Last-modified: 2022-11-25 (金) 08:05:30 (8d)

【全地球測位装置】(ぜんちきゅうそくいそうち)

Global Positioning System(GPS).

人工衛星を利用した航法支援装置。理論上、地球上のどこでも正確な現在位置を割り出す事ができる。
船舶や登山用では緯度・経度のみを表示する小型の受信機を使い、地図や海図と照合する方式が一般的。
一方、ユーザー側で地図の不備が予想される場合(自動車や携帯電話・スマートフォンなど)には、画面上に地図を表示するタイプの端末が主流。

現在のGPSシステムは、アメリカ空軍が構築したシステム(2019年にアメリカ宇宙軍に移管)が民間に開放されたものである。
このため、GPSシステム全体の維持管理もほぼ全てアメリカ合衆国内で行われている。

この状況を憂う声もあり、日本・ロシア・EUなどは独自のGPSシステムを構築するための研究開発を進めている。

関連:GPS誘導爆弾 ナブスター

位置特定のメカニズム

GPSは以下のようなメカニズムで受信機の現在位置を特定する。

  1. 測位用の人工衛星(アメリカのナブスターなど)を打ち上げる。
    この衛星には高精度の原子時計が内蔵され、電波で現在時刻と衛星が飛行している軌道を放送する。
    軍用の暗号化された高精度の信号と民生用の信号が同時に送出される。

  2. 時計を内蔵した受信機で、衛星からの電波を受信する。
    送信から受信までの経過時間から、衛星までの距離を推定する。
    光速は常に一定であるため、経過時間さえ正確であれば推定距離も必ず正確である。
    とはいえ、時計の精度やコンピュータの処理能力による誤差は避けられない。

  3. 上記2.の処理を、最低3基の人工衛星について同時に行う。
    3ヶ所からの距離が特定出来れば、その条件を満たす場所を1点に絞る事ができる。
    純数学的にはまだ2点の候補があるが、そのうち1点は必ず大気圏外であるため除外できる。

  4. 受信した情報をコンピュータで検証・修正する。
    一般にGPS受信機は人工衛星ほど高精度には作られておらず、内蔵する時計は無視できないほどの誤差を生じさせる。
    この誤差を修正するため、受信可能な衛星電波は全て受信し、信頼性の低い情報を切り捨てるなどの演算処理を行う。
    どう処理しても多少の誤差は残るため、最終的な表示位置はコンピュータの推定による。

  5. 以上の処理によって算定された位置情報をコンピュータが利用する。
    一般的なGPS端末では緯度・経度を表示したり、画面上の地図を操作したりする。
    ミサイル誘導爆弾無人機などの舵やエンジンを操作するためにも用いられる。
    無線で位置情報を発信したり、ネットワークで繋がった別のコンピュータに送信する事もできる。

以上の処理を円滑に行うために、受信機の上空に最低3基の衛星が存在する必要がある。
その状態を地球全域で同時に実現する必要があるため、理論上24基の衛星を常に稼動させなければならない。
これに加えて精度向上や事故対策、老朽化に備えた予備も必要なため、実際に必要な衛星は30基を超える。
現在のアメリカ宇宙軍はナブスター31基を衛星軌道上に投入し、うち24基を運用態勢に置き、残り7基を予備として別の軌道に配置している。

選択的有効性(Selective Availability)

GPSはもともと軍用を想定したシステムであり、敵による逆用を防ぐためにSA(Selective Availability)と呼ばれるセキュリティが導入されていた。
これは電波信号に作為的なノイズを混入させるもので、アメリカ軍が占有する専用受信機以外で受信すると平均誤差半径100m程度の誤差が生じていた。

このSAは2000年5月2日に解除され、以降は民間受信機でもGPSを完全な精度で利用できるようになっている。
これには当時EUが提唱していた独自の測距衛星ネットワーク構築を阻止する目的と、民生用GPSの市場開放によってコストを抑える目的があったとされる。

2007年、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が「次世代のGPS衛星において、SA機能を持つ衛星は調達しない」旨の大統領令を発している。
この大統領令が長期的に信用できるかはさておき、SAを復活させるためには新たな大統領令と年単位の準備期間が必要だという事になる。

なお、SAの設定を秘密裏に復活させる事は不可能だと考えられている。
天文学など学術分野のデータ観測で広範にGPSが用いられており、SAの復活によって生じた影響は世界各国で即座に検出されるからだ。

ディファレンシャルGPS

Differential GPS(DGPS).

GPSの測定精度を高めるための手法の一つ。
緯度・経度・標高の確定した基地局でGPS衛星の電波を受信し、補正情報を生成する。
受信機は自身のGPS情報を基地局からの補正情報によって検証し、誤差を相殺する。
基地局として静止衛星を利用する方式や、既存の電波局を測距に流用する方法もある。
放送局が使用しない周波数帯域をDGPSに利用したり、地上波デジタル放送の信号と重畳して送信したり、携帯電話の基地局で測位を行う事もある。

日本の海運分野では、海上保安庁が全国27ヶ所の基地局を運用し、日本列島近海向けに中波ビーコンで送信していた。
しかしこのビーコンは船舶搭載型GPSの精度向上に伴って不要となり、2016年9月に廃止された。
一方、航空分野では運輸多目的衛星(MTSAT)や測位衛星「みちびき」などによりDGPSサービスが運用されている。

GPSにまつわる誤解

日本におけるGPSの代表的な利用例として、自動車に搭載される「カーナビ」がある。
これに関連して、以下のような話が伝えられている。

  • GPS衛星は、カーナビを積んだ車にその車の位置情報を送っている。
  • GPS衛星がカーナビのルートを引いている。
  • GPS衛星は車の位置を逆探知できる。
  • GPS衛星とカーナビが通信をしている。
  • アメリカ軍やCIAがGPSから収集した情報を使って何か陰謀を企んでいる(多分エリア51かどこかで)

実態を言えば、GPS端末の情報を無線電波やインターネットで送信する事は可能である。
現状、地理に関わるネットワークサービスはほぼ全てがユーザーの位置情報を取得・利用している。
送信された位置情報のハッキングも原理的には可能であり、実際に行われていないという保証もない。

しかし、それをGPS衛星が受信する事はない。
GPS衛星は衛星を運用している当局からの指令電波しか受信しないからだ。

結局のところ、カーナビの機能のほとんどはカーナビ自体に内蔵されたコンピュータに依存している。
なんらかの情報漏洩や不備があったとしても、それはやはりカーナビの小さな機械に起因する。


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