Last-modified: 2016-01-02 (土) 01:30:54 (510d)

【永世中立】(えいせいちゅうりつ)

Permanently Neutralize*1

他国に対し自ら軍事行動を起こす事なく、自身が侵略を受けた場合を除いていかなる戦争にも関与しない国家。
条約などで国際社会が永世中立を承認した場合のみを指し、そうであると自称するのみの国家(例えば日本)は該当しない。

より現実に即した表現をすれば、「関わった全ての紛争に際して「自衛目的」であると主張し、それを論破されていない国家」である。
よって大抵の場合、永世中立国は敗戦すると永世中立たる資格を失う。軍事裁判で「我々は自衛のために戦った」と主張できるのは勝者のみである。

常に中立を維持するため、他国への軍事的荷担だと判断され得る全ての行動が禁止される。
よって、他国の軍隊が領土領海領空に滞在する事はいかなる理由であっても開戦事由として成立し得る。
また同時に、自明なただ一つの例外である「宣戦布告」を除き、いかなる理由があっても他国に軍隊を派遣する事ができない。
以上の理由から同盟国を持つ事も不可能になる。

誤解されがちだが、これは平和主義に基づく発想ではない。明らかにその逆である。
たとえば隣国で大虐殺が起きて無数の難民が押し寄せてきた時、永世中立国はこれを救援すべきでない。
国民に還元されるべき財産を隣国に放り出すのは利敵行為であり、横領であり、国民を守る義務に対する侮辱であるからだ。
永世中立はその思想的前提として、平和主義や国際協調という概念に対して極めて冷笑的であり、人種差別的であり、暴力的である。
永世中立は他国への侵略を認めない。異民族は法と秩序を乱し叛乱を誘発する敵対者であり、市民社会から排除すべきだと考える。
永世中立は他国への援助を認めない。他国は全て潜在的な侵略者であり、誠意や同盟は奇襲するための布石であると予想する。

もし戦争に際して、あるいは有事に備えて他国に軍事的支援を求めれば、その国家は永世中立を名乗る資格を失う。
よって、永世中立国は国民皆兵制度を掲げ、あらゆる仮想敵国を独力で撃退できる確固たる防衛力を備える。
確固たる防衛力を備えていなければ生き残れないものと予想され、また実際生き残ってこれなかったのが永世中立国の通例である。
隣国が永世中立国である事はそれ自体が安全保障上の脅威であり、また同盟国のない孤立した国は侵略者にとって絶好の標的である。
またその性質上、隣接する二つの国家が同時に永世中立国である事は至難である―――そのような二国は普通、互いを滅ぼす機会を常に欲している。

原則としてはこうなのだが、制度・理念の常として、どうにも形骸化を免れ得ない。
現在、「永世中立国」を名乗っている国は国連平和維持活動への参加に積極的であったり、多国間同盟(EUなど)に加盟していたりするのが実情である。
それらは永世中立国としては本来あってはならない事態であり、明らかに中立を脅かす危険性を孕む決断である。
国際情勢はもはや永世中立である事が不可能な局面を迎えつつある、とも言える。


*1 「永世中立」は誤訳である、という主張もある。Permanentlyは「いつでも必ず」「常時」の意であって、「いつまでも」「永遠に」という意は含まない。

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