【最上】 †
山形県を流れる川「最上川」(原義)。
旧日本海軍や海上自衛隊・海上保安庁の艦艇名として幾度か用いられている。
通報艦 †
大日本帝国海軍の通報艦。
「淀」型通報艦の2番艦として三菱合資会社三菱造船所(現:三菱重工長崎造船所)で1907年3月3日に起工し、1908年3月25日に進水、1908年9月16日に竣工した。
日本海軍初の蒸気タービン機関搭載艦であった。
1912年8月28日に一等砲艦に類別変更。
第一次世界大戦やシベリア出兵に従事し、1928年4月1日に除籍、1929年1月31日に廃船となり、同年6月1日に売却された。
廃船後、マストと後部艦橋は大阪の帝国在郷軍人会によって中之島公園に設置され、戦後も大阪市により保存されていたが、老朽化により倒壊の危険があったため2009年2月9日に解体。
呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)に移設予定である。
性能諸元 | |
常備排水量? | 1,350t |
全長 | 91.4m(垂線間長) |
最大幅 | 9.6m |
喫水 | 3m |
主缶 | 宮原式重油石炭混焼缶×2基 |
主機 | パーソンズ式蒸気タービン×1基 |
推進器 | スクリュープロペラ×3軸 |
出力 | 8,000hp |
燃料 | 石炭:352t 重油:68.5t |
速力 | 23ノット |
航続距離 | N/A |
乗員 | 134名 |
兵装 | 12cm砲×2基、8cm砲×4基、45cm魚雷発射管×2門 |
二等(軽)巡洋艦→一等(重)巡洋艦 †
二等(軽)巡洋艦「最上」。
1930年代に設計・建造された大型軽巡洋艦。
同型艦に「三隈」「鈴谷」「熊野」があった*1*2。
当初、本艦は旧式化した軽巡洋艦「天龍」「龍田」「球磨」「多摩」の置き換え用重巡洋艦として計画されたが、ロンドン海軍軍縮条約で重巡洋艦の保有数に制約がかけられたため、主砲を15.5cm砲にして(将来の20.3cm砲への換装も可能とされた)軽巡洋艦として就役した*3。
条約失効後は計画通りに主砲の換装を受け重巡洋艦となったが、書類上は最後まで軽巡洋艦のままだった。
ネームシップの最上はミッドウェー海戦に参加した際、三隈との衝突や空襲により大破し、損傷修理の際に後部砲塔を撤去し飛行甲板を延長、水上偵察機11機を搭載可能な航空巡洋艦となった。
スペックデータ | |
基準排水量 | 11,200t(最上(竣工時))/12,200t(最上(1943年)) 12,000t(鈴谷、熊野) |
公試排水量 | 13,877t(鈴谷) |
全長 | 200.6m |
最大幅 | 20.6m 20.2m(鈴谷、熊野) |
喫水 | 6.9m(新造時) 5.9m(鈴谷、熊野) |
主缶 | ロ号艦本式缶大型×8基+同小型×6基(最上、三隈) ロ号艦本式缶×8基(鈴谷、熊野) |
主機 | 艦本式ギヤード・タービン×4基 |
推進器 | スクリュープロペラ×4軸 |
出力 | 152,000hp |
燃料 | 重油:2,280t |
速力 | 35ノット |
航続距離 | 8,000浬/18ノット |
乗員 | 944名(最上(竣工時)) 874名(鈴谷(竣工時)) |
兵装 (竣工時(軽巡洋艦)) | 三年式60口径15.5cm三連装砲×5基 八九式40口径12.7cm連装高角砲×4基 九六式25mm連装機銃×4基 九三式13mm連装機銃×2基 61cm三連装魚雷発射管×4基 |
同 (重巡洋艦時) | 三年式50口径20.3cm連装砲×5基 八九式40口径12.7cm連装高角砲×4基 九六式25mm連装機銃×4基 九三式13mm連装機銃×2基 61cm3連装魚雷発射管×4基 |
装甲 | 舷側:100mm 弾薬庫:140mm 甲板:35〜60mm 主砲塔:25mm |
艦載機 | 水上機×3機、呉式二号五型射出機×2基 水上機×11機*4、同×2基(最上(1943年)) |
電探 (熊野(最終時)) | 21号電探×1基 22号電探×2基 13号電探×1基 |
同型艦 | ||||||
艦名 | 主造船所 | 起工 | 進水 | 就役 | 除籍 | 備考 |
最上 | 呉海軍工廠 | 1931.10.27 | 1934.3.14 | 1935.7.28 | 1944.12.20 | スリガオ海峡海戦で大破、 駆逐艦「曙」により雷撃処分 |
三隈 | 三菱造船 長崎造船所 | 1931.12.24 | 1934.5.31 | 1935.8.29 | 1942.8.10 | ミッドウェー海戦で 米軍艦載機の空襲により沈没 |
鈴谷 | 横須賀海軍工廠 | 1933.12.11 | 1934.11.20 | 1937.10.31 | 1944.12.20 | サマール沖海戦で沈没*5 |
熊野 | 川崎造船所 | 1934.4.5 | 1936.10.15 | 1937.10.31 | 1945.1.20 | 1944.11.25 米軍機の空襲により沈没 |
護衛艦(DE-212) †
JS Mogami(DE-212→TV-3505).
