Last-modified: 2022-10-16 (日) 10:12:16 (44d)

【雷電】(らいでん)

三菱J2M「雷電」。

日本海軍が運用した局地戦闘機迎撃戦闘機)。
連合軍のコードネームは"Jack(ジャック)"。

軍港や重要施設の防空のため、対爆撃機戦闘に運用される局地戦闘機として昭和14年(1939年)に開発指示された「十四試局地戦闘機」は、上昇性能、速度性能、強力な搭載武装を主眼に開発され、航続距離運動性(特に格闘戦における優位を決める旋回性能、低い失速速度)を妥協した、これまでにない開発計画だった。

爆撃機用の大直径発動機(エンジン)「火星」を搭載、延長軸でプロペラを回転させることで絞られた機首など、特徴的な外見をもった十四試局地戦闘機(J2M1)は昭和17年(1942年)3月に初飛行したが、性能は要求に届かなかった。
このため、大規模な改設計を施した十四試局地戦闘機改(J2M2)が開発され、同年10月に初飛行、要求性能を概ね達成した。一方で、J2M2には設計ミスによる主脚の動作不全、共振によって発動機周辺から発生する異常振動、水メタノール噴射装置の不調といった問題が発生した。
しかし、戦局の悪化のために1943年10月頃から少数のJ2M2が「試製雷電」として実戦配備され、油田など重要拠点の防空任務に参加した。
欠陥が十分に是正されたのは昭和19年(1944年)以降のことで、同年10月には制式化も実施された。

本機は多くの搭乗員に低い旋回性能や高い失速速度からくる離着陸事故の多さ、整備士に整備の困難さや整備中の事故死の多さで低評価を受けた。
また、海軍にとっても想定以下の性能で実用化された本機は、信頼性の高い零式艦上戦闘機、より汎用性に長けた紫電などと比べて運用する利点の少ない機体であった。

それでも、実戦では局地戦闘機として対爆撃機戦闘に参加、特に本土空襲の際のB-29迎撃ではその高い上昇力を生かし、高高度に素早く到達可能な数少ない機体であった。
しかし、主要生産型である二一型の発動機出力はB-29の飛行する高度10,000m周辺では十分に発揮されず、改善のために排気タービン式過給器付き発動機搭載型も二種類試作、配備されたが、500kg近い重量増や過給器の不調の為かえって上昇力をはじめとする総合的な性能低下を招いた。

本機は多方面から低評価を受けているが、単純な迎撃戦闘機としては日本軍機の中でも優れた機体であった。
戦中の米軍が予測した本機のカタログスペックは実際のそれを大幅に上回るものが記載されており*1、戦後の飛行テストでも運用時に問題視された運動性失速速度、異常振動、視界不良などは言及されていない。

現在では、アメリカ・カリフォルニア州チノにある「Planes of Fame」に世界で現存する唯一の機体である雷電二一型が展示されている。

性能諸元

形式名雷電二一型雷電三三型
機体略号J2M3J2M5
乗員1名
全長9.695m9.945m
全高3.945m
全幅10.8m
翼面積20
自重2,539kg2,510kg
正規全備重量3,507kg3,482kg
発動機三菱「火星」空冷複列星型14気筒×1基
発動機形式火星二三甲型火星二六型
離昇出力離昇1,800馬力/1,323kW
1,600馬力/1,176kW(1,300m/1速)
1,510馬力/1,110kW(4,150m/2速)
(三菱側資料による)
離昇1,800馬力/1,323kW
プロペラ住友金属製プロペラ*2
(十四試局戦は3翅、十四試局戦以降は4翅)
最大速度596.3km/h
(高度5,450m)
614.5km/h
(高度6,585m)
航続性能2,519km(増槽あり)全力0.5時間+巡航2.4時間
上昇性能高度6,000mまで5分38秒(17.75m/s)高度6,000mまで6分20秒(15.79m/s)
高度8,000mまで9分45秒(13.68m/s)
翼面荷重175kg/174kg/
馬力荷重377W/kg380W/kg
武装九九式一号20mm機銃四型×2挺(翼内、携行弾数190発)
九九式二号20mm機銃四型×2挺(翼内、携行弾数210発)
爆装30〜60kg爆弾×2発


主な形式

  • 十四試局地戦闘機(J2M1)(8機):
    火星一三型?(離昇1,400馬力(1,044kW))エンジンを搭載する試作型。
    3枚プロペラ、初期は曲面ガラスを使用した背の低い風防を装備していた。
    武装は翼内に九九式一号20mm機銃×2門、胴体内に九七式7.7mm機銃×2門を搭載。

  • 十四試局地戦闘機改/試製雷電(J2M2):
    エンジンを水メタノール噴射装置と燃料噴射装置を追加した火星二三型甲(離昇1,850馬力(1,379kW))に換装。
    ロケット効果を狙い、排気管を集合式から推力式単排気管化した他、プロペラを4枚のものに換装、風防を拡大して視界を改善した。
    また、20mm機銃を銃身が長く、装弾数も多い九九式二号銃三型に換装している。
    制式採用以前に実戦運用が開始された。

  • 雷電一一型(J2M2)(155機):
    試製雷電の生産型。
    生産途中から機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口、翼内タンクに自動消火装置を追加した。
    少数ながら、二式30mm固定機銃に換装した機体も存在する。

  • 試製雷電改/雷電二一型(J2M3)(313機(三菱製は約280機)):
    武装を20mm機銃×4挺(九九式一号×2門、九九式二号×2門、ベルト給弾式)に強化した型。
    自動防漏式の防弾タンクを装備。

    • 雷電二一型甲(J2M3a):
      機銃を九九式二号20mm機銃×4門に統一した型。

  • 雷電三二型(J2M4)(三菱製胴体延長試作型:2機、空技廠在来機改修型:少数):
    発動機排気タービン式過給器付の火星二三型丙に換装した高々度実験機。
    三菱型は翼内20mm機銃を2挺に削減した代わりに、20mm斜銃×2丁を追加した。

  • 雷電三三型(J2M5):
    三一型に対しエンジンを過給器を改善した火星二六型甲(離昇1,820馬力)に換装し、高々度性能の改善を図った型。
    また、機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口を半埋め込み式とし、機械式過給器用の空気吸入通路を拡大、風防上部の再嵩上げと胴体側面を削り視界改善を実施した。
    海軍機として最大の332kt(615km/h)/6,585mを発揮した。
    五式30mm機銃×2挺に換装した機体も少数存在する。

    • 雷電三三型甲(J2M5a)(試作3機):
      20mm機銃を九九式二号銃×4挺に統一した型。

  • 雷電三一型(J2M6)(少数生産):
    二一型に三三型と同じ視界改善のために風防形状を改善した型。
    昭和19年末以降の三菱生産機はこの形式。

    • 雷電三一型甲(J2M6a):
      20mm機銃を九九式二号銃に統一した型。

  • 雷電二三型(J2M7):
    二一型のエンジンを火星?二六型に換装した型。試作のみ。
    風防と胴体形状は二一型と同じだが、機首下部の潤滑油冷却器用空気取入口は半埋め込み式になっている。

    • 雷電二三型甲(J2M7a):
      火星?三一型搭載型。

  • キ65:
    十四試局戦をベースにした陸軍向け重戦闘機/襲撃機の計画。製作されず。


*1 ただし、この評価は雷電の配備機数、配備期間から考えて米軍側の情報不足からくる憶測である可能性が高い。
*2 ドイツVDM社製電動ガバナー付きプロペラをライセンス生産したもの。

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