Last-modified: 2021-07-13 (火) 11:43:28 (69d)

【ミューロケット】(みゅーろけっと)

JAXA宇宙科学研究本部(旧文部科学省宇宙科学研究所)が開発・運用していた固体燃料式宇宙ロケット。
M-○に入る数字は標準ロケット段数を表す。(例外:M-垢3段)

本機の前身である「L-4S」の5号機が1970年2月、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた経験を元に改良を重ねてきた。
最新型のM-垢任蓮∪府による「全幅1.4m」規制がなくなったため大型化し、ペイロードが飛躍的に増大した。

全段固体燃料推進で地球重力圏を離脱できるロケットは、世界でもM-3S兇M-垢世韻伐茣的なものであり*1、下記のように優れた実績を誇っていたが、取り扱いの至便な液体燃料ロケットであり、かつ大型の衛星を運用できるH-が使用されるようになったことから、2006年を最後に運用を終えている。

本機の運用終了後、JAXAは後継機となる「イプシロン」の開発に着手、2013年9月に第1号機の打ち上げを成功させた。

参考リンク:JAXA宇宙科学研究本部(http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/rockets/vehicles/index.shtml

主要諸元

名称全長直径重量ペイロード
(高度250km円軌道)
誘導制御段
M-4S23.6m1.41m43.6t180kgなし
M-3C20.2m41.6t195kg2
M-3H23.8m48.7t300kg*2
M-3S1、2
M-3S27.8m61t770kg
M-
(1号機)
30.7m2.5m139t1,800kg1、2、3
M-
(5号機)
30.8m140.4t1,850kg


各型式概要

  • 予備試験機
    • M-1:
      M-4Sの実機大予備試験機。
      第1段及び補助ブースター周りのシステムの総合試験を行った。

    • M-3D:
      M-4Sの実機大予備試験機。
      第2段及び第4段周りのシステムの総合試験を行った。

  • 第1世代
    • M-4S:
      L-4Sの発展型。
      尾翼とスピンによる姿勢の安定、重力ターン方式による軌道投入。
      低軌道に180kgのペイロードを打ち上げることが可能。

  • 第2世代
    • M-3C:
      第2・3段を新規開発大型化。
      第2段に二次元推力方向制御?とサイドジェット装置を導入し、軌道投入精度が上昇。
      低軌道に195kgのペイロードを打ち上げることが可能。

    • M-3H:
      M-3C第1段の全長を延長し推薬を増量。
      低軌道に300kgのペイロードを打ち上げることが可能。
      1号機は長楕円軌道?のミッションのため、4段目(キックステージ?)が追加されている。

  • 第3世代
    • M-3S:
      第1段に推力方向制御?を追加。
      これにより、全段で推力方向制御?が可能になり、打ち上げ姿勢の自由度が高まった。
      低軌道に300kgのペイロードを打ち上げることが可能。

  • 第4世代
    • M-3S供
      第2・3段ロケットを新規開発大型化、CPUによるデジタル制御を実装。
      低軌道に770kgのペイロードを打ち上げることが可能。
      日本初(世界3番目)の地球重力圏離脱に成功した。
      4段目(キックステージ?)追加により、惑星間軌道へ直接ペイロードを打ち上げることが可能。

  • 第5世代
    • M-后
      本格的な惑星探査機打ち上げ用ロケットとして開発された。ユニットコストは1機約70億円。
      リングレーザージャイロ?やコンピュータなど最新の技術が取り入れられている。
      低軌道に1.8tのペイロードを打ち上げることが可能*3。 衛星の地球周回軌道投入だけでなく、小惑星や月への探査ミッションにも使用された*4
      4段目(キックステージ?)追加可能。

  • 以下は計画のみ
    • M-4SC:
      M-4Sの2段・3段目にTVC装置を搭載する計画。
      高度500kmの低軌道に120kgのペイロードを投入可能となる予定であった。
      ロケットモータの高性能化などに伴いM-3Cに統合された。

    • M-4SH:
      M-4Sのサイズを変えずに第1段から第3段全てにTVC装置を搭載した高性能モータを用いる計画。
      計画が3段式ロケットに変更されたため実機開発はされなかったが、高度500kmの低軌道に200kgのペイロードを投入可能となる予定であった。

    • M-4SS:
      M-4S、M-4SHをベースにM-4Sの第1段M-10モータに1セグメント追加したM-11モータを用いるなど、各段の大型化を図る計画。
      計画が3段式ロケットに変更されたため実機開発はされなかったが、高度500kmの低軌道に320kgのペイロードを投入可能となる予定であった。
      計画変更以前にはミューロケットの最終形とされ、M-4SHとペイロードに応じて使い分けられる予定であった。

    • M-2H:
      1974年に考案された改良型。
      M-3Hの第1段(SB-310 + M-11)の上に上段として宇航研の開発した推力7t級の「ES-702」LOX/LH2エンジンを用いたステージを採用する計画であった。
      低軌道投入能力は500kgと見積もられていた。
      予算不足やエンジンの開発リソースをLE-5?に集中させることが決定されたために実現しなかった。

    • M-3S掘
      M-3S兇鬟戞璽垢吠篏ブースタを大型化・増量し、第2段を1.6mに大型化させて性能向上を図る計画。
      宇宙開発大綱の改訂によって直径の制限がなくなった為にM-垢粒発へと計画は移行した。

