Last-modified: 2023-05-14 (日) 09:48:04 (198d)
【89式装甲戦闘車】 †
1980年代に開発された、陸上自衛隊初の歩兵戦闘車(IFVもしくはMICVとも呼ばれる)。
近年の陸上戦闘の様相の変化、並びに当時開発中の90式戦車と共に戦闘行動を行う事を目的として1989年に制式化された車輌である。
従来のAPCを刷新する車両ではなく、それらを補完し、普通科(歩兵)の対戦車・対装甲打撃力を強化し、戦車と共に敵の突破・機動打撃戦闘を行う事が主目的とされている。
公式の愛称は「ライトタイガー」だが、現場の隊員の間ではFighting Vehicleを略したFV(エフブイ)と呼ばれる事が多い。
対AFV用に、スイスのエリコン社製90口径35mm機関砲KDE*1と79式対舟艇対戦車誘導弾(通称:重MAT)、74式車載7.62mm機関銃を備え、防御力に優れた防弾圧延鋼板製の車体を持ち、夜間戦闘装備も備えている。
隊員の搭載力は73式装甲車などと比べると若干劣るが、それでも普通科隊員10名が乗車でき、 また、それぞれの隊員が車体横と後方の銃眼(ガンポート)から乗車したまま小銃の射撃が出来る*2。
火力、防御力共に当代随一の性能を備え、各国の歩兵戦闘車と比べても遜色はないが、1台当たり6〜7億円弱と調達価格が非常に高く、また、1991年のソ連崩壊に伴い、北海道方面での機甲戦勃発の可能性が減少。
更には同年に株・土地バブル経済も崩壊したことによる需要減少の煽りを受けてしまったのが決定打となり、2004年の調達中止までわずか68両しか生産・調達されなかった*3。
配備部隊 †
- 武器学校(茨城県阿見町・土浦駐屯地所在、整備教育用として少数のみ配備)
- 富士学校
- 北部方面隊
スペックデータ †
乗員 | 3名(車長兼分隊長・操縦手・砲手)+兵員7名 |
全長 | 6.84m |
全高 | 2.50m |
全幅 | 3.20m |
戦闘重量 | 26.5t |
懸架・駆動方式 | トルクコンバーター(前進4速・後進2速) |
エンジン | 三菱重工製6SY31WA型 4サイクル直列6気筒水冷ターボチャージドディーゼル (出力600hp) |
出力重量比 | 22.22hp/t |
登坂力 | 60% |
超堤高 | 0.8m |
超壕幅 | 2.4m |
最大速度 | 70km/h(路上) |
行動距離 | 400km |
兵装 | エリコンKDE 90口径35mm機関砲×1門 (弾数251発、35x228mm弾を使用、APDSやHEI(焼夷榴弾)等の弾種が用意されている) 74式車載7.62mm機関銃×1挺(弾数2,000発) 79式対舟艇対戦車誘導弾?(重MAT)発射装置×2基(ミサイル4発) 4連装76mm発煙弾発射器×2基 |
製作 | 三菱重工(車体)、日本製鋼所(35mm機関砲・ライセンス生産)、 川崎重工(誘導弾発射装置) |
派生型 †
*1 本車と同様の運用目的を持つアメリカのM2ブラッドレーは25mm機関砲を採用している。
*2 このことは、一部で「防御上の欠点」と言われているが、状況によりけりであり何とも言えないのが現状である。
*3 年間調達数に関しても、1996年以後は1両だけ〜3両、最多であった1990年・1991年の時でも、たったの9両という結果に終わっている。
*4 改編により第5中隊は廃止されている。