Last-modified: 2022-12-14 (水) 13:53:46 (166d)
【九六式陸上攻撃機】 †
三菱 G3M・九六式陸上攻撃機。
日中戦争(支那事変)時に登場した、日本海軍の陸上攻撃機(大型雷撃機)。
連合国軍でのコードネームは"
1920年代〜1930年代に締結された「ワシントン海軍軍縮条約」及び「ロンドン海軍軍縮条約」により、主力艦船(戦艦・巡洋艦)の保有数に制約をかけられた日本海軍は、その対応策として、陸上基地から展開する長距離爆・雷撃機の配備を進めることとした*1。
そこで1934年、海軍は三菱に陸上攻撃機の試作を指示。
1935年に「九試中型陸上攻撃機」として試作機が完成し、試験の結果、1936年に正式採用された。
双発、双尾翼の特徴的な外観をしており、爆弾倉は持たず、直接胴体に魚雷、または爆弾を懸架する方式を採用している。
速度、航続距離等、実用化当時は世界水準を超える性能を保持し、「戦闘機不要論」は本機によって発生した。
支那事変ではその航続性能を利用した「渡洋爆撃」と呼ばれる世界最初の戦略爆撃を実施し、また後継機である一式陸上攻撃機と共にマレー沖海戦に参加、イギリス東洋艦隊の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」及び巡洋戦艦「レパルス」を撃沈する功績を残したが、太平洋戦争開戦時には既に旧式化しており、のちには主に輸送などの後方任務で使用された。
末期には陸上哨戒機「東海(Q1W)?」実用化までのつなぎとして電探とKMX?磁気探知機を搭載した対潜哨戒機として終戦まで運用された。
なお、本機には武装を完全撤去した輸送機型もあった(民間向けとしても少数作られた)が、このうち1機は東京日日新聞社(後の毎日新聞社)によって「ニッポン号」と命名され、1939年に日本製航空機としては初の世界一周飛行を達成した。
性能諸元 †
形式 | 八試特殊偵察機 (エンジン換装前) | 九六式陸攻一一型 | 九六式陸攻二一型 | 九六式陸攻二三型 |
機体略号 | G1M1 | G3M1 | G3M2 | G3M3 |
乗員 | 5名 | 7名 | ||
全長 | 15.83m | 16.45m | ||
全高 (水平) | 4.532m | 3.685m | ||
全幅 | 25.00m | |||
自重 | 4,775kg | 4,770kg | 4,965kg | 5,243kg |
全備重量 | 7,003kg | 7,642kg | 7,778kg | 8,000kg |
プロペラ | ハミルトン定速3翅 | |||
発動機 | 九一式水冷W型12気筒 (離昇650馬力) | 金星三型 空冷複列星形14気筒 (離昇910馬力) | 金星四二型 (離昇1,075馬力) | 金星五一型 (離昇1,300馬力) |
最高速度 | 265.6km/h (高度不明) | 348km/h (高度2,000m) | 373.2km/h (高度4,180m) | 416km/h (高度5,900m) |
航続距離 | 2,346km 4,408km(過荷重) | 2,854km(爆撃) 4,550km(過荷重) | 4,379km | 6,228km |
実用上昇限度 | 4,600m | 7,480m | 9,130m | 10,280m |
固定武装 | 九二式7.7mm旋回機銃×2挺 (機首・後方・八試中攻時) | 九二式7.7mm旋回機銃×3挺 (前後上方・後ろ下方) | 7.7mm旋回機銃×3挺 (胴体中央部上方・側方) 20mm旋回機銃×1挺 (胴体後部上面) | |
爆装 | なし | 60kg爆弾×12発、250kg爆弾×2発 500kg又は800kg爆弾×1発 | ||
雷装 | 800kg魚雷×1発 |
派生型(カッコ内は生産機数) †
- 八試特偵(G1M1)(1機):
原型機。
発動機は海軍広工廠「九一式」水冷W型12気筒(500馬力)を搭載。
初の自動操縦装置と引き込み脚を装備。
後に、発動機を三菱「震天(ハ-6)」空冷14気筒(950馬力)に換装し最高速度が向上(266km/h→293km/h)している。
- 九試中型陸上攻撃機(甲案型)(6機):
八試特偵を基に改良が行われた陸攻型。
尾翼胴体を再設計し操縦席が正副並列式に改められ、銃座と魚雷・爆弾搭載装置が搭載された。
偵察員席が操縦席後方にある。
発動機は1.2.5.6号機は九一式水冷W型12気筒(600馬力)を装備し、3.4号機は三菱「金星」二型(680馬力)を装備している。
- 九試中型陸上攻撃機(丙案型)(15機):
偵察員席が操縦席より前に配置され、機首に透明銃座を設けた。
甲案に比べ機首が短縮され、操縦席の風防は盛り上がった形になっている。
7〜10号機・12〜21号機の発動機は「金星」二型もしくは三型を装備。
- 九六式陸上攻撃機一一型(G3M2a)(34機) :
初期生産型で九試中攻の甲案型をもとに量産化した型。
発動機は金星三型(910馬力)を搭載し、カウルフラップを追加。
三翅可変ピッチプロペラ、引き込み式銃座を装備。
- 九六式陸上攻撃機二一型(G3M2b)(343機):
発動機を金星四二型(離昇1,075馬力)に換装しプロペラ直径を3.20mに変更した型。
- 九六式陸上攻撃機二二型(238機) :
戦訓を取り入れた武装強化型。
胴体上面の後方銃座をブリスター型銃座の20mm旋回砲1門に改め、胴体側面に7.7mm旋回銃各一丁を装備したブリスター型銃座が新設された。
胴体下方の垂下筒は廃止され、411号機以降は胴体下面の段がなくなり、胴体下面に下方銃の支基が設けられた。
武装強化に伴い乗員が7名に増えている。後期生産型の79機は金星四五型を装備している。
- 九六式陸上攻撃機二三型(G3M3)(412機):
金星五一型(離昇1,300馬力)装備の最終生産型で、全機中島飛行機で生産された。
発動機の強化に伴い燃料搭載量も5,182リットルに増加された。
機体は二二型に準ずる。