海上自衛隊の「いすず」型護衛艦の2番艦。
同型艦に「いすず」「きたかみ」「おおい」がある。
海上警備隊時代にアメリカから貸与されていたPF(哨戒フリゲート)級護衛艦「くす」型の老朽化に伴う近海防衛用護衛艦(護衛駆逐艦)として、三菱造船長崎造船所で1960年8月4日に起工し、1961年3月7日に進水。
1961年10月28日に就役、舞鶴地方隊に配備されて近海防衛に活躍した。
1987年7月1日、練習艦に種別変更され、艦籍番号がTV-3505に変更。
練習艦隊第1練習隊に編入され、定係港が呉に転籍。
1991年6月20日に除籍された。
スペックデータ | |
基準排水量 | 1,490t |
満載排水量 | 1,790t |
全長 | 94m |
全幅 | 10.4m |
喫水 | 3.5m |
深さ | 7m |
主機関 | 三菱 9UET52/65 2ストローク直列9気筒中速ディーゼルエンジン×2基 |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ×2軸 |
出力 | 8,000hp×2基、計16,000hp |
最大速力 | 25ノット |
航続距離 | 6,000海里/16ノット |
乗員 | 183名 |
兵装 | 68式50口径3インチ(76mm)連装速射砲×2基4門 Mk.108(RUR-4『ウェポン・アルファ』?)324mm対潜ロケット発射機×1基 (1974年に71式ボフォース・対潜ロケット発射機×1基に換装) Mk.2 短魚雷落射機×2基(Mk.32短魚雷を装備) (1974年に65式4連装53cm魚雷発射管(HO-401)×2基(試製54式魚雷?用)に換装) 55式爆雷投射機(Y砲)×1基(1966年撤去) 54式爆雷投下軌条×1条(1966年撤去) |
FCS | Mk.63 砲射撃指揮装置(GFCS)×2基 SFCS-1 水中攻撃指揮装置 |
レーダー | OPS-2 対空捜索用 OPS-16 対水上捜索用 |
ソナー | AN/SQS-11A 捜索用 AN/SQR-4 深度測定用 AN/SQA-4 距離深度測定用 OQA-1 可変深度式(1966年装備) |
電子戦 | NOLR-1B 電波探知装置 |
護衛艦(FFM-1) †
JS Mogami(FFM-1).