    • M--Lite:
      後期型M-Vの第2段、第3段、キックモータで構成される小型人工衛星打ち上げ用3段式固体燃料ロケット。
      低軌道に500kg、太陽同期軌道に300kgの人工衛星を投入することが可能とされ、M-垢罰読瑤魘ν僂垢襪海箸波駘僂榔卆吋丱垢盍泙20億円に抑えることが可能であると見積もられていた。
      民間移管後に民主導で開発される予定であったが、M-耕唄岼楷彪弉茲涼羯澆イプシロンロケット計画の開始によって開発には至らなかった。

打ち上げ実績

M-4S
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1970/9/25失敗科学衛星(MS-F1)機体のスピン過大によって
第4段点火以降のシーケンスが実行できず
軌道投入に失敗
2号機1971/02/16成功「たんせい(MS-T1)」技術試験衛星
3号機1971/09/28「しんせい(MS-F2)」日本初の科学衛星
4号機1972/08/19「でんぱ(REXS)」電波探査衛星
M-4C
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1974/02/16成功「たんせい2号(MS-T2)」技術試験衛星
2号機1975/02/24「たいよう(SRATS)」超高層大気観測衛星
3号機1976/02/04失敗科学衛星(CORSA)制御装置の信号異常により
軌道投入失敗
4号機1979/02/21成功「はくちょう(CORSA-b)」日本初のX線天文衛星
M-3H
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1977/02/19成功「たんせい3号(MS-T3)」技術試験衛星
2号機1978/02/04「きょっこう(EXOS-A)」オーロラ観測衛星
3号機1978/09/16「じきけん(EXOS-B)」プラズマ圏・磁気圏観測衛星
M-3S
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1980/02/17成功「たんせい4号(MS-T4)」技術試験衛星
2号機1981/02/21「ひのとり(ASTRO-A)」太陽物理学衛星(太陽フレア観測)
3号機1983/02/20「てんま(ASRTRO-B)」X線天文衛星
4号機1984/02/14「おおぞら(EXOS-C)」中層大気観測衛星
M-3S
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1985/01/08成功「さきがけ(MS-T5)」ハレー彗星探査試験機
2号機1985/08/19「すいせい(PLANET-A)」ハレー彗星探査機
3号機1987/02/05「ぎんが(ASTRO-C)」X線天文衛星
4号機1989/02/22「あけぼの(EXOS-D)」磁気圏観測衛星
5号機1990/01/24「ひてん(MUSES-A)」工学実験探査機
6号機1991/08/30「ようこう(SOLAR-A)」太陽観測衛星
7号機1993/02/20「あすか(ASTRO-D)」X線天文衛星
8号機1995/01/15失敗回収型衛星(EXPRESS)日独共同プロジェクト。
第1段切り離し後に重量過多による異常振動で
予定されていた軌道*5に投入できず
(カプセルのみ回収成功)
M-
号機打ち上げ年月日成否搭載衛星備考
1号機1997/02/12成功「はるか(MUSES-B)」工学実験衛星
(実質は電波天文衛星)
2号機未定のまま中止中止*6「LUNAR-A」月探査機
搭載予定だったペネトレーターの開発遅延などから、
2007年1月15日に計画中止。
3号機1998/07/04成功「のぞみ(PLANET-B)」火星探査機
ただし、探査機は火星周回軌道投入断念
4号機2000/02/10失敗(ASTRO-E*7第1段のノズル破損による速度不足により墜落
5号機2003/05/09成功はやぶさ(MUSES-C)工学実験衛星(実質は小惑星探査機)
2010年6月13日、目的地の小惑星「イトカワ」から
採取したサンプルの入ったカプセルを
地上へ放出した後、大気圏に突入して消滅。
6号機2005/07/10「すざく(ASTRO-E供法X線天文衛星
ASTRO-Eの代替機
8号機2006/02/22「あかり(ASTRO-F)」赤外線天文衛星
「Cute-1.7 + APD(CUTE)」超小型衛星(サブペイロードに搭載)
「SSP*8ソーラーセイル(サブペイロードに搭載)
7号機2006/09/23「ひので(SOLAR-B)」太陽観測衛星
「HIT-SAT」超小型衛星(サブペイロードに搭載)
「SSSAT*9ソーラー電力セイル実証小型衛星
(サブペイロードに搭載)
9号機2010年予定
のまま廃止
廃止「あかつき(PLANET-C)」金星気候衛星(金星探査機)
衛星は2010年にH-Aロケットで打ち上げられた



*1 本機の存在を知ったアメリカ政府は「3年以内に日本は弾道ミサイルを運用できるだけの技術を習得するだろう」との予測のもと、日本に対して(事実上、軍事転用を目的とした)技術供与の打診を行ったという。
*2 290kgとする資料もある。
*3 5号機以降は仕様変更により低軌道打ち上げ能力が1.85tに向上している。
*4 月探査ミッションは打ち上げ前に中止された。
*5 近地点210km、遠地点400km、軌道傾斜角31度、周期90分の楕円軌道に投入されるはずだった。
*6 2008年10月より、ISAS相模原キャンパス(宇宙科学研究本部)にて展示保存されている。
*7 愛称には「ひりゅう(飛龍)」の名が用意されていた。
*8 Solar-sail Sub Payloadの略。
*9 Solar Sail Satelliteの略。

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