Last-modified: 2023-01-09 (月) 09:37:07 (465d)

【放射線】(ほうしゃせん)

放射性物質が出す「α線・β線・γ線(X線)・中性子線・重粒子線」などの粒子・電磁波
保有するエネルギー量を表す単位としてグレイ(Gy)を用いる。1グレイは1ジュール毎キログラムに等しい。

放射線の原因である放射性物質が放射線を出す能力を放射能といい、単位はベクレル(Bq)であらわす。
また、放射線が人体に与える影響の基準、被曝量の単位としてはシーベルト(Sv)が使われる。

地球上ではほとんどの物質が自然に起こす放射性壊変、恒星からの放射などで発生する。
核分裂核融合などの原子核反応や、加速器で意図的に発生させる事もできる。
肉眼で観測する事はできないが、水などの透明な物質を通過する際に青白い光(チェレンコフ光)を及ぼす。

蛍光作用・感光作用・電離作用などを持ち、医療や工業用途で非破壊検査や測定、診断に使われる。
反面で生体細胞に対して有害である事が知られており、過剰に被曝すると人体に対して重篤かつ致死的な障害を与える。

また、電離作用の影響を受けた物質は原子が不安定になり、やがて放射線を放出する放射性物質に変質する。
このため、放射線に関係する物体は全て放射性廃棄物としての厳重な管理を必要とする。

関連:放射能 核兵器 核分裂 核融合

放射線が有害な理由

放射線は電離作用を持ち、これを浴びた原子をイオン化させる。
これが生体細胞に作用すれば細胞が壊死する確定的影響(急性障害)が引き起こされる。
また、遺伝子がこの影響で変質する事によって発癌、白血病、甲状腺障害、生殖腺障害などの晩発的影響も生じる。

急性障害は血液や胃腸など代謝の活発な細胞で起こりやすく、特に造血細胞の壊死は骨髄移植を必要とする深刻な病状を及ぼす。
また、生殖腺が晩発的影響を受けると、その生殖細胞から生まれた子供にも遺伝的影響を及ぼす事になる。

ほとんどの細胞は放射線の影響から自然治癒する。
よって、短期間によほど大量の放射線を被曝しない限りは無視できる程度の影響しか及ぼさない。
ただし、一般に自然治癒しないとされる生殖腺や神経細胞への影響については疑問の余地が多い。

放射線の種類

放射線は厳密には似たような作用を持ついくつかの粒子・電磁波の総称であり、おおむね以下のように分類できる。

α(アルファ)

ヘリウムの原子核による荷電粒子。
比較的に質量が大きく、電荷がプラス。電離作用が強力で、短時間に大きなエネルギーを放出する。
皮膚や紙一枚、数cmの空気くらいでも遮断される。
反面、原因となる放射性物質を呼吸・飲食すると体内からの被曝によって甚大な影響を及ぼす。

βー(ベータマイナス)線、β+(ベータプラス)

荷電粒子。β−線を「電子」、β+線を「陽電子」と呼び、電子と陽電子は対消滅する性質を持つ。
電子(あるいは他の荷電粒子も)が移動する事によって生じるエネルギーの移動を、特に「電流」と呼ぶ。
質量は軽く小さいものの、α線ほどではないにせよ電離作用は大きい。
1cm程度の厚みがあれば放射線防護服で遮蔽できる。健康被害の大半は体内からの被曝か、電流による副次的な被害である。

γ(ガンマ)線、(エックス)

電磁波。原子の外側にある軌道電子が放出するものをγ線、原子核から放出するものをX線と呼ぶ。
物質を貫通しやすく、遮蔽には分厚いコンクリートや鉛板などを必要とする。この性質からレントゲン写真にも利用される。
ただ浴びただけでも体内まで浸透して被曝するが、電離作用は小さく、よほど多量に浴びない限り害はない。

遮蔽に必要な質量が極めて大きいため、人間が着用する放射線防護装備はほぼ無効。
このため、この種の放射線を発する放射能汚染環境下に人間が立ち入る事はできない。
そうした環境では遠隔操作できるロボットで調査・作業を行うが、こうしたロボットも放射線で損壊する事が少なくない。

中性子線

主に核分裂で生じる。粒子だが、荷電粒子ではない。
中性子自体は電荷を持たないため物質を透過するが、人体などを透過する際に電離作用を引き起こす。
ほとんどの物質を透過するが、や鉛などを通過させた後に水素に衝突させれば遮蔽できる。

γ線やX線と同様、人間が着用する放射線防護装備は事実上無効。


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