Last-modified: 2023-05-05 (金) 10:13:49 (146d)
【格安航空会社】 †
Low Cost Carrier(LCC).
旅客機を運航する航空会社の一形態。
明確な定義はないが、運賃の安さを経営戦略の中核に位置づけている航空運輸業者を指す。
また、大半は航空業界再編の中で近年出現した新興企業である。
大手航空会社に比して資本・技術で比較劣位にあり、大手に伍するサービスを提供できない。
このため、半ば以上意図的にサービスの質を落とし、価格競争で生き残りを図るのが特徴。
安全性・信頼性についての疑念から、富裕層・大企業・旅行代理店などからは忌避される。
また、顧客の要求に応えられない場面(設備やノウハウの不備)が多々あるため、契約交渉において著しく不利である。
中小企業・若者・移民などの低所得層が主な顧客となる。
安全性について言えば、実際のところ、風説で言われているほど危険ではない(おおむねは)。
ほとんどの先進国は航空運輸の安全性について厳重な規制を設けており、違反が発覚すれば重大な制裁を受ける。
また、同業他社より突出して重大事故発生率が高いような格安航空会社は、早晩信用を喪って倒産に至る。
とはいえ、「重大事故が原因で倒産した格安航空会社」は過去に相当数存在し、これから出現しないとも言い切れない。
コスト節減法 †
低運賃で経営を成立させるためになされる「経費節減」の方法としては以下のようなものがある。
- 自社フリートの構成を可能な限り1〜2機種程度に統一
- 自社で航空機を所有せず、リース契約で機体を借りて運行する
- 燃料消費量の多い長距離路線を避け、国内線・近距離国際線に特化する
- 混雑している大規模空港を避け、周辺の中小空港に乗り入れる
- ハブ・アンド・スポーク方式ではなく、ポイント・トゥ・ポイント?方式の旅客輸送方式を採る
- 空港の施設使用料を抑える
- ボーディングブリッジを備えたエプロンを使わずに沖止めを行う
- 設備の簡素なターミナルを使用する
- 多頻度・定時運航により駐機料を減らす
- 社員の人件費削減*1
- グランドハンドリングのうち軽作業はパイロット・フライトアテンダント・地上接客スタッフにも兼務させる
- 整備業務は可能な限り外注
- パイロットの教導体制を構築せず、経験者を中途採用してまかなう
- 各種研修の有償化、あるいは研修期間中の給与を払わない
- 制服・備品を支給せず、利用する社員の給与から差し引く
- 社員向けの特典(エンプロイー・フリーチケットなど)を制定しない
- 搭乗手続が必要な時間帯以外はチェックインカウンターを閉鎖する
- 機内サービスの省略
使用される主な機材 †
主として、客席数50〜200内外の小型・狭胴機を採用して多頻度運航をすることが多いが、B767・B787・A330などの中型・広胴機を採用する会社もある*2。
- ボーイングB737
- エアバスA318/319/320/321
- エアバスA220
- エンブラエル170/175/190/195
- ボンバルディアCRJシリーズ
- デ・ハビランド・カナダDHC-8
- ATR42/72
格安航空会社一覧(現在運航中のもの) †
アジア | |
日本 | スカイマーク ソラシドエア フジドリームエアラインズ ジェットスター・ジャパン ピーチ・アビエーション*3 SPRING JAPAN ZIPAIR Tokyo |
中国 | 九元航空 北京首都航空 中国聯合航空 祥鵬航空 中国西部航空 春秋航空 江西航空 ウルムチ航空 多彩貴州航空 瑞麗航空 |
香港 | 香港エクスプレス航空 |
中華民国 (台湾) | タイガーエア台湾 |
韓国 | エアプサン エアソウル チェジュ航空 ジンエアー ティーウェイ航空 フライ江原 |
タイ | ノックエア ノックスクート タイ・エアアジア タイ・エアアジアX タイ・ライオン・エア タイ・ベトジェットエア |
