Last-modified: 2022-09-18 (日) 23:16:16 (78d)

【ドラケン】(どらけん)

SAAB35 "Draken". (スウェーデン語で「ドラゴン」の意)

スウェーデンのサーブ社が開発した戦闘機

サーブ29「トゥンナン」の後継として1949年から開発が始まり、1955年に原型機であるSAAB210「リルドラケン」が初飛行した。
当初は昼間迎撃機として開発されたが、電子装備などの改良により全天候迎撃機へ、また一部はマルチロールファイターへと変貌した。

基本的な設計要求はスウェーデンのFMV(Försvarets materielverk:防衛装備局(庁))が策定し、スウェーデン特有の国情に特化している。
飛行場でない公道上への離着陸を想定したSTOL性や、着陸後10分以内に再給油・再武装できる事など、独特の特性が多々ある。

機体は主翼に当時としては世界初のダブルデルタ翼や大型ストレーキを採用し、射出座席や電子機器なども国産のものが搭載された。
またチャイン?ドーサルフィン?ブレンデッドウィングボディ?形式の先駆けとしても知られる。

当初、エンジンは国産の「STAL Dovern」エンジンを搭載する予定であったが、開発計画の頓挫により、ロールス・ロイス製エイヴォン200/300系を基に、スヴェンスカ・フリグモーター(Svenska Flygmotor)社*1ライセンス生産品である「RM6B/C」を搭載した。
同じ目的で開発され同じエンジンを搭載するイングリッシュ・エレクトリック ライトニングと同様、自律始動可能な液体スターターが組み込まれ、外部機器の支援を受けずに緊急発進を可能にしていた。

艦載機ではないものの、防空壕に格納するため外翼部が容易に取り外せる構造で、短縮時の全幅は5m以下。
村落の牛舎や営農倉庫のような場所にも隠蔽できるほど小型軽量に作られていた。

反面、燃料搭載量の限られることから航続距離が短く、極端なデルタ翼により飛行安定性にも難がある(スーパーストール(縦スピン)を起こしやすい)。
フライバイワイヤー普及以前の設計であるためパイロットへの技術的要求も高く、事故喪失率も高かった。

最終的に615機が生産され、フィンランド・オーストリア・デンマークにも輸出された。
後継機であるグリペンの導入に伴い、2005年12月までに全機退役している。

スペックデータ

サーブ210
乗員1名
全長6.1m
全高N/A
翼幅4.88m
エンジンアームストロング・シドレー アダーターボジェット×1基(推力4.67kN)
最高速度644km/h


J35F「ドラケン」
乗員1名
全長15.35m
全高3.89m
翼幅9.42m
主翼面積49.2
空虚重量7,865kg
運用時重量11,000kg
最大離陸重量11,914kg
最大兵装搭載量2,900kg
エンジンスヴェンスカ・フリグモーター RM6Cターボジェット×1基
推力56.5kN(ドライ)/78.4kN(A/B時)
最高速度マッハ2.0
航続距離2,750km(ドロップタンク装備時)
戦闘行動半径304nm(Hi-Lo-Hi対地攻撃ミッション、機内燃料のみ)
388nm(同、増槽×2使用時)
実用上昇限度20,000m
上昇率199m/s
翼面荷重231.6kg/
推力重量比0.70
離陸滑走距離800m
固定武装AKAN*2 m/35(ADEN M55)30mm機関砲×1門(F型)/2門(弾数各100発)
兵装翼下および胴体下に下記兵装を搭載可能。
Rb24AAM
Rb27AAM
Rb28AAM
R-13MAAM(フィンランド向け)
Rakkaps*3 m/57空対空ロケット弾ポッド×2基(腹部パイロンに装備、J型のみ4基)
(srak*4 m/57 75mmロケット弾×19発)
srak m/56 135mmロケット弾×12発(主翼下パイロン×6)
454kg爆弾×6発(デンマーク向け)
偵察ポッド
増槽


主な運用国

  • スウェーデン
  • フィンランド
  • デンマーク(F-35(戦闘機型)・TF-35(練習機型)・RF-35(偵察機型)の名称で使用)
  • オーストリア:スウェーデン空軍の中古機24機。2005年退役。
  • アメリカ:飛行試験用に元デンマーク空軍機を少数運用したほか、米国立テストパイロット学校ではクリティカルコントロールの実習教材用として使用。

主な派生型

  • サーブ210:
    アダーエンジンを搭載する試作機(小型技術実証機)。
    当初、この試験機がドラケンと呼ばれていたが、J35Aがドラケンと名付けられたため、リルドラケン(小さなドラケンの意)に改名された。

    • サーブ210A:
      エアインテークが機首にある型。

    • サーブ210B:
      パイロットの視野を広げるため、エアインテークをコックピット脇に後退させるなどの改良を施した型。
      ドローグ・パラシュートも追加された。
      現在はリンシェーピングのスウェーデン空軍博物館に展示されている。

  • J35:
    原型機。
    エンジンはRBエイヴォン200を搭載する。

  • J35A(Adam)(90機):
    初期生産型で事実上の増加試作機。
    エンジンはスヴェンスカ・フリグモーターRM6Bを搭載。
    レーダーは当初搭載予定だった国産レーダー(LME社製PS-03)の開発が間に合わなかったため、PS-02/A*5を搭載する。

