【96式多目的誘導弾システム】 †
Type96 Multi-Purpose Missile System (MPMS).
日本で現在使用されている対戦車ミサイルのひとつ。愛称は96マルチ。
型式名ではATM-4と呼ばれる。
79式対舟艇対戦車誘導弾?(重MAT)の後継と言われるが、弾体はより大型となり、見通し線外射撃(発射地点から直視できない目標に対して攻撃できる)能力を持ち、射程も遥かに長い*1。
また、弾頭も大きく単一の成形炸薬弾頭で、ミサイルは目標手前の上空まで急上昇しながら進んだ後、目標に向かって鋭角に落下するため爆発反応装甲を含めた上面装甲を貫通可能としている。
発射後はプログラム飛翔により目標付近上空まで飛翔後、ミサイル先端の赤外線カメラより光ファイバーケーブルを介して送られてきた画像を操作員が見て、コントロールパネルで目標を指示するか、直接操作する。
そのため、発射後に攻撃を中止することも出来る。
必要に応じて地上装置側から対戦車・対舟艇の弾頭作動モード(延期・短延期)を変更できる。
実際に運用される際は、高機動車のシャーシに搭載された発射装置2台(地上誘導装置、発射機(ミサイル6発))と73式大型トラックに搭載された情報処理装置、射撃指揮装置、観測機材、装填機で1セットとなる。
調達価格は1セット約14億円で、普通科において最も長射程、高価な兵器である。
光ファイバー有線誘導式ミサイルはアメリカや欧州でも研究されている*2が、2023年現在で実用化、実戦配備しているのは日本とイスラエルのスパイクLRのみである。
推進装置のジェット化が検討されたことがあり、実際にエンジンの試作も行われたが、これはまだ実現していない。
また、シングルランチャ化も構想されていた。
構成 †
以下の5種+装填機(LDU)の6両(1個射撃分隊)でシステムが構成される。
- 情報処理装置(IPU):73式大型トラックに搭載。
- 射撃指揮装置(FGU):目標選定等を担当。高機動車に搭載。
- 地上誘導装置(GGU):ミサイル誘導を担当。高機動車に搭載。
- 発射機(LAU):乗員2名。高機動車に搭載。
- 観測機材(OPU):前進観測を担当。高機動車に搭載。
- 装填機(LDU):予備弾を含む。73式大型トラックに搭載。
配備部隊・機関 †
- 富士学校
- 富士教導団対舟艇対戦車隊
- 武器学校(整備教育用)
- 通信学校(通信教育用)
- 北部方面隊
- 北部方面混成団
- 第1陸曹教育隊普通科教育中隊(初級陸曹対戦車課程教育用)
- 北部方面対舟艇対戦車隊
- 第2師団
- 第2対舟艇対戦車中隊
- 第2対舟艇対戦車中隊
- 北部方面混成団
- 西部方面隊
- 西部方面対舟艇対戦車隊
- 西部方面対舟艇対戦車隊
- 過去に装備していた部隊
スペックデータ †
全長 | 2.0m |
直径 | 16cm |
発射重量 | 60kg |
推進方式 | 固体推進ロケットモーター |
誘導方式 | 光ファイバTVM(赤外線画像誘導)方式 |
目標 | 戦車・上陸用舟艇他 |
射程 | 非公開(10km以上) |
製造 | 川崎重工業(株) |
価格 | 24億円(システム1式(平成24年度))/約5,000万円(ミサイル(1発あたり)) |
派生型 †
- 多目的誘導弾システム(改):
現在開発中の後継システム。
現有装備と比較して射程の延伸、同時多目標対処、高速目標対処、全周対処等の機能・性能を向上、取得コストの低減を図っている。
また、現有システムが6両で構成されているのに対して、指揮統制装置・捜索標定装置・発射装置(いずれも高機動車)の3両で構成されており、簡素化が図られている。
*1 非公表だが、有効射程は10kmを超えるといわれており、この手のミサイルとしては非常に長い。
*2 MGM-157 EFOGM(アメリカ、1990年計画中止)やポリフェム(ヨーロッパ、2003年計画中止)。