Last-modified: 2015-06-25 (木) 21:44:47 (638d)

【戦闘機不要論】(せんとうきふようろん)

何らかの技術革新や新兵器の登場という軍事革命により、従来の戦闘機は不要になるだろうという考え方。
戦闘機という兵器が登場してから幾度となく語られているが、代表的なものには以下のようなものがある。

1930年代〜高速爆撃機、あるいはマルチロール爆撃機〜

第二次世界大戦前、「迎撃不可能な爆撃機を開発できれば戦闘機の存在意義は失われる」との主張があった。
当時、まだカウンターエアの戦術は未発達で、爆撃機の迎撃は極めて困難であったためである。

具体的な戦術論としては、高速の爆撃機によって敵地に素早く侵入し、攻撃後は敵迎撃戦闘機の追撃を振り切って速やかに脱出する――ヒットアンドアウェイ戦法が想定されていた。

また、機関砲を備えたガンシップを集中的に投入する攻勢対航空作戦も提案された。
迎撃戦闘機はその性質上、各地の航空基地に分散配置する必要がある。
よって、ガンシップ密集編隊に遭遇した場合に各個撃破を避けるのは困難であった。

しかし、レーダーと無線による防空網が整備されると爆撃機の優勢は失われ、この思想は立ち消えた。
超音速戦闘機ミサイルの発達した現代では、迎撃不能な爆撃機は存在し得ない*1

ただし、この時期に生み出された航空戦の思想が後年のマルチロールファイターの登場を予言していた、と見る向きもある。
迎撃戦闘機撃墜できる爆撃機*2の登場により、純粋な意味での戦闘機が不要になったのは事実である。

関連:九六式陸上攻撃機 コンバットボックス Z掃射機

冷戦初期〜ミサイル万能論〜

1940年代後半〜1960年代、ミサイルの実用化と共に新たな戦闘機不要論が台頭した。
正面戦力としての航空機ミサイルに置換する事を目指す思想――「ミサイル万能論」である。

爆撃機弾道ミサイルに、戦闘機地対空ミサイルに置換する事が想定された。
実際、地対空ミサイルの開発・配備に伴い、いくつかの次世代戦闘機開発計画が凍結されている。

しかし、冷戦が本格化していくにつれてミサイル万能論は破綻していった。
相互確証破壊の確立により、核兵器搭載母機である弾道ミサイルは事実上使用不可能になった。
結果、航空戦略において攻撃機爆撃機護衛戦闘機は必要不可欠であり続けている。

また、その他のミサイルも様々な運用上の問題が指摘され*3、運用が制限された。
このため、通常爆弾機関砲など旧式の兵器も戦術的間隙を埋めるために投入され続けた。
こうした兵器のプラットフォームとして戦闘機攻撃機は未だ健在であり続けている。

とはいえ、ミサイルの発達が航空戦術を大きく塗り替えたのも事実である。
目視外射程から放たれる空対空ミサイルファイタースウィープを過去のものとし、長射程距離の巡航ミサイル弾道ミサイル戦略爆撃機密集編隊による絨毯爆撃を過去のものとした。
また、対地戦闘においても地対空ミサイル対レーダーミサイルの応酬が一般的になっている。

21世紀初頭〜無人機台頭論〜

コンピュータ技術の飛躍的進歩に伴い、現代でも新たな戦闘機不要論が生まれている。
「将来的には無人機航空戦の中核となり、パイロットは前線から姿を消す事になる」という主張である。

将来、パイロットは機体から離れ、遠隔操作で操縦するようになると予想されている。
また、あらゆる操作がアビオニクスによって自律制御され、人間は後方のC4Iから管制を行うだけになるかもしれない。

とはいえ、この思想も未だ机上の空論の域を出ていない。
現状の無人機は有人戦闘機との直接対決に耐えうる性能を有していないためである*4

関連:MQ-1


*1 しかし、迎撃を掻い潜って敵地に爆弾を投下する方法そのものについては、ステルス爆撃機攻撃衛星など、技術革新の可能性は現状でもまだ残されている(実現可能性を度外視すれば)。
*2 正確に表現すれば「爆撃に転用できる戦闘機」だが、この辺りは単に解釈と分類の問題だろう。
*3 警告射撃ができない、搭載可能弾数が少ない、電子戦に対して脆弱、等。
*4 イラク戦争では、人類史上初めて有人機と無人機との空中戦が展開されたが、有人機の勝利に終わっている。

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