Last-modified: 2017-07-18 (火) 20:03:26 (153d)

【リバースエンジニアリング】(りばーすえんじにありんぐ)

Reverse engineering (RE)

実際に製造された工業製品を分析して、そこに含まれる工学的知見を調査する事。
通常の工学的研究(Engineering)の行程を逆流(Reverse)する事からリバースエンジニアリング(RE)と呼ばれる。

研究開発部門を有する企業であれば、どこでも日常業務としてREを行っている。
ほとんどの工業製品は仕様書・設計図などが非公開の企業秘密であるため、参考資料を得るためのREが必須となる。
公開された特許でさえ提出された公開情報だけで実際に製造できる事は希であり、前提知識を得るためのREが行われる。

また、多くの製品には開発に関わった技術者本人しか記憶していないような非公式の技術情報が存在する。
こうした情報は技術者の世代交代や移籍によって喪われるため、自社製品の分析も不定期に行われる。

製品が抱えている潜在的な欠陥を調査するため、あえて先入観を持たないスタッフにREを行わせる事もある。

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法的側面

リバースエンジニアリングそのものは完全に合法であり、これを罰する法は基本的にない。
ただし、REの分析結果を転用した製品の販売は特許・著作権・意匠権などの知的財産権と抵触する可能性がある。

一部製品では利用許諾の契約書にリバースエンジニアリングを禁止する条項が明記されている場合がある*1
ただし、その旨の条項が法的に正当なものであるかどうかについては疑問の余地もある。

また、明白に違法な意図をもってリバースエンジニアリングが行われた事例も少なくない。
例えばコンピュータウィルスに対するREを行えば、より強力で対策困難なコンピュータウィルスを作る方法を知る事になる。
ユーザー登録が必要なソフトウェアを解析したエンジニアは、登録料を支払わず不正に利用する方法を知る事になる。
窃盗団は家屋の鍵、セキュリティ装置、ICカードなどを解析し、それらの装置を欺く方法を学ぶ事ができる。

確度の高い技術情報を得るためにスパイ行為を働く事もある。
そうした「産業スパイ」は家宅侵入や窃盗などの刑事事件、社内規定による解雇処分、損害賠償などの民事訴訟に発展する。

軍事におけるリバースエンジニアリング

各国の兵器に明らかな類似性や共通点があるのは偶然ではない。
リバースエンジニアリングなしに成り立たないのは軍需産業も例外ではなく、兵器の基幹技術は全て他社に解析されている。
「特定の企業にしか生産できない兵器」は存在せず、たとえ存在したとしても、解析が完了するまでの一時的な優位に過ぎない。

例えば、パテントが失効した「古き良き」銃器は世界中の銃器メーカーによって解析され、コピー製品が作られている。

ただし、解析するための人的資源は常に有限であり、リバースエンジニアリングの所要時間は関係者が焦りを覚える程度には長い。
通常の技術開発と同じようにREも山ほどの失敗を積み重ねる事になるため、コストを回収できず中断されるRE計画も少なくない。

高度な軍事技術として機密指定されている製品では、この点が特に問題となる。
REを行うためには何らかの方法で現物を入手するか、スパイが危険を冒して技術情報を収集する必要がある。
戦時であれば撃破した敵兵器を鹵獲する事も可能だが、多くの場合、戦端を開いてからREを始めるのでは遅すぎる。
このため、大規模な軍需企業の周辺では常に各国諜報機関が暗躍しているとも言われる。

この他、ライセンス生産も、現物と製造工程を開示する性質上、リバースエンジニアリングされる事を避けられない。
こうした契約はしばしばブラックボックスに触れない旨の契約条項を伴うが、機密保持契約が馬鹿正直に遵守される事は多くない。

訴訟を起こす場合、ブラックボックスが複製された事を示す証拠を提出しなければならなくなる。
これは秘していた技術情報を公開するという事であり、機密保持の観点から言えば明らかに本末転倒である。
このため、機密漏洩案件に対する報復暗殺サイバーテロなど不法な手段による事が多いという。


*1 黎明期から不正コピー問題に悩まされてきたIT業界における独自の慣習で、他の業界では殆ど見られない。

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