Last-modified: 2015-11-11 (水) 20:34:23 (503d)

【階級】(かいきゅう)

grade / class.

命令系統や職責などの関係から人間を等級付けし、差別する事。
誰が誰に対して何の目的で命令して良いのかという「職権」を定めるために用いられる。

単なる職能上の区別とは異なり、階級制度に対する違反や侵犯には強権的な制裁をもって報いられる。
公的機関では重大な背任について死刑を求刑する国も多く、緊急事態では略式の処刑も起こりえる。
また、制度自体も一般に不平等であり、構成員に殉死を強要するような側面もないとは言えない。

このように、階級制度には人権上の問題を伴うのは明らかだが、公共機関から階級を廃する必要性は認められていない。
階級制度が抑圧的なのは、組織として最大限の努力を払い、効率の最適化を試みた結果の必然である。
ことさら、「国民を保護する専門家」の集団である軍隊・警察にあっては、常に最大限の努力と効率が要求される。

人間がある階級に属する時、その階級に対して求められる責任を果たす能力があるものと期待される。
一般に階級が高いほど重大な責任能力を要求されるため、階級が高いほど労働報酬も高額になる。

実際に仕事を行う上での命令系統については、混乱を避けるために別途の規範が定められる。
例えば、階級が高いからといって陸軍の将校が海軍の部隊に命令を下すことは越権行為であり、罰せられる。
しかし、想定外の状況や、単に規範が忘れ去られた場合には最も高い階級の者が仮に指揮権を得る。

というのが原則だが、実態として、不当に濫用されない職権はない。
階級差による意思疎通の阻害、心理的摩擦や「不当な差別」はどのような社会でも広汎に見られる。

軍人の階級

軍隊は極めて厳密な階級組織であり、階級制度なくしては成立しない。

各国はそれぞれの事情と伝統から独特の階級制度を定めているが、国際的には以下のような分類が為されている。

士官・将校(officer)
用兵・作戦・統率術などの幹部教育を受けた軍人。
徴兵制を採用する場合でも自発的志願者のみで構成され、士官学校の卒業を大前提とする。
負うべき責任の軽重により「将官」「佐官」「尉官」の3種類に分類される。
将官(General/Admiral)
戦略レベルの組織の長となり、一つの軍事作戦における最終責任を負う将校。将軍閣下
その決断の是非が国際問題にまで波及する可能性があり、外交上の責任を負う事もある。
佐官(Field officer)
一つの現場における戦術的判断の責任を負う将校。
自ら決断して作戦を実行する事は基本的に認められないが、その行動の正否は作戦の結果や部隊の存続を決定的に左右する。
基本的に士官学校から軍歴を始めたエリートであり、兵から昇進して佐官に至る事は普通ない。
  • 主な役職
    陸軍:連隊長、大隊長など
    海軍:艦艇の艦長・副長及び各部の責任者*1など
    空軍:飛行隊長など
    軍種共通:参謀駐在武官、およびその代理・副官など。
尉官(Company officer)
個々の現場や設備における管理責任を負う将校。
前提として士官学校における幹部教育と、職域に応じた高度な専門教育の修了が要求される。
実績・経験・年齢*2に応じ、更に上位の佐官・将官へと昇格する可能性がある。
士官候補生(Cadet/Ensign)
士官学校の卒業生が正式に尉官に登用されるまでの過渡期。
部隊や艦船で一定期間の実務教育を経て正式に登用される。
一般に、将来の佐官・将官を期待されるエリート層は事前の教導の大半が幹部教育で占められる。
指揮統率よりも個人としての識見・技術が求められる分野では専門が優先され、幹部教育は短期に留まる。

また、実務経験を豊富に積んだ下士官が幹部教育を受けて士官に昇進する場合もある。
この場合、生え抜きの士官候補生よりも20歳ほど年上であり、必然的に勤続可能年数も生え抜きより20年前後少ない。
従って、兵から士官まで昇りつめた者がさらに昇進する事はほとんどない。
准士官(Warrant officer)
正規の専門教育を受けていないが、尉官に相当するような職責を担える者。
基本的に下士官から昇格するもので、専門知識よりも現場での経験が重んじられる分野で見られる。
准士官から尉官に昇格する事は制度上可能な場合もあるが、基本的に不可能である*3

