Last-modified: 2022-10-10 (月) 20:57:27 (557d)

【生物兵器】(せいぶつへいき)

Biological weapon.
細菌やウィルスなど病原性の微生物を意図的に散布し被害を与える兵器のこと。
発想自体は古代から存在するが、現代では細菌やウィルスそれ自体を兵器として培養・製造したものを意味する。

「刃や鏃を糞尿に浸しておく」「投石機で腐爛死体を投げ込む」「兵糧攻めの一環として糧食や水源を汚染する」などの事例が古代から見られる。
もっとも、それらが医療上の知見から毒物として利用されていたのか、それとも嫌がらせや呪術の類だったのかはあまり定かでない。
医学の発達以前の戦場の不潔さを鑑みれば、上記の措置に戦況を左右するような影響力があったのかも少々疑わしい。

その形状は薬品のカプセル大から、砲弾・爆弾弾道ミサイルの弾頭まで様々であり、特に前者のような不特定人物が持ち歩けるような物は事実上、完全に防衛することが不可能である。
代表的なものとしては天然痘炭疽菌などが挙げられる。

生物兵器は以下のような特徴を有している。(外務省ウェブページより)

  • 一般に、自然に発生する疾病との区別が困難なことが多く、生物兵器が使用されたかどうかを判断することが難しい。
    また、使用される病原体によっては人から人へと感染するため、被害が広範かつ長期的に持続する可能性が高い。
  • 容易に増殖可能であるため、大量生産を迅速に行うことができる。
  • 消毒することにより証拠隠滅が可能なため、開発・生産の現場を検知することが困難である。

生物兵器を戦略的に活用するためには、「事後の防疫を行うのは自国ではない」という前提を置く必要がある。
医療体制を事前に整備し、そのために関係各所に周知徹底した上で多大な予算を投じた場合、生物兵器の特性的利点は全て無価値化するからだ。
領土の帰属を巡って争う紛争・戦争において、係争地に生物兵器を投射するのは著しく不合理である。

遠く離れた敵地に疫病を撒くのは破壊工作として有用かもしれない。
しかし、バイオハザードが全世界に拡散し得る現代では、地球の裏側からでも自国領内まで感染経路が延びてこないとは保証できない。

生物兵器は使用時の付帯被害が極大規模かつ制御不能であり、これは国家戦略に基づく計画的な活用を事実上不可能とする。
しかし、経済基盤の脆弱なテロリスト集団による無軌道な攻撃には非常に適しており、生物兵器によるテロ行為の可能性は国防上の大きな懸念となっている。


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