Last-modified: 2020-04-29 (水) 09:56:33 (263d)
【フラッグキャリア】 †
(National)Flag Carrier.
海運・航空業界において、特定の国家を代表する有力な貿易・運送業者を指す言葉。
電信技術が未発達な時代、所属を明らかにするために国旗を用いた慣習に由来する*1。
多くは国家予算による支援を含めた癒着関係にあり、これをもって業界の寡占を図っていた政商である。
従って、各国の商業法規が独占・寡占を禁止し取引を自由化する政策に傾く現代において、残存するフラッグキャリアは多くない。
海運分野では「定期船同盟行動憲章条約(コード条約)」の加盟国が承認した国家航路を担う海運業者を指していた。
しかしこの条約はやがて形骸化し、2008年をもって失効している。
航空分野では国際民間航空条約加盟国の多くが、国際航路を運行する国内企業を一社のみに絞った事に由来する。
この慣習による寡占は、第二次世界大戦終結後の1940年代後半から1970年代まで続いた。
1980年代以降は各国で国際航路への参入が自由化され、フラッグキャリアの経済特権は崩壊した。
関連:45/47体制
フラッグキャリアとされた航空会社の一例 †
- 日本航空(日本国)※2010年、(事実上の)経営破綻、2011年再建。
- パンアメリカン航空(アメリカ合衆国)※1991年経営破綻。
- 高麗航空(朝鮮民主主義人民共和国)
- ルフトハンザドイツ航空(ドイツ連邦共和国)
- エールフランス(フランス共和国)
- KLMオランダ航空(オランダ王国)
- ブリティッシュ・エアウェイズ(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(英国))
公共企業体としての側面 †
かつて多くの国家はフラッグキャリアを保護したが、これはもちろん、国家戦略上の理由による。
海運・航空輸送は兵站の欠くべからざる中枢であり、ゆえにフラッグキャリアは国家に統制されていた。
フラッグキャリアの多くは国営、ないし国家が大口株主となる半官半民企業であった。
また、利権の見返りとして官僚や退役した高級軍人を役員として迎え入れる「天下り」の要求を受ける事も多かった。
必然的に、フラッグキャリアは政府や軍隊に要請され、あるいは徴用されて公共サービスも請け負った。
フラッグキャリアが請け負った負担としては以下のようなものが挙げられる。