一方、軍によっては准士官の制度がなく、熟練の下士官に幹部教育を施して尉官に昇進させる場合もある。
下士官(Noncommissioned officer/(Chief)Petty officer)
個々の現場における兵士の監督責任者。基本的に尉官の補佐として「部下の代表」を務める。
経験豊富な兵から抜擢されるもので、その性質上、経験の浅い尉官よりも実務能力に長ける場合も多い。
兵卒(Soldier/Private/Sailor/Seaman/Airman)
前線での直接戦闘や部隊・艦船における平時の諸作業などに従事する者。
軍事活動に伴う人的損失の大部分を占めるため、各個人の能力について長期的信頼を置く事はできない。
よって、命令・規範・法律に従う限りにおいて責任能力は要求されず、責任を負えるものともみなされない。
上官が明示的に命じた調査・報告を除き、いかなる計画立案にも参与する資格がない。

上記階級呼称の和訳は、古代律令制における官職を当て嵌めて使用しているだけであり、意味の繋がりは無い。

各軍の階級呼称

ここではアメリカ軍NATO加盟各国共通の階級コード・大日本帝国陸海軍及び自衛隊における階級のおおむねの対比を示す。

階級呼称アメリカ軍NATO階級コード大日本帝国軍自衛隊
士官元帥OF-10元帥大将(該当なし)
将官大将OF-9大将将(甲)
中将OF-8中将将(乙)
少将/上級少将OF-7少将将補
准将/下級少将OF-6(該当なし)一佐*4
佐官大佐OF-5大佐
中佐OF-4中佐二佐
少佐OF-3少佐三佐
尉官大尉OF-2大尉一尉
中尉OF-1中尉二尉
少尉少尉三尉
准士官一等准尉/一等兵曹長WO-5(該当なし)
二等准尉/二等兵曹長WO-4
三等准尉/三等兵曹長WO-3
四等准尉/四等兵曹長WO-2
五等准尉WO-1
下士官陸軍(空軍/海兵隊)最先任上級曹長/海軍最先任上等兵曹OR-9准尉/兵曹長准尉
部隊等最先任上級曹長/艦隊等最先任上等兵曹
上級曹長/最先任上等兵曹
一等曹長OR-8(該当なし)曹長
曹長/上級上等兵曹
一等軍曹/上等兵曹OR-7曹長/上等兵曹一曹
二等軍曹/一等兵曹OR-6軍曹/一等兵曹二曹
三等軍曹/二等兵曹OR-5伍長/二等兵曹三曹
伍長/航空兵長/三等兵曹OR-4兵長/水兵長(該当なし)
特技兵
兵卒上等兵/上等航空兵/上等水兵OR-3上等兵/上等水兵士長
一等兵/一等航空兵/一等水兵OR-2一等兵/一等水兵一士
二等兵/二等航空兵/二等水兵OR-1二等兵//二等水兵二士*5
 

軍種による呼称のずれ

国によっては、陸軍・空軍と海軍との階級呼称にずれが生じている場合がある。
スペインのように陸軍、空軍の准将〜大将*6に対し、海軍の少将〜上級大将*7という全体的なものから、イタリア軍の様に准将〜少将に対し、少将〜上級少将と部分的なものまでその範囲は区々である。
また、同じ言語を使用する国でも、スペインでは准将を意味する"General de brigada"がチリ*8やアルゼンチンでは少将を意味するような例があるので注意が必要である。


*1 艦船における「航海長」「機関長」「砲術長」「飛行長」など。
*2 年功序列ではなく、その逆。必要な能力・技術を備えているならより若く、より多く経験を積む余地がある方が望ましい。
*3 「下士官から尉官への昇進を認めない」という方針を明文化する意図を持ってこの階級が設置されている向きもある。
*4 OF-6には編制上将補職の指揮官に就任した一佐(1)のみが対応。
*5 2010年10月31日まではこの下に「三士」が存在した。
*6 General de ejercito(陸軍)、General del aire(空軍)といい、1997年制定。
*7 Almirante generalといい、同じく1997年制定。
*8 すぐ下にBrigadier(代将)がある。

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