Last-modified: 2023-01-25 (水) 19:37:40 (136d)
【ミサイル艇1号】 †
JS PG-821 Class.
1990年代前半、日本の海上自衛隊が導入した高速ミサイル哨戒艇。
従来、沿岸での哨戒・海上阻止戦力としては魚雷艇がその任務に当たっていたが、時代は魚雷から対艦ミサイルへと変化していき、魚雷艇の後継として開発された。
船型はイタリアの「スパルヴィエロ(ソードフィッシュ)」級ミサイル艇をモデルとした全没型水中翼艇で*1、主武装には国産の90式艦対艦誘導弾と遠隔操作型の20mm機関砲を装備している。
しかし、地中海での運用を前提に設計されていた船体*2は日本近海の荒波に弱く、また、機関の構造上、中速域での航行が不可能であったり、船内に乗員の宿泊設備がないことなどから、不審船追跡など長距離の航海を行う任務には不向きであった。
更に、整備途中で仮想敵であったソ連が崩壊して冷戦も終結し、海上からの脅威が減少したという状況の変化もあって、建造は3隻で中断された*3。
(当初計画では18隻を建造し、ソ連太平洋艦隊と対峙する大湊・舞鶴・佐世保に6隻づつ配備する予定だった)
現在は3隻すべてが退役しており、本艇の後継としてはやぶさ型ミサイル艇が建造されている。
はやぶさ型では本級の弱点が改良され、モーターボートと同じ滑走型船体が採用された。
スペックデータ †
定員 | 11名 |
船型 | ハイドロフォイル型、アルミ合金製艇体 |
排水量 (基準/満載) | 50t/60t |
全長 | 21.8m(水中翼降下時) |
全幅 | 7.0m(水中翼除く) |
深さ | 3.5m |
喫水 | 1.4m(艇走時) |
主機関 | 翼走用推進:GE IHI LM500ガスタービン×1基 航走用推進:いすゞマリン製造6BD1TC 4サイクル直列6気筒ディーゼル×1基 |
出力 | 5,000hp(3.7MW)(ガスタービン) 180hp(0.13MW)(ディーゼル) |
推進器 | 荏原製作所300CDW型ウォータージェット推進器×1軸 スクリュープロペラ×1軸 |
最大速力 | 46kt |
航続距離 | 400海里(40kt巡航時) |
主要兵装 | 90式SSM連装発射筒×2基 JM61-RFS 20mm機関砲×1基 |
C4Iシステム | 海軍戦術情報システム(OYQ-8+リンク11) |
レーダー | OPS-18?対水上レーダー×1基 OPS-20?航海レーダー×1基 |
電子戦・対抗装備 | NOLR-9 ESM装置 Mk.137 6連装チャフ・フレア発射機×2基 |
同型艦 †
艦番号 | 艦名 | 主造船所 | 起工 | 進水 | 就役 | 退役 | 最終所属 |
PG-821 | ミサイル艇1号 (JS PG No.1) | 住友重工業 追浜造船所 浦賀工場 | 1991.3.25 | 1992.7.17 | 1993.3.22 | 2008.6.6 | 第1ミサイル艇隊 (大湊地方隊 余市防備隊) |
PG-822 | ミサイル艇2号 (JS PG No.2) | ||||||
PG-823 | ミサイル艇3号 (JS PG No.3) | 1993.3.8 | 1994.6.15 | 1995.3.13 | 2010.6.24 |
*1 さらに源流をたどれば、アメリカのペガサス級ミサイル艇が原型となる。こちらも地中海への配備を前提に設計されたが実現せず、米本土の内海などに配備された。
*2 全長はペガサス級の半分程度しかなかった。
*3 本艇の建造にあたり、メーカーでは専用の建造設備を用意していたが、この設備は同型艦5隻以上の発注があることを前提として作られたため、発注打ち切りにより損害を被ったという。