Last-modified: 2015-02-05 (木) 21:51:23 (3033d)
【複合ヘリコプター】 †
Compound helicopter
ヘリコプターの速度性能を向上する目的で、通常のローターシステムとは別に、推力発生専用のプロペラを装備したもの。
通常のヘリコプターは、ローター面をやや傾けて揚力を偏らせることで推力を得るが、速度を上げるためには揚力を高くしなければならない。
しかし揚力を上げるためにローターの回転数を上げることは、翼端が音速に近づくと難しくなるため限界がある。
このことから、ローター面を傾ける以外の方法で推力を得るためにプロペラを装備した機体が複合ヘリコプターである。
回転翼機の速度を比較的容易に向上させることができ、いくつかの機体が試作された一方、下記の理由により効率が劣るという弱点があり、いまだ実用化はされていない。
- 速度を上げるとやはり翼端速度が音速に近くなったり、ローターの宿命である左右での揚力の偏りが大きくなったりする。
対策として高速時にはローターの回転数を抑制する必要があり、結果としてローターの効率が低下する。 - 高速時に揚力が低下する問題を解決するため大型のスタブ翼を装備すると、ホバリング時の効率が低下する。
- ティルトローターのような転換機構が必要ないとはいえ、ローターとプロペラの両方を装備することで機構が複雑となり、コストの増大や信頼性の低下を招く。
対策としてフライバイワイヤーを利用した回転数の繊細な制御や、最高速度を抑制することによるローター効率の維持などが考えられており、実用化の際は通常のヘリコプターよりも「やや速く、やや高価な」機体となる見込みである。
なお複合ヘリコプターはFAAが定義するジャイロダインの一種とされるが、FAA定義以前に試作されたジャイロダインは前進中オートローテーションを利用するものであり、前進中もローターを駆動し続ける複合ヘリコプターとは飛行原理が異なる。