【駆逐艦】 †
艦艇の一種。アメリカ海軍での略号は"DD"。
元々は「水雷艇駆逐艦」の略だが、現代では水雷艇に限らず「海上の脅威全般を駆逐(destroy)すること」を主任務とする。
具体的に想定される任務はおおむね以下の通り。
- 敵の艦隊に遭遇した際、友軍艦隊の前方に進出して艦載砲・魚雷による攻撃を行う
- 味方の主力艦や輸送船団の周囲に位置し、敵の攻撃から護衛対象を守るための囮になる(被害担当艦)
- 撃沈された艦・墜落した航空機の乗員を救助する
- 海上における戦闘捜索救難を行う
- 緊急事態において人員・資材の強行輸送を行う
分類については、基本的に巡洋艦より小さく、明白に軍事衝突を想定して武装した戦闘艦を指す。
20世紀初頭においては排水量300トン程度のものが一般的だったが、現代では概ね5,000トン程度が基準とされる。
とはいえ、往年の装甲艦・戦艦や巡洋艦に匹敵する10,000トン以上の艦もあり、明確な基準はない。
重量の下限についても、フリゲート並みかそれ以下という例が多々あり、こちらも明確な国際基準はない。
また、装備にも基準はないため、「ヘリコプター空母やV/STOL空母が『ヘリコプター(V/STOL機)の母艦機能を持つ駆逐艦』と公称される」などの極端なケースもある*1。
運用上、現代ではほとんどの国家にとって最大級の戦闘艦艇であり、かつての戦艦の代替となっている。
巨大な海軍においても航空母艦や巡洋艦の運用には戦略上の制約が大きく、小規模な海戦には駆逐艦が投入される事が多い。
関連:護衛駆逐艦 護衛艦(日本) 水雷艇
ルーツとその発展 †
元々「駆逐艦」は、その名の通り「水雷艇を駆逐(撃破)する艦艇」として開発された艦である。
水雷艇は、艦船の死角から雷撃を行うための艦艇であり、小型の船体と高い機動力を備えていた。
低コストながら、当時の主力艦であった巡洋艦や戦艦にとっては深刻な脅威対象であり、既存の海軍戦術では対処が困難であった。
これに対する対抗戦術として設計・開発された、「一定の機動力と、水雷艇を容易に駆逐する武装」を備えた艦艇が駆逐艦であった。
その後間もなく、外洋航行能力に欠ける水雷艇は海戦兵器の座から退き*2、その役割は駆逐艦へと引き継がれた。
これに伴い、爆雷や高射砲を搭載するなどして、その任務は様々に多様化していった。
現代では多数のミサイルや魚雷、爆雷等と武装やレーダーを装備して多種多様な脅威への対応能力を持つようになり、果てはヘリコプターの運用から巡航ミサイルによる地上攻撃をこなすまでになった。
*1 該当の艦(例1・例2)は、排水量が第二次世界大戦世代の正規空母にも匹敵する大型艦となっている。
*2 ただし、戦艦や装甲巡洋艦に搭載する「艦載水雷艇」は1930年代まで運用されていた他、「駆逐艦をより小型化した艦」としての水雷艇も建造されていた。