Last-modified: 2014-09-07 (日) 11:14:52 (965d)

【雷電】(らいでん)

三菱J2M.
日本海軍が運用した局地戦闘機迎撃戦闘機)。
連合軍のコードネームは「Jack(ジャック)」。

軍港や重要施設の防空を専門とする迎撃戦闘機として昭和14年に発注された本機は、当初は上昇力、速度、火力を主眼に開発され、航続距離運動性は重視しないものとされた。
昭和17年に制式採用されたが、爆撃機用の大直径エンジン「火星」と延長軸・プロペラ振動の共鳴による振動*1、在来戦闘機と比べての視界不良、また本機の任務から考えれば重要度の低い運動性の低さ(失速の早さ、高い離着陸速度を含めて)、航続距離の短さといった欠陥を指摘され、それらの改修に丸2年を費やしてしまった。
こうした軍令部の戦闘機生産計画の見通しの甘さに翻弄され、さらに追い打ちをかけるように主生産工場が地震被害に遭うなどで生産が大幅に遅延し、結局約400機が生産されるに止まった。

しかし、大戦後半の大出力日本機としては比較的高い信頼性を備え、旧式化した零戦が手に負えなかった米軍の新型機とも、空戦のスタイルと条件さえ揃えば互角に近い戦いができる能力を有していた。
戦史上もF6Fの撃墜を記録している。

また、本来の用途である局地戦闘機としては本土防空で活躍、難敵B-29を相手に苦戦しながらも、その抜群の上昇力と火力を生かし、日本機としては最高のB-29撃墜数を記録したと言われている。
量産された二一型では、B-29を迎撃するには高々度性能が不足であり、排気タービン装備の型も二種類試作され一部部隊に配備されたが、500kg近い重量増の為かえって空戦能力の低下を招き、量産には至らなかった。

本機は、設計思想の違う零戦と比較された事が不幸であり、単純に防空用として見た場合、日本機の中では優れた機体であったのは確かである。
終戦後の米軍による評価でもカタログ・データを大幅に上回る優秀な結果を残しており、軍令部で問題にされた運動性(格闘戦能力)、着陸速度、視界不良などは言及されていない。

現在では、アメリカ・カリフォルニア州チノにある「Planes of Fame」に世界で現存する唯一の機体である雷電二一型(J2M3)が展示されている。

性能諸元

形式名雷電二一型雷電三三型
機体略号J2M3J2M5
乗員1名
全長9.695m9.945m
全高3.945m
全幅10.8m
翼面積20
自重2,539kg2,510kg
正規全備重量3,507kg3,482kg
翼面荷重175.35kg/174.1kg/
発動機三菱 火星二三型甲?
空冷星形14気筒×1基
三菱 火星二六型
空冷星型14気筒×1基
離昇出力1,820馬力
1,600馬力(1,300m/1速)
1,510馬力(4,150m/2速)
(三菱側資料による)
1,800馬力
最大速度596.3km/h
(高度5,450m)
614.5km/h
(高度6,585m)
航続性能2,519km(増槽あり)全力0.5時間+巡航2.4時間
武装九九式一号20mm機銃四型×2挺(携行弾数190発)
九九式二号20mm機銃四型×2挺(携行弾数210発)
爆装30〜60kg爆弾×2発


主な形式

  • 十四試局地戦闘機(J2M1、8機):
    火星一三型?(離昇1,480馬力)エンジンを搭載する試作型。
    3枚プロペラ、初期は曲面ガラスを使用した背の低い風防を装備していたが、後に背を高くして視界を改善した。
    武装は翼内に20mm機銃×2門、胴体内に7.7mm機銃×2門を搭載。

  • 十四試局地戦闘機改/試製雷電(J2M2):
    エンジンを水メタノール噴射装置と燃料噴射装置を追加した火星二三型甲(離昇1,800馬力)に換装。
    ロケット?効果を狙い、排気管を集合式から推力式単排気管化した他、4枚プロペラに換装し視界を改善した。
    また、20mm機銃を銃身の長い九九式二号銃三型に換装している。

  • 雷電一一型(J2M2、155機):
    試製雷電の生産型。
    生産途中から機首下部の潤油冷却器用空気取入口、翼内タンクに自動消火装置を追加した。
    少数ながら、二式30mm固定機銃に換装した機体も存在する。

  • 雷電二一型(J2M3、313機):
    試製雷電改。
    武装を20mm機銃×4門(九九式一号×2門、九九式二号×2門、ベルト給弾式)に強化した型。
    自動防漏式の防弾タンクを装備。

    • 雷電二一型甲(J2M3a):
      機銃を九九式二号20mm機銃×4門に統一した型。

  • 雷電三二型(J2M4、三菱製胴体延長試作型:2機、空技廠在来機改修型:少数):
    発動機排気タービン過給器付の火星二三型丙に換装した高々度実験機。
    三菱型は翼内20mm機銃を2挺に削減した代わりに、20mm斜銃×2丁を追加した。

  • 雷電三三型(J2M5):
    三一型に対しエンジンを過給器を改善した火星二六型甲(離昇1,820馬力)に換装し、高々度性能の改善を図った型。
    また、機首下部の潤油冷却器用空気取入口を半埋め込み式とし、機械式過給器用の空気吸入通路を拡大、風防上部の再嵩上げと胴体側面を削り視界改善を実施した。
    海軍機として最大の332kt(615km/h)/6,585mを発揮した。
    五式30mm機銃×2挺に換装した機体も少数存在する。

    • 雷電三三型甲(J2M5a、試作3機):
      20mm機銃を九九式二号銃×4挺に統一した型。

  • 雷電三一型(J2M6、少数生産):
    二一型に三三型と同じ視界改善のために風防形状を改善した型。
    昭和19年末以降の三菱生産機はこの形式。

    • 雷電三一型甲(J2M6a):
      20mm機銃を九九式二号銃に統一した型。

  • 雷電二三型(J2M7):
    二一型のエンジンを火星?二六型に換装した型。試作のみ。
    風防と胴体形状は二一型と同じだが、機首下部の潤油冷却器用空気取入口は半埋め込み式になっている。

    • 雷電二三型甲(J2M7a):
      火星?三一型搭載型。


*1 実際にはプロペラピッチのギア比不適合からなる異常振動。

トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS