【87式自走高射機関砲】 †
陸上自衛隊が、前線で機動する機械化部隊の防空用として装備する自走式対空機関砲。
陸自創設期にアメリカから輸入されたM42「ダスター」?自走高射機関砲やM15A1対空自走砲の後継として開発された。
防衛省は略称を「87AW」、広報向け愛称を「スカイシューター」としているが、制服組は例によってこれを黙殺している。
部隊では「ガンタンク」「ハエ叩き」などと呼ばれているという。
車体は三菱重工、砲および砲塔は日本製鋼所、射撃統制装置を三菱電機が生産を担当している。
車台には74式戦車の車体をベースとした物を使用し、1983年に試作車両が完成、1987年に制式化された。
当初の計画では61式戦車のシャーシを用いることになっていたが、車体に対して砲塔が過大であったことや計画自体が10年ほど延期されたことによるST車体の陳腐化のため、生産にあたって74式のシャーシに変更された。
砲塔左右にKDA 35mm高射機関砲を1門ずつ、計2門装備している。
また、試作車には92式地雷原処理ローラ用の装着部があったが量産車では廃止されている。
射撃統制装置はデジタル式で砲塔後部のパルスドップラー方式の捜索レーダーおよび追尾レーダーで構成され、目標発見、捕捉、追尾、発射までの過程をリアルタイムで算出し、車体、砲の動揺修正も全て自動的に行う。
高度なECM環境下でのバックアップ用に、TVカメラ、低光度TVカメラ、赤外線映像装置、レーザー測遠機などの光学照準システムも搭載されている。
射撃統制装置やレーダー機器を装備した高性能な自走式対空砲だが、約15億円超と調達費が高額になったため年に数両しか導入できず、わずか52両で調達が終了した。
配備されている部隊も、北海道に駐留する第7師団高射特科連隊及び第2師団高射特科大隊の1中隊のみと、ごく少数に留まっている。
なお、レーダー機器の配置はゲパルト自走式対空砲同様の配置を理想としていたが、ゲパルトのレーダー配置が特許を取っていたため、それに触れないように配置されている。
配備部隊・機関 †
- 北部方面隊
- 防衛大臣直轄部隊
- 陸上自衛隊高射学校
- 高射教導隊第3高射中隊(2個小隊:8両)
- 陸上自衛隊武器学校(土浦駐屯地)
- 陸上自衛隊高射学校
スペックデータ †
乗員 | 3名 |
全長 | 7.99m |
全高 | 4.40m |
全幅 | 3.18m |
戦闘重量 | 38.0t |
エンジン | 三菱10ZF22WT 2ストロークV型10気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル (出力720hp/2,200rpm) |
最大速度 (路上) | 53km/h |
行動範囲 | 300km |
有効射程 | 4,000m |
発射速度 | 550rds/min |
兵装 | KDA 90口径35mm高射機関砲×2門(仰角-5〜80度) 発煙弾発射機(初期型は3連装、後期型は4連装) |
使用弾薬 | 徹甲榴弾・榴弾(近接信管なし) 装弾筒付曳光徹甲弾(APDS-T)(対地攻撃用) |