Last-modified: 2022-11-30 (水) 20:34:00 (3d)

【零式艦上戦闘機】(れいしきかんじょうせんとうき)

日本海軍が1940年に制式採用した艦上戦闘機ゼロ戦と呼ばれることも多い。
海軍での形式名称は「三菱A6M」。
連合軍のコードネームは「Zeke(ジーク)(三二型はHamp)」。

1937年に開発指示の下った本機に対し、日本海軍は「500/hの速度」、「前任機の九六式艦戦と同等の運動性」、「広大な太平洋戦域に対応可能な航続距離」、「高度3,000mまで3分30秒以内の上昇力」などを求めた。
九六式艦上戦闘機を手掛けた三菱の堀越二郎技師を主務者とする設計チームは、これらを実現するため、徹底した重量軽減と世界初の「超々ジュラルミン*1」の導入、可変ピッチプロペラ引込式主脚水滴型風防落下増槽の採用、胴体と主翼の一体構造化などを行うことで要求を完全に実現させた。

同時期の欧米の戦闘機に比べて軽量化のために防弾装備や機体強度、正面投影面積の大きい空冷エンジン搭載のため速度性能で見劣りしていたが、低速域での運動性航続距離単発単葉レシプロ戦闘機として優れる部類の機体となった。

1940年4月の制式採用後、まもなく支那事変(日中戦争)に投入され、国民党軍のI-153?I-16?に対しての優速や操縦士の技量の高さが相まり100機以上を撃墜、対空砲火で2機が撃墜された以外は空戦での損害なしという一方的な勝利を収めた。
その後、大東亜戦争太平洋戦争)初期の真珠湾作戦、フィリピン空襲、インド洋作戦などでも軽微な損害で大きな戦果を挙げ続けた。

しかし、開戦から数ヵ月後の珊瑚海海戦の頃には、F4F「ワイルドキャット」などの活躍によって大きな損害を被るようになっていった。
F4Fに対し、零戦はカタログスペックで高高度でのエンジン出力、急降下制限速度以外は総合的に優位であったものの、高速域での操縦性や無線を利用した複数での連携力の差、それらを活かす米軍側の戦術の徹底によって性能差は覆された。
また、被撃墜時の搭乗員生還率も防弾装備の差からF4Fに大きく劣った。
このため、練度の高い搭乗員たちは戦争序盤の激しい戦闘でその数を大きく減らした。

また、1943年に入ると米軍は高速・重武装の新型戦闘機(海軍海兵隊グラマン F6F ヘルキャットヴォート F4U コルセア陸軍航空隊P-47P-51等)を続々と投入、ミッドウェー海戦で効果が確認されたサッチ・ウィーブと呼ばれる編隊空戦法や、零戦の追従不可能な高速で繰り出される一撃離脱を積極的に用いた。

一方の日本海軍は後継となる艦上戦闘機「烈風」実用化の目処が立たなかったことから、零戦を運用し続けた。
性能向上は幾度となく図られたものの、機体強度の不足のため大出力エンジンの搭載が難しく、不足していた速度性能、防弾能力の低さ等は抜本的に改善されなかった。
このため、大戦中盤からは性能が旧式化していった。

結局、本機は1945年の敗戦まで第一線で使用され続け、日本製航空機としては最多の約1万機が生産された*2

後継機「烈風」の実戦配備に目処が立ったのは大戦終盤の昭和19年10月で、敗戦までに試作機を含めてわずか8機が生産されただけであった。
また、それ以前に実用化され、次期主力として期待された紫電紫電改も生産数は合わせて1,500機未満で、本機の完全な代替とはならなかった。

前述のように太平洋戦争の開戦から敗戦まで一貫して最前線にあったことで、戦艦大和」と並んで戦中の日本軍の象徴的な兵器として広く認知されている。

また、2009年には経済産業省から「近代化産業遺産群」に認定された*3

スペックデータ

零戦一一型系統
型名十二試艦戦
(1号機・2号機)
零戦一一型零戦二一型
機体略号A6M1A6M2aA6M2b
乗員1名
全長8.79m9.05m
全高3.49m3.53m
全幅12.0m
翼面積22.44
自重1,652kg1,671kg1,754kg
正規全備重量2,343kg2,326kg2,421kg
発動機三菱 瑞星一三型?
空冷複列星型14気筒
中島 栄一二型?
空冷複列星型14気筒
出力離昇780馬力/574kW950馬力/699kW(高度4,200m)
プロペラハミルトン定速3翅(プロペラ直径2.90m)
最高速度490km/h(高度3,800m)517.6km/h(高度4,300m)435km/h(海面高度)
533.4km/h(高度4,550m)*4
降下制限速度-629.7km/h
上昇力6分15秒/5,000m(13.3m/s)7分27秒/6,000m(13.4m/s)
実用上昇限度-10,080m10,300m
航続距離-2,222km(正規)
3,502km(増槽あり)
全速30分+1,433km(正規)
全速30分+2,530km(増槽あり)
翼面荷重104kg/104kg/108kg/
馬力荷重245W/kg300W/kg289W/kg
機首武装九七式7.7mm機銃×2挺(各700発)
翼内武装九九式一号20mm機銃×2挺(各60発)
爆装30kg又は60kg爆弾×2発


零戦三二型系統
型名零戦三二型零戦二二型零戦二二型甲
機体略号A6M3A6M3a
乗員1名
全長9.121m
全高3.57m
全幅11.0m12.0m
翼面積21.5422.44
自重1,807kg1,863kg1,871kg
正規全備重量2,535kg2,679kg2,713kg
発動機中島 栄二一型 空冷複列星型14気筒
出力離昇1,130馬力/831kW
プロペラハミルトン定速3翅(プロペラ直径3.05m)
最高速度
高度6,000m)
544.5km/h540.8km/h540.1km/h
降下制限速度666.7km/h629.7km/h
上昇力
(6,000mまで)
7分5秒(14.1m/s)7分19秒(13.7m/s)7分20秒(13.6m/s)
実用上昇限度11,050m10,700m
航続距離全速30分+1,052km(正規)
全速30分+2,134km(増槽あり)
全速30分+1,482km(正規)
全速30分+2,560km(増槽あり)
翼面荷重118kg/119kg/121kg/
馬力荷重328W/kg310W/kg306W/kg
機首武装九七式7.7mm機銃×2挺(各700発)
翼内武装九九式一号20mm機銃×2挺(各100発)九九式二号20mm機銃×2挺(各100発)
爆装30kg又は60kg爆弾×2発


零戦五二型系統
型名零戦五二型零戦五二型甲零戦五二型乙零戦五二型丙
機体略号A6M5A6M5aA6M5bA6M5c
乗員1名
全長9.121m
全高3.57m
全幅11.0m
翼面積21.30
自重1,876kg1,894kg1,912kg1,970kg
正規全備重量2,733kg2,743kg2,765kg2,955kg
発動機中島 栄二一型 空冷複列星型14気筒
出力離昇1,130馬力/831kW
プロペラハミルトン定速3翅(プロペラ直径3.05m)
最高速度
(高度6,000m)
564.9km/h559.3km/h554.7km/h544.5km/h
降下制限速度666.7km/h740.8km/h
上昇力7分1秒/6,000m(14.3m/s)-5分40秒/5,000m(14.7m/s)
実用上昇限度11,740m10,200m
航続距離1,920km(正規)
全速30分+2,560km(増槽あり)
翼面荷重128kg/129kg/130kg/139kg/
馬力荷重304W/kg303W/kg301W/kg281W/kg
機首武装九七式7.7mm機銃×2挺
(各700発)
九七式7.7mm機銃×1挺
(左側,700発)
-
-三式13.2mm機銃×1挺
(右側,230発)
翼内武装九九式二号20mm機銃×2挺
(各100発)
九九式二号20mm機銃×2挺
(各125発)
-三式13.2mm機銃×2挺
(各240発)
爆装30kg又は60kg爆弾×2発30kg又は60kg爆弾×2発
30kgロケット弾×4発
以上より選択


零戦五三型・五四型系統
型名零戦五三型零戦六二型零戦六三型零戦五四/六四型
機体略号A6M6cA6M7A6M8
乗員1名
全長9.121m9.237m
全高3.57m
全幅11.0m
翼面積21.30
自重2,150kg2,155kg2,150kg
正規全備重量3,145kg3,155kg3,150kg
発動機中島 栄三一型
空冷複列星形14気筒
中島 栄三一型甲
空冷複列星形14気筒
中島 栄三一型
空冷複列星形14気筒
三菱 金星六二型?
空冷複列星型14気筒
出力水メタノール
噴射装置使用時
1,180馬力/868kW
(高度2,100m)
離昇1,100馬力
/809kW
離昇1,110馬力
/816kW
離昇1,560馬力/1,147kW
最高速度583.4km/h(試算)
(高度6,000m)
542.6km/h
(高度6,400m)
554.2km/h
(高度6,400m)
592km/h
(高度6,000m)
降下制限速度740.8km/h
上昇力9分53秒/8,000m
(13.5m/s)
7分58秒/6,000m
(12.6m/s)
7分35秒/6,000m
(13.2m/s)
6分50秒/6,000m
(14.6m/s)
実用上昇限度10,300m10,180m10,300m11,200m
航続距離1,520km(正規)
全速30分+2,190km(増槽あり)
850km(正規)
全速30分+1,200km(増槽あり)
翼面荷重148kg/148kg/148kg/148kg/
馬力荷重276W/kg256W/kg259W/kg364W/kg
機首武装-三式
13.2mm機銃×1挺
(右側,230発)
-
翼内武装九九式二号20mm機銃×2挺
(各125発)
三式13.2mm機銃×2挺
(各240発)
爆装30kg又は60kg爆弾×2発
30kgロケット弾×4発
以上より選択
60kg爆弾×2発
250kg又は500kg爆弾×1発
以上より選択
250kgまたは500kg爆弾×1発
30kgロケット弾×4発
以上より選択


主な形式

  • 零戦一一型系統
    • 十二試艦上戦闘機(A6M1):
      海軍から提示された「十二試艦上戦闘機計画要求書」に基づいて作られた試作機。
      エンジンは1〜2号機は瑞星?一三型を、3号機は?一二型を搭載している。

    • 零式艦上戦闘機一一型(零式一号艦上戦闘機一型、A6M2a、64機):
      暫定的とも言える初期生産型。
      そのため、着艦フックなど艦上機運用に必要となる艤装を持たない。
      1942年4月の海軍機呼称変更まで、「零式一号艦上戦闘機一型」が制式名称だった。

    • 零式艦上戦闘機二一型(零式一号艦上戦闘機二型、A6M2b、740機(三菱製)/2,821機(中島飛行機製(ライセンス生産))):
      一一型に艦上機としての正規の艤装を施したもの。
      航空母艦へ搭載するため、主翼端を50cmずつ折り畳めるようになっている。
      1942年4月の海軍機呼称変更まで、「零式一号艦上戦闘機二型」が制式名称だった。
      中島での後期生産型は20mm機銃を装弾数増加により給弾ドラムの大型化した九九式一号三型に換装したため、翼下に出っ張りが生じている。

    • 零式練習用戦闘機一一型(A6M2-K):
      二一型を複座にし、練習機としたもの。

    • 二式水上戦闘機(A6M2-N):
      水上戦闘機「強風」の開発遅延のため、一一型に浮舟を取り付け、水上機にしたもの。詳しくは項を参照。

  • 零戦三二型系統
    • 零式艦上戦闘機三二型(A6M3、343機):
      二一型の後継機としてエンジンを従来型から性能の向上した?二一型に換装、翼端折畳機構を廃止して翼幅を短縮、角型に成型。
      また、20mm機銃を給弾ドラムの大型化した九九式一号三型に換装、装弾数が60発から100発に増加した。このため、翼下に出っ張りが発生した。
      二一型と比べて最大速度・上昇力・高高度性能が向上し、急降下性能や横転性能も改善されたが、燃料タンクの削減によって航続力、水平飛行時の安定性は低下している。

    • 零式艦上戦闘機二二型(A6M3、560機):
      ガダルカナルでの航空戦で必要となった長大な航続距離を得るため、主翼形状を二一型と同様のものにし、機内燃料タンクを増加、横転性能向上のために翼内タブを追加した。

