する火力制圧、救難ヘリの誘導・護衛といった重要な役目を担っていた。
また、この任務中には、救難活動の妨害に襲来した北ベトナム空軍のMiG-17Fジェット戦闘機を2度撃墜するという戦果を上げている*5

当初の運用者であったアメリカ海軍海兵隊では1968年までに第一線を退いたが、アメリカ空軍では、ベトナム戦争の最末期である1970年代半ばまで護衛任務に使われ続けた。
また、アメリカ軍以外には英国・フランス・カンボジア・ガボン・チャド・中央アフリカ・フィリピン・南ベトナムの各国軍でも使用されていた。

なお、本機の後継として、エンジンをターボプロップ化したA2D「スカイシャーク」が試作されたが、エンジンの信頼性の問題による開発の遅延と(ターボジェット推進の)A-4が実用化されたことにより不採用となった。

関連:サンディ

スペックデータ

乗員1名
全長11.84m
全高4.78m
全幅15.25m
翼面積37.19
空虚重量5430kg
最大離陸重量11,000kg
最大兵装搭載量3,600kg
エンジンライトR-3350-26WA「サイクロン18」空冷星型18気筒×1基(出力2,800馬力)
速度
(最大/巡航)
518km/h(高度5,500m)/319km/h
海面上昇率870m/min
実用上昇限度8,700m
航続距離最大4,800km
固定武装イスパノ・スイザ HS.404? 20mm機関砲×4門
兵装胴体下パイロン航空魚雷または増槽
主翼下パイロン(14か所):
2,000ポンド爆弾×2発または増槽×2本・ナパーム弾ロケット弾など


主な派生型(カッコ内は生産・改修機数)

  • XBT2D-1(各タイプ計25機):
    R-3350-24Wエンジン(出力2,300hp)を搭載する原型機。

  • XBT2D-1N(試作3機):
    レーダーを搭載した3座夜間攻撃機モデル原型機。

  • XBT2D-1P(試作1機):
    カメラを搭載した写真偵察機モデル原型機。

  • XBT2D-1Q(試作1機):
    複座の電子妨害機モデル原型機。

  • BT2D-2(1機):
    改良型攻撃用試作機。

  • XAD-2:
    原型機XBT2D-1の燃料タンク増大型。

  • AD-1(BT2D-1)(242機):
    初期生産型。原型に比べて構造が強化された。

    • AD-1Q(35機):
      複座の電子妨害機型。
      仕様はXBT2D-1Qに準ずる。

    • AD-1U:
      電子妨害および標的曳航機型。非武装。

  • AD-2(156機):
    エンジンをライトR-3350-26W(出力2,700馬力)に換装し、燃料を増加、構造強化を施したモデル。

    • AD-2D:
      無人機改造型の非公式名称。
      核実験後の空気中の放射性物質を収集するのに使用された。

    • AD-2N:
      夜間攻撃型。

    • AD-2Q(21機):
      複座の電子妨害機型。

    • AD-2QU(1機):
      電子妨害および標的曳航機型。AD-1Uと同じく非武装。

    • AD-2W:
      早期警戒機型。

  • AD-3(125機):
    燃料タンクの増大や着陸脚の強化・延長、キャノピーデザイン及びプロペラが変更された型。

    • XAD-3E(AD-3E)(AD-3Wより2機):
      対潜任務機型。

    • AD-3N(15機):
      3座夜間攻撃型。

    • AD-3Q(31機):
      複座電子妨害機型。

    • AD-3S:
      AD-3Nを改造した対潜攻撃機型。
      作戦時はAD-3Eとペアを組んで行動する(ハンターキラー)。

    • AD-3W(2機):
      3座の早期警戒機型。改良型APS-20レーダーを搭載。

  • AD-4(344機):
    全備重量を拡大し、自動操縦装置の追加や着陸脚の強化、レーダーの改良などを施した型。

    • AD-4B(194機):
      20mm機関砲を2門から4門に強化し、戦術核爆弾の運用能力を付与した型。

    • AD-4L:
      寒冷地対応能力強化型。主に韓国への配備用。

    • AD-4N:
      3座の夜間攻撃および電子妨害型。

    • AD-4NA(A-1D):
      AD-4Nの対地攻撃機改良型。
      夜間装備を撤去し、20mm機関砲を2門から4門に強化した。

    • AD-4NL:
      AD-4Nの極地対応能力強化型。

    • AD-4Q(39機):
      AD-4の複座の電子妨害機型。

    • AD-4W(168機):
      3座の早期警戒機型。

      • Skyraider AEW Mk 1(50機):
        イギリス海軍での呼称。

  • AD-5(A-1E)(212機):
    サイド・バイ・サイド配置の複座型。
    垂直尾翼面積を拡大し、側面のダイブブレーキを廃止。

    • AD-5N(A-1G):
      4座の夜間攻撃および電子妨害型。

    • AD-5Q(EA-1F)(54機):
      AD-4の4座の電子妨害機型。

    • AD-5U:
      標的曳航/多用途輸送機改修モデル。

    • AD-5S:
      対潜作戦評価機型。
      磁気異常探知装置(MAD)を装備。

    • AD-5W(EA-1E)(156機):
      早期警戒機型。
      AN/APS-20?レーダーを搭載。

    • UA-1E:
      AD-5の汎用機型。

  • AD-6(A-1H)(713機):
    低空侵攻用近接支援機モデル。精密低空爆撃用機器を装備。

  • AD-7(A-1J)(72機):
    エンジンをライトR3350-26WB(出力3,050馬力)に換装し、機体構造を強化した最終生産型。


*1 アメリカでは艦隊前方海面における敵艦隊の捜索任務も割り振られていた。
*2 艦上爆撃機には、急降下爆撃のための俊敏さが求められていたため、当時の非力なエンジンではどうしても大型の爆弾を搭載できなかった。
*3 同じ頃、日本海軍でも同様のコンセプトを備えた「流星?」が開発されている。
*4 この時は、わざわざ炸薬と信管を便器に取り付けて爆弾に改造し、ハードポイントも便器を搭載できるように改造するほどの気合の入れっぷりだった。
*5 1回目(1965年)は4対1の状況で「ラフベリィ・サークル*6」で撃墜し、2回目(1966年)はオーバーシュートしたところを機関砲で撃墜。
*6 通称「芝刈り機戦法」。2機ずつがチームを組んで旋回戦を挑む。

トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS