Last-modified: 2022-09-03 (土) 11:28:43 (33d)

【彗星】(すいせい)

空技廠(海軍航空技術廠)D4Y.

大東亜戦争中期に開発・生産された、日本海軍艦上爆撃機
連合国軍のコードネームは"Judy"。

九九式艦上爆撃機の後継機種計画、「十三試艦上爆撃機」として空技廠で試作された。
最大速度519km/h、航続距離1,842kmの要求はかなり厳しく、設計陣は徹底した空力的洗練で対応した。
そのため、エンジンは正面投影面積が小さく、空力的に有利となる液冷エンジンとした。

1940年11月の完成当初、試作機はダイムラー・ベンツ「DB600G」液冷エンジンの愛知航空機ライセンス生産型「AE2A」を搭載していたものの、試験飛行で要求性能に届かなかった。
そこで、当時試作中だったダイムラー・ベンツ「DB601A」のライセンス生産型「十三試ホ号(後のアツタ二一型)」*1にエンジンを換装した結果、性能は大きく向上した。

かつて、海軍は十試艦上軽爆として、液冷エンジン搭載のドイツ・ハインケル製He118?*2急降下爆撃機の選定を検討していた。
しかし、輸入した試作機の飛行試験により、機体性能に問題があるとされて見送られた。
ただし、本機の設計は彗星に影響を与えた。

制式採用より以前、爆弾槽にカメラを装備したタイプが「二式艦上偵察機」として空母蒼龍に先行配備され、ミッドウェー海戦に参加した。

その後、機体構造を強化、完成した「アツタ二一型(離昇1200馬力)」の搭載などを経て1940年12月には「彗星一一型」として制式採用、量産が開始される。
1943年後半のソロモン諸島での戦闘から実戦投入された。

1943年5月にはエンジンを「アツタ三二型(離昇1400馬力)」に換装、最高速度が向上した「彗星一二型」試作機が完成した。
しかし、このころから資源不足や基礎工業力の低下によりアツタ三二型の生産速度は急速に低下、機体は完成していながらも搭載エンジンがない状態の「首無し機」が大量発生した。
そのため、1943年12月からは彗星一二型と並行して、空冷の「金星六二型(離昇1560馬力)」にエンジンを換装した「彗星三三型」が生産されることとなった*3
1945年には彗星三三型の生産工程を簡易化した、実質的な特攻専用機である「彗星四三型」が投入された。

最終的な生産数は2,253機で、そのうち一一型系統が705機、一二型が約710機、三三/四三型が約830機となる。

スペックデータ

形式彗星一一型彗星一二型彗星三三型
機体略号D4Y1D4Y2D4Y3
乗員パイロット2名
全長10.22m10.24m*4
全高3.175m3.069m
全幅11.5m
主翼面積23.6
自重2,510kg2,635kg2,501kg
過荷重重量3,960kg4,353kg4,657kg
プロペラハミルトン定速3翅
発動機愛知 アツタ二一型
液冷倒立V型12気筒
(離昇1,200馬力)
愛知 アツタ三二型
液冷倒立V型12気筒
(離昇1,400馬力)
三菱 金星六二型
空冷星型複列14気筒
(離昇1,500馬力)
最高速度546.3km/h(高度4,750m)579.7km/h(高度5,250m)574.1km/h(高度6,050m)
上昇限度10,700m
上昇力9分28秒/高度5,000m7分14秒/高度5,000m9分18秒/高度6,000m
航続距離1,783km(正規)
2,196km(過荷)
1,517km(正規)
2,389km(過荷)
1,519km(正規)
2,911km(過荷)
固定武装7.7mm固定機銃×2挺
(機首・携行弾数各600発)
7.7mm旋回機銃×2挺
(後上方・97発弾倉×6)
7.7mm固定機銃×2挺
(機首・携行弾数各400発)
7.7mm旋回機銃×2挺*5
(後上方・97発弾倉×6)
7.7mm固定機銃×2挺
(機首・携行弾数各400発)
7.7mm旋回機銃×2挺
(後上方・75発弾倉×3)
爆装250kgまたは500kg爆弾×1発
(胴体)
250kgまたは500kg爆弾×1発
(胴体)
30kg〜60kg爆弾×2発
(翼下)
250kgまたは500kg爆弾×1発
(胴体)
250kg爆弾×2発
(翼下)
生産機数2,157機(空冷型等含む)


