【近接信管】 †
Proximity fuze / Variable-Time fuze(俗)
目標や障害物との距離を検知し、加害範囲内にそれを捉えた時起爆するよう設定された信管。
高射砲、ミサイル、榴弾砲など、命中精度が不十分で直撃弾を見込めない場合に用いられる。
物体の存在だけがわかる簡易的なレーダーを搭載し、電波を放射して測距を行う。
近年ではより高精度で検知されにくいレーザーを用いて測距するものが主流となっている。
概念研究そのものは1930年代にはすでに始まっていたが、当時はまだ実用化困難とされ注目されていなかった。
しかし第二次世界大戦において、命中精度の低かった当時の高射砲を補強する目的で大々的に研究が行われた。
いち早く開発に成功したのはアメリカ海軍で、1943年1月に最初の撃墜戦果が確認されている。
とはいえ、同時代にはすでに防勢対航空作戦の警戒網が整っており、高射砲は対空戦闘の主役ではなかった。
近接信管が兵器としての本領を発揮したのは第二次世界大戦終結後、ミサイル・誘導爆弾の出現以降である。
現代戦では空爆・間接砲撃の危害半径を拡大させる曳下射撃に用いられるのが一般的。
また、航空戦においても地対空・空対空ミサイルを近接信管で起爆させている。
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測距の原理 †
近接信管の測距は、電磁波のドップラー効果を基にした原理を用いている。
距離が次第に近づいている状態だと、跳ね返ってきた電波は元より波長が短い高周波である。
一方、距離が次第に遠ざかっている状態では、跳ね返ってきた電波は元より波長が長い低周波である。
したがって、測定電波が高周波から低周波に切り替わった瞬間に起爆すれば良い、という事になる。
または数学的推定により、一定距離まで近づいた事が確認された時点で起爆するよう設定される事もある。