Last-modified: 2023-02-26 (日) 11:40:07 (104d)
【戦闘糧食】 †
Combat Ration.
軍隊において、主に緊急・戦闘・災害発生時に食される保存食。
過酷な肉体労働である戦闘、行軍などを行う兵士の栄養補給を前提としているため、基本的に高カロリー・高塩分。
また、深刻な状況下における娯楽としても認知され、味と温度*1に特に力が注がれる。
基本的に非常食であり、戦時であっても基地や艦艇でしっかりと調理された食事の方が望ましい。
とはいえ永久に保存できる性質のものでもないため、順次演習で消費したりスナックや夜食代わりに消費される事も多い*2。
また、今日では災害救援物資として避難所などに配布される事も多々ある。
官給品であるため、一般市場に出回る事は基本的にない*3。
とはいえ、メーカーが同じ製品を戦闘糧食として卸すと同時に一般向けにも保存食として卸してはいけない理由もない。
軍隊が広報用として一般向けに戦闘糧食(と銘打った民生用の保存食)を販売する事もある*4。
主な構成 †
多くの国で採用されている戦闘糧食の構成は、概ね次の通りといわれている。
- 主食および副食
- 缶詰ないしレトルトパックで封入される。
- クラッカー・パンなど
- 真空密封包装。
- 菓子類
- チョコレート・ガム・飴など。将兵の興味を引き、ストレスを和らげ、士気向上や気力の維持に効果があるという。
- 飲料類
- ティーバッグ、粉末のジュース・コーヒー・ココア、粉末スープ類など。煮沸した湯に入れて飲む事が想定される。
- 食器類
- 古くは個人装備として金属食器を携帯していたが、近年では使い捨ての紙製食器を同梱するのが主流。
食器は洗う際に水を浪費するため野営では避けるべきとされる。 - ヒーター
- 焜炉で固形燃料を燃やすか、生石灰と水の反応熱や鉄粉の酸化熱などを利用する。
各地の食文化や気候、軍隊の抱える事情も反映されており、国ごとに特色がある*5。
多国籍軍や国連PKF、同盟国の合同軍事演習などで戦闘糧食の交換・品評会が行われる事もある。
各国の戦闘糧食 †
- 自衛隊
米食文化の影響から、米飯関係が特に充実している。
また、おかず(主菜)と主食という組み合わせは世界的にも珍しい。
- アメリカ軍
- Aレーション(ギャリソンレーション)
- 駐屯地給食用の未調理生鮮食材。アメリカ軍は戦闘糧食と通常の食料を厳密には区分していない。
- Bレーション
- Aレーションと同様、駐屯地での給食に供される包装済み未調理食材
- Dレーション
- チョコレート・カカオ油脂ベース。
激戦や遭難など、食事する暇すらない緊急時のエネルギー摂取用。
兵士が勝手に消費しないように意図して不味く作られており、実際に絶不評である。
過剰生産が発生した際に通常の食事として提供され、兵士たちの反感を買って箱ごと捨てられる有様だったという。
- チョコレート・カカオ油脂ベース。
- Kレーション
- 缶詰やビスケットなど。
- Tレーション
- MRE
- MCI?(Cレーションとも呼ばれる)
- MCW?
- UGR
- Aレーション(ギャリソンレーション)
- カナダ軍
メニュー構成が非常に豊富といわれている。- Individual Meal Pack
- Individual Meal Pack
- イギリス軍
紅茶文化の影響から、ティータイムに重きを置いている*6という。付属の粉末ドリンクは一袋で1Lにもなる。- 24 HOUR RATION
- フランス軍
味に特化され、市販品や民族料理も多用した多彩なメニュー構成となっている。
大抵レーションの食べ比べで一番美味と言われる。
- RATION DE COMBAT INDIVIDUELLE RECHAUFFABLE
- ドイツ軍?
- Einmannpackung (EPA)
- イタリア軍
過酷な保管環境でも劣化しないよう厳重に密封パックされており、ワインやデザートまでついている。- FORZE ARMATE/RAZIONE VIVERI SPENTOCIALE DA COMBATTIME
- ベルギー軍
- RATION DE COMBATS CONDITIONNEE
- ロシア軍
寒冷地であることから、温かい食事を取れるような工夫がなされているという。ИНДИВИДУАЛЪНЫИ РАЦИОН ПИТАНИЕ
- オーストラリア国防軍
- CR1M
- 韓国軍
- 携帯糧食1型(パックめし。カレーもしくは炸醤飯と、副食のキムチ)
- 携帯糧食2型(フリーズドライ。3種類のビビンバ。副食に味噌汁・ごま油・キムチの汁・チョコレートなどが付属)
*1 冷たい食事はただ冷たいというだけで不味く感じられる傾向にある。
*2 頼まれても誰も食べないような絶不評の代物もないではないが。
*3 日本でも「観賞用」という、いささか理解に苦しむ名目で販売している店舗も多少ある。
「観賞用」とされているのは、衛生管理上の理由などから食品としての販売に問題があるため。
*4 民生用のものは軍用品に比べてカロリーや塩分を抑えてある事が多い。
*5 「砂漠で水が切れたイタリア軍が、大急ぎで水の補給にやってきたドイツ軍に『これでパスタが茹でられる』と言った」
「アメリカ軍兵士が誤って敵地に投下された物資にコーラと書いてあったのを見つけると、それを回収するために戦線を押し上げた」
などと言った冗談の元にもなっている。
*6 行軍中であろうと必ず休憩してティータイムを設け、SASはポットで紅茶を持ち運ぶと言われるほど重要な習慣である。