Last-modified: 2023-03-30 (木) 17:32:51 (184d)
【ランチェスターの法則】 †
Lanchester's laws.
イギリスのエンジニアであるフレデリック・ウィリアム・ランチェスターが1914年に発表した数理モデル。
第一次世界大戦の統計的分析により、二つの基本法則によって戦闘・競争の結果を予測する。
様々な議論の余地はあるものの、現代でも戦術や企業経営の分析手法として広く用いられている。
第一法則 †
第一法則は、一対一の決闘のような単純な戦闘状況を想定する。
- 勢力A・Bが交戦しており、双方とも攻撃して相手方の人員を損耗させる事ができる
- 勢力A・Bの双方とも、攻撃力を『人員数』と『装備の質』に依存する
- 勢力A・Bの双方とも、相手の動向について情報を持たず、攻撃の成果を事前に予測できない
- 勢力A・Bの双方とも、人員・装備の全てを交戦に投入し、遊兵や後詰が生じていない
以上の条件を満たしている場合、以下の一次方程式を適用できる。
A0 − At = E(B0 − Bt)
A0 | 勢力Aの人員数(初期時点) |
At | 勢力Aの人員数(時間tが経過した時点) |
B0 | 勢力Bの人員数(初期時点) |
Bt | 勢力Bの人員数(時間tが経過した時点) |
E | 勢力A・B間のキルレシオ(勢力Bの装備の質÷勢力Aの装備の質) |
第二法則 †
第二法則は、緊密に連携した組織による集団戦闘を想定する。
- 勢力A・Bが交戦しており、双方とも攻撃して相手方の人員を損耗させる事ができる
- 勢力A・Bの双方とも、攻撃力を『人員数』と『装備の質』に依存する
- 勢力A・Bの双方とも、相手の動向と攻撃の成果について常に正確な情報を持つ
- 勢力A・Bの双方とも、攻撃を受けて生じる人員の損耗は均等に分散される(局所的な集中攻撃を受けない)
以上の条件を満たしている場合、以下の二次方程式を適用できる。
(A0 × A0) − (At × At) = E{(B0 × B0) − (Bt × Bt)}
A0 | 勢力Aの人員数(初期時点) |
At | 勢力Aの人員数(時間tが経過した時点) |
B0 | 勢力Bの人員数(初期時点) |
Bt | 勢力Bの人員数(時間tが経過した時点) |
E | 勢力A・B間のキルレシオ(勢力Bの装備の質÷勢力Aの装備の質) |
類推と実践 †
以上二つの法則は、以下のような戦術上の判断を誘引する。
- 相手方よりも多くの人員を投入できれば間違いなく有利である。
- 相手方よりも質の良い装備を投入できれば間違いなく有利である。
- 自勢力が相手方よりも強大である場合、第二法則の適用できる状況の方が有利である。
- 即ち、強者にとっての最善は状況の全体像を把握し、装備の質を平均化し、局所的な集中攻撃を避ける事である。
- 自勢力が相手方よりも弱小である場合、第一法則の適用できる状況の方が有利である。
- 即ち、弱者にとっての最善は敵を分断し、相手の状況把握を阻害して奇襲を仕掛け、局所的な集中攻撃を繰り返す事である。
- 自他の動向と損害状況を正確に把握できる限り、戦闘の勝敗および最終的な損害は決定論的に予期できる。