    • 零式艦上戦闘機三二型甲、及び二二型甲(A6M3a):
      二二型、及び三二型の20mm機銃をより高初速で弾道の安定した長砲身の九九式二号三型に換装したもの。

  • 零戦五二型系統
    • 零式艦上戦闘機五二型(A6M5、747機):
      三二型と同様翼端折り畳み機構を廃止しながらも、翼幅を短縮し丸型に成型。
      エンジン排気でのロケット効果を狙い推力排気管化することで、?搭載型では最速の565km/hを発揮した。
      しかし、極初期生産型は推力式単排気管への変更が間に合わなかったことから、二二型同様の集合排気管を装備している。
      また、後期生産型から翼内燃料タンクに自動消火装置を設置することで生存性を高めている。

    • 零式練習用戦闘機二二型(A6M5-K):
      五二型を複座にし、練習機としたもの。
      1945年に試作機2機が完成するが、生産準備中に敗戦となる。

    • 零式艦上戦闘機五二型甲(A6M5a、391機):
      ドラム給弾式の九九式二号三型20mm機銃をベルト給弾式の九九式二号四型に換装、装弾数が100発から125発へ増加した。また、ドラム給弾機構のための翼下の出っ張りが無くなった。
      また主翼外板を0.2mm厚くする等、構造を強化し急降下最大制限速度が増加した(741km/h)

    • 零式艦上戦闘機五二型乙(A6M5b、470機):
      機首右の武装を九七式7.7mm機銃から三式13.2mm機銃に換装、胴体外板を厚くし、前面風防に45mm厚の防弾ガラスを装備した。
      また、座席の後部に8mm防弾鋼板を装備可能である。

    • 零式艦上戦闘機五二型丙(A6M5c、93機):
      機首の九七式7.7mm機銃を廃止し主翼に三式13.2mm機銃2門を追加。
      操縦席後方に55mm防弾ガラスや8mm装甲板を追加し、主翼下に30kgロケット弾、小型爆弾架を装備可能とした。
      しかし、重量増により飛行性能全般が低下した。

    • 零式夜間戦闘機(A6M5d-S):
      操縦席後部または胴体左舷に九九式二号四型20mm斜銃1挺を搭載して、夜間戦闘機に改修された機体。

  • 零戦五三型・五四型系統
    • 零式艦上戦闘機五三型丙(A6M6c):
      エンジンを水メタノール噴射装置付きの?三一型(水メタノール噴射装置使用時1,180馬力/高度2,100m)に換装。
      主翼内燃料タンクをセルフ・シーリング式に。
      エンジンと防弾タンクの開発遅延により試作1機のみ。

    • 零式艦上戦闘機六二型/六三型(A6M7):
      五二型丙および五三型の胴体に250kg爆弾懸吊架(落下増槽懸吊架兼用)を装備した戦闘爆撃機型。
      大型爆弾を搭載しての急降下にも耐えられるように、水平尾翼の内部構造強化や胴体下面の外板厚増加も実施されている。
      特攻機として使用された機体には500kg爆弾を搭載したものもあった。

    • 零式艦上戦闘機五四型丙(A6M8c):
      ?をより大馬力の金星?六二型に換装、スピナ及びプロペラは、同エンジンを搭載する彗星三三型と同じ物を装備し、機首の13.2mm機銃は撤去された。
      一部の翼内燃料タンクが廃止。
      592km/hを発揮した。試作2機のみ。

    • 零式艦上戦闘機六四型(A6M8):
      五四型丙の量産型名称。生産中に敗戦となる。

      http://sukhoi.s7.xrea.com/pukiwiki/attach/a6m003.jpg


*1 墜落した本機の機体を回収した米軍は国内の技術者に調査を指示したものの、機体構造に多用されている金属の種類が特定できなかったという。
*2 そのうち約2/3は中島飛行機ライセンス生産された機体であった。
*3 本機と同時に陸軍の液冷エンジン搭載機、川崎 三式戦闘機「飛燕」も認定された。
*4 1941年4月17日に発生した下川大尉機の空中分解事故後、翼厚を増加した機体のデータで、それ以前の機体は最高速度509.3km/h(高度4,400m)。

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