Last-modified: 2023-08-26 (土) 11:36:22 (35d)

【烈風】(れっぷう)

三菱 A7M「烈風」。

三菱大東亜戦争太平洋戦争)中に開発した戦闘機連合国でのコードネームは"Sam(サム)"。

当時、海軍航空隊の主力戦闘機だった零式艦上戦闘機を上回る機体が出現するのに備え、昭和15年から三菱に開発が命じられていたが、零戦や一式陸上攻撃機の性能向上のための対応、及び雷電の再設計に追われ、技術者の不足で一時中断していた。
その後、昭和17年に開発を再開した。

零式艦上戦闘機と同等の航続力や機動性に加え、更に最高速度は639km/h、上昇力も6分/6,000mとしたことから困難な要求であった。
特に翼面荷重値の制限が厳しく、それに対して主翼の面積を増やすことにより解決を試みたため、翼面馬力比や馬力荷重に欠け、運動性は芳しい物ではなかった。

当初、三菱航空機は自社製の「ハ43」エンジンを搭載する予定であったが、開発が先行していた「誉二二型(NK9K)」エンジンに変更された。
また、軍部からの度重なる要求変更が更に開発を困難にした。
こうした経緯をもつ「A7M1」試作1号機は昭和19年4月にようやく完成するものの、誉二二型エンジンは所定の性能を発揮せず*1、最高速、上昇力不足が解消できなかったことから開発は暗礁に乗り上げた。
また、この時点で日本海軍の空母艦隊は壊滅しており*2艦上戦闘機としての開発は中止された。

昭和19年10月には、開発中の烈風高高度性能向上型(のちの烈風改)の実験機として改めて「ハ43」を搭載した「A7M2」が要求性能を達成し、昭和20年6月には「烈風一一型」として制式採用が決定した。
しかし、ハ43、機体共に量産体制は絶望的で、試作機8機の完成で終戦となった。

性能諸元

形式名十七試艦戦
(試製烈風)
烈風一一型
機体略号A7M1A7M2
乗員1名
全長10.995m11.04m
全高4.23m
翼幅14m
翼面積30.86
翼型root:MAC361 mod
tip:MAC361 mod
空虚重量3,110kg3,267kg
正規全備重量4,410kg4,719kg
発動機中島/海軍空技廠 誉二二型
空冷星型複列18気筒×1基
三菱 「ハ四三」一一型(MK9A)
空冷星形18気筒×1基
発動機出力離昇2,000馬力/1,471kW離昇:2,200馬力/1,618kW
1速:2,020馬力/1,485kW(高度1,100m)
2速:1,800馬力/1,323kW(高度5,000m)
プロペラ住友V.D.M. 金属製定速4翅(直径3.6m)
最大速度574.1km/h(高度6,190m)624.1km/h(高度5,760m)
627.8km/h(高度5,660m、非武装軽荷重状態)
巡航速度-417km/h(高度4,000m)
上昇力9分54秒/6,000m(11.24m/s)6分5秒/6,000m(16.44m/s)
上昇限度-10,900m
航続距離全力30分+2,315km(増槽あり)1,600km
全力30分+1,960km(増槽あり)
翼面荷重143kg/152.9kg/
馬力荷重334W/kg0.350kW/kg
武装九九式二号四型20mm機銃×2挺
(翼内・携行弾数各200発)
三式13.2mm機銃×2挺
(翼内・携行弾数各300発)
九九式二号四型20mm機銃×4挺
(翼内・携行弾数各200発)
爆装30kg又は60kg爆弾×2発


派生型

  • 十七試艦上戦闘機/試製烈風(A7M1):
    試作型。試作8機のみ。
    発動機は誉二二型(離昇2,000馬力)を装備するが、後に低圧燃料噴射装置を追加した誉二四型への換装が計画された。
    防弾装備の追加に対応したため、初期試作機と後期試作機では燃料タンク配置や防弾装備が異なる。

  • 烈風一一型(A7M2):
    発動機をハ43一一型(離昇2,200馬力)に換装した型。
    発動機以外は基本的にA7M1後期試作型とほぼ同じ装備を持つが、カウリング設計がハ43の直径に合わせて太いものに変更されている。
    生産型では武装を九九式20mm機銃4挺に強化し、発動機を高高度性能の向上したハ43一二型(離昇2,150馬力)に換装する予定だった。
    艦上戦闘機ではなく局地戦闘機として採用されるが、量産一号機の完成直前に終戦。

  • 烈風性能向上型(A7M3):
    A7M2の発動機を一段三速過給器付きのハ43五一型(離昇2,130馬力)に換装、武装を翼内20mm機銃6挺装備に強化した高高度型。
    開発開始当初の名称は“仮称烈風三速”。試作機の製作準備中に終戦。

  • 烈風改(A7M3-J):
    発動機を排気タービン過給器付きのハ43一一型ル(離昇2,200馬力)に換装、武装を翼内五式30mm機銃4挺(携行弾数各60発、過荷重時各73発)、胴体30mm斜銃2挺(携行弾数各100発)に強化した高高度型。
    発動機の換装と排気タービン過給器の装備、武装強化のため操縦席周辺と尾翼を除く機体の大半を改設計した。
    試作機の製作準備中に終戦。

  • 次期甲戦闘機(二十試甲戦闘機):
    A7M2またはA7M3-Jをベースにした機体に二段三速過給器付きのハ四四-二一型(離昇2,400馬力)を搭載した高高度戦闘機型。試作のみ。
    堀越二郎著『零戦』において二十試甲戦として紹介されている。

  • キ118:
    昭和20年(1945年)に陸軍が三菱への発注を予定していた近距離戦闘機。
    当時の三菱に新たな戦闘機を設計できる余裕はなく、発動機がハ四三であることから、烈風系列を基にした機体だとする説が存在する。


*1 この時期に生産された「誉」は不具合が多発していた。
*2 何隻かの正規空母は生き残っていたが、燃料及び護衛艦艇の不足で外洋に出られなかったことと、搭載される艦載機の数および練度が不足しており、「エセックス」級正規空母や「カサブランカ」級、「コメンスメント・ベイ」級護衛空母を多数建造させていたアメリカ艦隊に対抗できる状態ではなかった。

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