【10式戦車】 †
陸上自衛隊に採用されている、第4世代(一説には第3.5世代)主力戦車。
従来使用されてきた74式戦車及び90式戦車の後継として2002年に試作を開始、2009年12月に制式化された。
2010年度予算から調達が開始され、2011年度より富士教導団戦車教導隊などから順次配備されている。
有事の前線として想定される北海道・九州に集中配備される方針。
本州・四国の部隊には本車ではなく16式機動戦闘車を配備する予定となっている。
陸上自衛隊の戦闘車両としては初めて、C4Iシステム「ReCs?(Regiment Command Control system:基幹連隊指揮統制システム)」に対応。
他の戦車や普通科(歩兵)部隊と情報・指揮系統を共有し、一体化した作戦行動が可能である。
個々の戦車もタッチパネル式のディスプレイを備え、敵をデータベースと照合して自動的に脅威度を判定する等高度な電子化が施されている。
将来はこれに加え、航空科が装備するOH-1観測ヘリコプターやAH-64D攻撃ヘリコプターとの連携も想定されている。
主砲・装甲・機動力等の基本的な性能は、全て前世代の90式戦車と同等以上を目標としている。
基礎科学技術の成熟により、主砲・装甲ともに前世代より軽量化しつつ性能向上も実現している。
攻撃面では主砲を国産の「10式戦車砲」(44口径120mm滑腔砲)に置換。
また火器管制装置の進化により命中精度の向上が図られ、スラローム走行中でも動目標への命中を見込める。
防御面では装甲の材料工学的な向上と共に、各部装甲をモジュール化して交換修理を容易にしている。
更に、車体の四隅に全周囲監視装置を装備し、車輌構造は対赤外線ステルス性能の向上を図っている。
機動力を高めるためにサスペンション・電子制御・エンジン・電源装置・履帯などもそれぞれ次世代に更新。
自身の姿勢や主砲の向きに応じて自動制御され、40t級に軽量化された車体でも120mm滑腔砲の反動を受け止める事に成功している。
バックでも70km/hで走行可能となり、旋回半径も90式の半分程度に改善。市街戦での対ゲリラ戦に対応した形となっている。
車体は90式戦車より小型軽量で、74式戦車と同じく73式特大型セミトレーラによる輸送が可能である。
主な配備部隊 †
スペックデータ †
10式戦車 | |
乗員 | 3名(車長、砲手、操縦手) |
全長 | 9.42m |
全高 | 2.30m |
全幅 | 3.24m |
全備重量 | 約44t |
懸架方式 | 油気圧式 |
エンジン | 三菱8VA34WTK 4サイクルV型8気筒水冷ディーゼル(出力1,200ps/2,300rpm) |
変速機 | 油圧機械式無段階自動変速操向機(Hydro-Mechanical Transmission,HMT) |
最大速度 | 70km/h(前進・後進速度) |
装甲 | 複合装甲(正面要部) 均質圧延鋼装甲 増加装甲(装着時は各部) |
兵装 | 10式戦車砲(44口径120mm滑腔砲)×1門(日本製鋼所製) 12.7mm重機関銃M2×1挺(砲塔上面) 74式車載7.62mm機関銃×1挺(主砲同軸) 76mm発煙弾発射筒(砲塔側面) |
製作 | 三菱重工業 |
11式装軌車回収車 | |
全長 | 9.1m |
全幅 | 3.4m |
全高 | 2.6m |
重量 | 44.4t |
速度 | 約70km/h |
武装 | 12.7mm重機関銃M2×1挺 8連装発煙弾発射筒 |
牽引・吊り上げ能力 | 牽引力:45t以上 吊り上げ力:25t以上 |
バリエーション †
- 11式装軌車回収車:
戦車回収車型。
本車(試作4号車)の車体を流用して、ブームクレーンや各種の回収/整備機材を搭載したもので、2013年(平成25年)3月に完成した。