Last-modified: 2022-11-12 (土) 08:40:55 (210d)
【音の壁】 †
物体の対気速度が遷音速にある際、抗力・振動が急激に増加する現象。
物体の一部のみが音速を突破して衝撃波を発生させる事が原因とされる。
また、衝撃波が翼面から空気の流れを剥離させるため、動翼による機体制御も著しく困難になる。
音速を突破するための研究開発において、少なくない数の試験機・テストパイロットが音の壁により爆散している。
超音速航空機が普及するまでは「音の壁には悪魔が潜む」「人類は音の壁を越えられない」などとも言われた。
機体自体の前進だけでなく、プロペラの旋回速度が遷音速を越えた場合にも発生する。
このため、プロペラ駆動の機体は原理的に音速に到達する事が不可能である。
同様の理由から、ジェットエンジンもタービンブレード部分が遷音速に達すると正常に機能しなくなる。
このため、内燃機関で超音速を実現するためには燃焼室に入る前に吸気を十分減速させておく必要がある。
なお、排気は音速を超えてもかまわないため、ロケットエンジンは特筆するような工夫なく音速を突破できる。
遷音速で制御を安定させるためには、翼気流の速度を遅くする特殊な翼型を採用する必要がある。
または推力に任せて超音速に到達する事でも制御は安定する。
この二つは基本的に両立せず、戦闘機などは遷音速での挙動を重視し、ミサイルなどでは超音速巡航を念頭に置く。
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