ベトナム | ジェットスター・パシフィック航空 ベトジェットエア |
フィリピン | セブゴー セブパシフィック航空 エアアジア・フィリピン |
シンガポール | ジェットスター・アジア航空 スクート |
マレーシア | エアアジア エアアジア X |
カンボジア | ランメイ航空 |
インドネシア | インドネシア・エアアジア インドネシア・エアアジアX シティリンク ライオン・エア |
インド | エア・インディア・エクスプレス エアアジア・インディア ゴーエア(GoAir?) インディゴ(IndiGo?) スパイスジェット |
パキスタン | エアブルー |
アフリカ | |
エジプト | エア・アラビア・エジプト カイロ航空 ナイルエアー |
ケニア | ジャンボジェット Fly540 |
モロッコ | エア・アジア・モロッコ |
モザンビーク | ファストジェット・モザンビーク |
南アフリカ共和国 | FrySafair? kulula.com マンゴー |
タンザニア | ファストジェット・タンザニア |
ジンバブエ | ファストジェット・ジンバブエ |
南北アメリカ | |
アルゼンチン | フライボンディ ノルウェー・エアシャトル・アルゼンチン |
ブラジル | アズールブラジル航空 ゴル航空 |
カナダ | エア・カナダルージュ エア・トランザット フレア航空 サンウィング航空 Swoop ウエストジェット航空 |
チリ | スカイ航空 ジェットスマート |
コロンビア | イージーフライ ビバ・コロンビア ウィンゴ |
コスタリカ | ボラリス・コスタリカ |
ドミニカ共和国 | フライカナ |
ホンジュラス | イージーフライ |
メキシコ | インテルジェット ビバ・アエロバス ボラリス |
ペルー | ビバ・エア・ペルー |
アメリカ合衆国 | アレジアント航空 フロンティア航空 ジェットブルー航空 サウスウエスト航空 スピリット航空 サンカントリー航空 |
ベネズエラ | ベネゾラーナ |
オセアニア | |
オーストラリア | ジェットスター航空(カンタス航空の子会社) タイガーエア・オーストラリア |
中東 | |
オマーン | サラムエア |
サウジアラビア | フライナス フライアディール |
アラブ首長国連邦 | エア・アラビア フライドバイ |
ヨーロッパ | |
アルバニア | アルバウィングス |
オーストリア | イージージェット・オーストリア ユーロウイングス・ヨーロッパ ラウダ航空 ニキ航空 |
アゼルバイジャン | ブータ・エアウェイズ |
チェコ | スマートウイングズ |
フランス | フレンチ・ビー トライサヴィア・フランス オップ! |
ドイツ | ユーロウイングス |
ハンガリー | ウィズエアー |
アイルランド | ライアンエアー ノルウェー・エア・インターナショナル |
イタリア | ブルーパノラマ航空 アーネスト航空 |
モルドバ | フライワン |
オランダ | トランサヴィア |
ノルウェー | ノルウェー・エアシャトル |
ポーランド | ライアンエアー・サン |
ルーマニア | ブルー・エア |
ロシア | ポペーダ |
スペイン | イベリア・エクスプレス LEVEL ボロテア ブエリング航空 |
スウェーデン | ノルウェー・エア・スウェーデン |
スイス | イージージェット・スイス |
トルコ | オヌール・エア ペガサス航空 |
ウクライナ | スカイアップ航空 |
イギリス | イージージェット Jet2.com ノルウェー・エアシャトル UK ライアンエアー UK ウィズエアー UK |
*1 この方針はいわゆる「ブラック企業」的な不徳を疑われる(大手航空会社のロビー活動によるネガティブキャンペーンかもしれないが)。
*2 ただし、その場合でもシートピッチを可能な限り詰め、定員を増やした設定にすることが多い。
*3 2019年10月、バニラエアと経営統合。