【ミッドウェイ】 †
北太平洋に浮かぶアメリカ領の島「ミッドウェイ島」(原義)。
第二次世界大戦でのミッドウェー海戦で知られている。
アメリカ海軍の航空母艦の名前として二度、用いられた。
護衛空母(CVE-63) †
USS Midway→St.Lo(CVE-63).
「カサブランカ」級護衛空母の9番艦。
1943年1月23日にカイザー造船所で起工。
当初「チャピン・ベイ」という名前で発注されたが、建造途中に「ミッドウェイ」に変更され、1943年8月に進水し、1943年10月就役。
1944年10月に艦名を後述の大型空母に譲り「セント・ロー」と改名するが、同月のレイテ沖海戦で日本軍の特攻機に突入され、撃沈させられた。
大型空母(CVB-41) †
USS Midway(CVB-41(後にCVA-41、CV-41))
ミッドウェイ級航空母艦の一番艦。艦名は1942年6月のミッドウェー海戦に由来する。
姉妹艦に「フランクリン・D・ルーズヴェルト(CVB-42)」「コーラル・シー(CVB-43)」の2隻があった。
1941年の真珠湾攻撃で、日本海軍の空母機動部隊によって主力戦艦の多数を撃沈されるという屈辱を受けたアメリカ海軍が、その雪辱を果たすため威信を懸けて建造した大型空母である。
しかし進水は1945年3月20日、就役は同9月10日という、太平洋戦争に「間に合わなかった」空母でもある。
米海軍初の、飛行甲板に装甲を張り巡らせた空母*1としても知られる。
排水量を大きくして飛行甲板を拡大する一方、アイランド?を薄型にして100機以上のレシプロ機を搭載することができたが、艦の搭載力が管制能力を超えてしまったため、就役当初はオーバースペックと評価された。
しかし、朝鮮戦争に前後して艦載機がジェット化されると、大型化した機体を運用するには都合がよいとして再評価された。
また、原子爆弾を搭載したP2V哨戒機をJATOで離艦させる*2という、戦略兵器としての側面も持ち合わせていた。
とはいえ、レシプロ時代の直甲板ではジェット機の運用に不都合であったため、1955年から1957年にかけて大改修が施され、斜め飛行甲板や蒸気カタパルト、ミラーランディングシステム?といったジェット時代の空母装備が追加された。
また、当初は5インチ艦載砲などの火器を有していたが、徐々に撤去され、ファランクスやシースパローへ置換されていった。
1965年からベトナム戦争へ参戦。エセックス級では扱えないF-4などの強力な機体を運用した。
その後第2次改修を受け、1973年以降は日本の横須賀基地を母港とした。
(航空母艦が母国以外の港を母港とすることは極めて異例のことだが、この横須賀母港化は後に引き継がれてゆく*3)
しかしながら、「フォレスタル」級以後のいわゆるスーパーキャリアーとは異なり、A-5やF-14といった大型の艦載機を運用することができず、活躍の場を徐々に狭めていくこととなる。
1986年にF-4やA-7が引退した後は第3次改修を受け、F/A-18を主な搭載機としたが、その頃には老朽化が深刻であり、艦齢46を数える1991年、湾岸戦争へ参戦した後に退役した。
なお、同型艦の「フランクリン・D・ルーズヴェルト(CV-42)」は1977年に退役、エレベーターの配置を改良された「コーラル・シー(CV-43)」も1990年に退役している。
スペックデータ | |
主造船所 | ニューポート・ニューズ(CV-41・CV-43) ニューヨーク海軍造船所(CV-42) |
基準排水量 (就役時/改装後) | 45,000t/52,500t |
満載排水量 (就役時/改装後) | 60,000t/65,200〜74,000t |
全長 (就役時/改装後) | 295m/298.4m |
全幅 (就役時/改装後) | 34.4m/41.5m(最大幅:72.5m) |
喫水 (就役時/改装後) | 10.1m/10.7m |
主缶 | フォスター・ホイーラー(Foster Wheeler)式罐・重油焚×12基 (圧力43kgf/cm² (610psi)、温度454℃) |
主機 | ウェスティングハウス式蒸気タービン×4基 GE製蒸気タービン×4基(CV-42) 推進器×4軸 |
出力 | 212,000hp(158MW) |
最大速力 | 33ノット |
航続距離 | 15,000海里(15ノット巡航時) 9,500海里/20ノット(SCB-110改装後) |
乗員 | 士官・兵員計4,104名 |
兵装 | 竣工時(改装で撤去): Mk.39 54口径5インチ(127mm)単装砲×18門 ボフォース 40mm機関砲×4連装21門 エリコンFF 20mm機関砲×68門 Mk.33 50口径3インチ(76mm)単装速射砲×9基(1940年代末) 改装後: Mk25「GMLS」8連装短SAM発射機×2基(シースパローを装備) ファランクスCIWS×2〜3基 |
C4Iシステム | 海軍戦術情報システム(NTDS)(CV-41(SCB-101/66改装後)) |
GFCS (竣工時) | Mk.37 GFCS×4基 |
レーダー (1980年頃) | AN/SPS-48C?三次元レーダー AN/SPS-49?長距離捜索用レーダー |
電子戦装備 (1990年時点) | AN/WLR-1?電波探知装置 AN/WLR-10/11レーダー警報受信機 Mk.36 SRBOC(Mk.137 6連装デコイ発射機×4基) AN/SLQ-17電波妨害装置(CV-41) AN/ULQ-6?電波妨害装置(CV-43) |
航空設備 | H4-1型油圧カタパルト×2基 Mk.5-0型アレスティングギア エレベーター×3基 (インボード式×2基(前後)、アウトボード式×1基(艦中部アイランド対側)) |
搭載機 | |
搭載数 | 130機(計画)/100機(実際)ジェット機65機〜68機 |
計画 | F4U-4、SB2C、F6F-5N/5P |
就役時 | F6F、F4U、SB2C、TBM |
朝鮮戦争前後 | F8F、F9F、FH-1?、F2H、FJ-1、FR?、F3D、AD、A3D、AM?、AJ?、 HO3S?、HUP |
アングルドデッキ化後 | F3H?、F4D、F8U、A4D、WF |
1960年代〜ベトナム戦争時 | F-4、A-6、A-7、E-2、UH-2、SH-3 |
ベトナム戦争後 | F/A-18A〜D、EA-6B、RF-4B |
同型艦 | |||||
艦番号 | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 | 退役 |
CVB-41 ↓ CVA-41 ↓ CV-41 | ミッドウェイ (USS Midway) | 1943.10.27 | 1945.3.20 | 1945.9.10 | 1992.4.11 |
CVB-42 ↓ CVA-42 ↓ CV-42 | フランクリン・D・ルーズヴェルト (USS Franklin D. Roosevelt) | 1943.12.1 | 1945.4.29 | 1945.10.27 | 1977.9.30 |
CVB-43 ↓ CVA-43 ↓ CV-43 | コーラル・シー (USS Coral sea) | 1944.7.10 | 1946.4.2 | 1947.10.1 | 1990.4.26 |
CV-44 | 予算の承認を得られず1943年1月11日キャンセル | ||||
CVB-56 | 予算の承認を得られず1945年3月27日計画中止 | ||||
CVB-57 |
*1 日本海軍では「大鳳?」「信濃」が飛行甲板を装甲化していた。
*2 ただし着艦はできないため、目標近くの友好国へ着陸するか、または制海権内で不時着水する必要があった。
*3 2023年現在はロナルド・レーガン(CVN-76)が横須賀を母港としている。