海上自衛隊が2010年代末から整備を進めている多機能護衛艦(フリゲート)。
同型艦に「くまの」「のしろ」「みくま」「やはぎ」「あがの」がある(2023年現在)。
海上自衛隊でフリゲートに分類される艦が配備されるのは「くす」型護衛艦(元アメリカ海軍「タコマ」級フリゲート)以来、半世紀ぶりとなる。
本艦ではフリゲートとしての能力(防空・対艦・対潜水艦)の他に、従来、掃海艇が担ってきた対機雷掃討戦の能力も付加され、様々な任務に対応可能な艦としてデビューした。
船体はステルス性を意識した長船首楼型となっている。
また、各部の自動化により、乗員数も削減されている。
現在は姉妹艦の「くまの」*6と共に掃海隊群の直轄艦となっている。
なお、本艦型は当初22隻の建造を予定していたが、その後、12隻に削減されている。
スペックデータ | |
基準排水量 | 3,900t |
満載排水量 | 5,500t |
全長 | 133m |
最大幅 | 16.3m |
深さ | 9m |
推進方式 | CODAG方式 |
主機関 | ロールス・ロイス? MT30ガスタービン×1基 MAN 12V28/33D STCディーゼル×3基 |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ×2軸 |
出力 | 70,000ps |
電源 | ダイハツディーゼルMTU ディーゼル発電機×3基 |
最大速力 | 30ノット |
乗員 | 約90名 |
兵装 | Mk.45 62口径5インチ砲×1基 水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)×2基(12.7mm機関銃を装備) Mk.41VLS×16セル1基(後日装備) SeaRAM×1基 17式SSM(SSM-2) 4連装発射筒×2基 HOS-303 3連装324mm短魚雷発射管×2基 |
搭載機 | SH-60K哨戒ヘリコプター×1機 |
C4ISR | OYQ-1戦術情報処理装置(リンク22に対応) |
通信装備 | NORA-50「UNICORN*7」複合空中通信線 |
レーダー | OPY-2 多機能型 |
電子光学センサー | OAX-3 光学複合センサー |
ソナー | OQQ-1 対機雷戦用ソナーシステム OQQ-25 水上艦用ソナーシステム(VDS+TASS) |
電子戦・ 対抗装備 | NOLQ-3E 電子戦装置 |
機雷戦装備 | 簡易型機雷敷設装置(機雷庫は魚雷庫と兼用) 無人機雷排除システム用水上無人機(USV) OZZ-5 自律型水中航走式機雷探知機(UUV) |
同型艦 | ||||||
艦番号 | 艦名 | 主建造所 | 起工 | 進水 | 就役 | 所属 |
FFM-1 | もがみ (JS Mogami) | 三菱重工業 長崎造船所 | 2019.10.29 | 2021.3.3 | 2022.4.28 | 掃海隊群 (横須賀基地) |
FFM-2 | くまの (JS Kumano) | 三井E&S造船 玉野艦船工場*8 | 2019.10.30 | 2020.11.19 | 2022.3.22 | |
FFM-3 | のしろ (JS Noshiro) | 三菱重工業 長崎造船所 | 2020.7.15 | 2021.6.22 | 2022.12.15 | 護衛艦隊 第13護衛隊 (佐世保基地) |
FFM-4 | みくま (JS Mikuma) | 2021.12.10 | 2023.3.7 | |||
FFM-5 | やはぎ (JS Yahagi) | 2021.6.24 | 2022.6.23 | 2023.12.予定 | ||
FFM-6 | あがの (JS Agano) | 2022.12.21 | 2024.3.予定 | |||
FFM-7 | 令和3年度計画艦 (03FFM) | 2022.6.30 | 2023.6.予定 | 2024.12.予定 | ||
FFM-8 | 三菱重工業 マリタイム システムズ | 2022.8.30 | 2023.11.予定 | 2025.3.予定 | ||
FFM-9 | 令和4年度計画艦 (04FFM) | 三菱重工業 長崎造船所 | 2023.予定 | 2024.予定 | 2026.3.予定 | |
FFM-10 | - |
海上保安庁巡視船 †
海上保安庁小型巡視船「もがみ」(MSA Mogami PS-72→PS-11).
海上保安庁発足当初に建造されていた「くま」型巡視船の11番船として1951年に竣工。
1970年代まで活躍していたが、1978年に「おき」(PM-06)と交替して解役。
*1 後期2艦は船体線図の改正により「鈴谷」型と分類されることもある。
*2 この他にも「利根」「筑摩」が計画されたが、設計変更されて独立の艦種となっている。
*3 このようなことが可能だったのは、ロンドン海軍軍縮条約における重巡洋艦と軽巡洋艦の区別が排水量ではなく備砲の口径でなされていたためである。
*4 瑞雲?の搭載を予定していたが、実際は零式水上偵察機?と零式水上観測機?を搭載していた。
*5 米軍機の攻撃で発生した火災と搭載魚雷の誘爆による。
*6 本艦の建造中、ガスタービンの脱落事故により本艦よりも先に就役した。
*7 UNIted COnbined Radio aNtennaの略。
*8 現:三菱重工業マリタイムシステムズ。