主なバリエーション

  • 十三試艦上爆撃機(D4Y1):
    DB-601A液冷エンジンを搭載した試作型。生産数5機。

  • 二式艦上偵察機一一型(D4Y1-C):
    カメラと爆弾倉内蔵式増槽を追加した艦上偵察機型。

  • 二式艦上偵察機一二型(D4Y2-C/R)*6
    発動機を「熱田」三二型に換装した艦上偵察機型。

  • 二式艦上偵察機一二甲型(D4Y2-Ca/Ra):
    後方旋回機銃を13mm機銃に変更した武装強化型。

  • 彗星一一型(D4Y1):
    アツタ二一型(離昇1,200馬力)発動機搭載の初期型。

  • 彗星一一型甲(D4Y1a):
    後方旋回機銃を13mm機銃に変更した武装強化型。

  • 彗星一二型(D4Y2):
    アツタ三二型(離昇1,400馬力)発動機を搭載する艦上爆撃機型。
    風防形状や照準器が変更されている。

  • 彗星一二甲型(D4Y2a):
    後部旋回機銃を13mm機銃に変更した武装強化型。

  • 彗星一二戌型(D4Y2-S):
    偵察員席後方に20mm斜銃4丁を搭載した試作夜間戦闘機
    三〇二空を始めとする本土防空部隊と芙蓉部隊?に配備された。

  • 彗星二一型(D4Y1改):
    伊勢型航空戦艦への搭載用に機体構造を強化し、カタパルト射出可能に改造した型。
    一一型から改造。発動機は「熱田」三二型に換装されている。

  • 彗星二二型(D4Y2改):
    航空戦艦への搭載用に機体構造を強化し、カタパルト射出可能に改造した型。
    一一型または一二型を改造。

  • 彗星二二甲型(D4Y2a改):
    航空戦艦への搭載用に、一二甲型をカタパルト射出可能に改造した機体。

  • 彗星三三型(D4Y3):
    液冷エンジンの整備性、生産性の悪さから、空冷の金星六二型(離昇1,560馬力)に換装した陸上爆撃機型。
    試作機を除き制動フック無し。
    一二型同様、後方旋回機銃を13mm機銃に強化した三三甲型(D4Y3a)も生産された。
    ポツダム宣言受諾後、九州南方への特攻に出撃した宇垣纒(うがきまとめ)中将の最後の乗機も本機である。

  • 彗星三三戊型(D4Y3-S):
    三三型の偵察員席後方に20mm斜銃を追加した夜間戦闘機型。
    大戦末期に一二戊型の代替として三〇二空などに少数機が配備。

  • 彗星四三型(D4Y4):
    後席を廃止し*7、防弾装備を強化、爆弾倉扉廃止などの改修を施した簡易型で実質的な特攻専用機。
    加速用の火薬ロケット(RATO)を装備するために胴体下部にロケット装着用の大きな切欠きがある*8

  • 彗星五四型(D4Y5):
    計画機。発動機を「誉」一二型(公称1,650hp)に換装した型。


*1 余談だが、DB601Aのライセンス契約は陸軍主導で川崎航空機も行っており、ハ40として量産されて三式戦闘機「飛燕」に搭載された。
  しかし、愛知・川崎間でエンジンの規格は統一されておらず、よって陸海軍のそれらに互換性はない。

*2 ユンカース社のJu87との競争作で、ドイツ空軍では採用されなかった。
*3 後に、ほぼ同様の事態が陸軍戦闘機 飛燕で発生している。
*4 愛知航空機の資料による。
*5 後期生産型は、三三型と同じく7.92mm旋回機銃を搭載。
*6 なお、文献では主にD4Y2-Rが使われているが、陸上基地からの運用が多かった事からであり、D4Y2-Cも誤りではない。
*7 一部は複座型に戻されている。
*8 空気力学的な問題から、実際は未装備だった。

トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS