Last-modified: 2023-12-03 (日) 12:54:19 (137d)

【宇宙服】(うちゅうふく)

宇宙空間の過酷な環境から生命を守る目的で着用される衣服・生命維持装置。
用途により、船内服と船外活動服に大別される。

船内服

宇宙船内で活動する際、事故に備えて着用するもの。
外殻の破損や空調設備の故障による急減圧を想定したもので、高高度飛行機用の与圧服に近い。

船外活動服

宇宙空間に暴露して船外活動を行うための、着用する宇宙船
宇宙放射線の遮蔽、太陽熱輻射や極低温に対応する熱制御、真空に耐える気密と酸素供給、姿勢制御装置などのシステムで構成される。
電力・水・酸素などは母船からアンビリカルケーブルを通じて供給を受けるか、それらを貯蔵したサブシステムを携行する(背中に背負う)。

放射線の完全遮蔽は宇宙船でも宇宙服でも事実上不可能であり、宇宙飛行士の活動には被曝の懸念による厳しい時間制限がある。
また、太陽面爆発などの天文現象によっては被曝量が常時の1万倍以上に加速する危険性もある。

内部の空調は減圧症の恐れがあるほどの低気圧で、船外作業員は事前事後に長い時間をかけて気圧変化に身体を慣らす必要がある。
人体にとって快適な1気圧の船外活動服も理論上は製作可能だが、これを真空中で運用するのは現実的ではない。

破断しないよう耐久性を確保すると極端に重くなる。
また、真空と1気圧の差によって極端な膨張を起こし、人の筋力では身動きが取れないほどに人体を圧迫する。

emu.jpg
EMU(NASAの船外活動服)のレプリカ。胸部や腹部に生命維持装置の操作パネルがある。
文字が反転しているのは着用者が鏡で映して操作できるように工夫しているため(パネルを覗きこめるほど下が見えない)。

将来の宇宙服

これまでのように風船のような構造で内部の空気圧を保持するのでなく、ワイヤーによって体を膨張しないようにする宇宙服がMITにて研究されている。
これはBiosuitと呼ばれ、SFアニメに登場する宇宙服のように体に密着した外観をしている。
ワイヤーは体の動きを阻害しないように工夫され、重量や作業性、着脱時間の面で有利とされている。

ただし、それら実験的宇宙服が将来的に実用化されるかについては多大な疑問の余地がある。
試作段階のBiosuitはほぼ真空状態で身体を動かす事しか想定されておらず、保温・熱放射・放射線遮蔽などの生命維持機能については十分な言及がない。
そして宇宙空間における万全の生命維持を求めた場合、それを十分に軽量化・簡易化できうるものかは極めて疑わしい。


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