    • J35A1:
      「EBK*665」アフターバーナーと短い尾部を備える初期型。
      愛称は「アダム・ショート(Adam kort)」。

    • J35A2:
      新型アフターバーナー「EBK66」備え、尾部が延長された後期型。
      愛称は「アダム・ロング(Adam lång)」。
      尾部はテイルバンパーに替えて引き込み式尾輪を備える。

  • J35B(Bertil)(73機(一部資料では83機)):
    実質的な最初の実用型であり、迎撃戦闘機型。
    射撃管制装置の改修が行われ、Rb24及び対空/対地攻撃用に無誘導ロケット弾ポッド、100kgもしくは250kg爆弾の運用能力が与えられた。

    • J35B´(prim)(72機):
      初期型でJ35B1とも呼ばれる昼間戦闘機型。
      製造上の問題から、一部のサブシステムの納期が遅れ、当初予定されていたアビオニクスの一部しか搭載されないまま引き渡されることになった。
      そのため、レーダーを持たず、サーブJ29A/B用廃機から再利用したフェランティ社製Reflexsikte 4E/35ジャイロガンサイトを装備する。

    • J35B(J35B´から69機):
      後期型で全天候戦闘機型。
      J35B´にLME社製PS-03/AレーダーやS-7A-2レーダーガンサイト、その他当初予定されていた装備やアビオニクスが搭載された。

  • Sk35C(Cesar)(26機(試作機含む)):
    A型の胴体前半を複座型に交換する形で製造された複座の機種転換訓練型。旧称J35C。
    固定武装や射撃管制装置、レーダーは搭載されていないが、対地攻撃能力を持つ。
    また、必要に応じて簡単にJ35A規格に戻すことができた。

  • J35D(David)(120機):
    出力強化型。旧称J35B2。
    エンジンをRM6Bから改良型のRM6Cに変更し、機体内に搭載可能な燃料を増量している。

    • J35D1(シリーズ1:30機、シリーズ2:24機):
      初期型で昼間戦闘機型。
      J35B´と同様にレーダーを持たず、サーブJ29A/B用廃機から再利用したフェランティ社製Reflexsikte 4E/35ジャイロガンサイトを装備する。
      シリーズ1として導入された30機は後にS35Eに改修された。

    • J35D2(66機):
      後期型で全天候戦闘機型。
      PS-03/AレーダーとS-7A-2レーダーガンサイト、その他当初予定されていた装備やアビオニクスが搭載された。

  • S35E(Erik)(60機(改造含む)):
    D型から火器管制装置と固定武装を排除し、空いたスペースにカメラ9台*7を搭載した偵察型。
    主翼下に「カプセルKB」対策ポッドや腹部ハードポイントに装着されたポッドにアクティブ赤外線偵察システムを搭載可能だった。

  • J35F(Filip)(230機):
    スウェーデン空軍向けの全天候・最終生産型。
    レーダー誘導ミサイル直撃作戦に備えて、新型レーダーや誘導弾補助機器など改造し、ファルコン空対空ミサイルの搭載能力が付与された。

    • J35F1:
      機首下にIRSTセンサーを装備していない初期型。

    • J35F2:
      F型にヒューズN71 IRSTセンサーやPS-011改造型レーダーを追加した後期型。

  • J35G(Gustav)(70機予定):
    攻撃機型。Rb05空対地ミサイルを搭載予定であった。計画中止。

  • J35J(Johan)(64機):
    1987〜1991年の間、F型に機体寿命延長を実施した改修型。
    電子機器の近代化や燃料搭載量の増量、エアインテーク下にAIM-9パイロンの増設が施された。
    1998年配備開始。

  • サーブ35H(Helge)(原型機1機):
    スイス空軍向けに提案されたJ35Dの輸出型。
    Fpl 35-5(J35A試作機)をJ35D規格に改修したデモンストレーターが製作されたが、同時期に売り込みが行われたフランスのミラージュ3をスイス空軍が採用したため採用されず。

  • サーブ35X(Xerxes):
    J35D・J35Fの輸出型。

  • サーブ35XD:
    デンマーク向け輸出型。機内燃料や武装の搭載量が増加している。
    戦闘機型F-35が20機、複座練習機型TF-35が11機及び偵察型のRF-35が生産された。

    • F-35:
      戦闘機型。

    • RF-35:
      偵察機型。Sk35Cに似たカメラノーズを持つ。

    • TF-35:
      複座練習機型。機関砲1門を装備。

  • サーブ35FD:
    デンマーク向け単座攻撃機型。計画のみ。

  • サーブ35FD HÖG:
    デンマーク向け単座攻撃機型。計画のみ。
    ウェポン・デリバリー・ナビゲーション・システム(WDNS)を搭載することが計画されていた。

  • サーブ35S(Sigurd):
    フィンランド向け輸出型。

    • サーブ35XS:
      フィンランド向け輸出型(戦闘機型)。
      フィンランドのヴァルメト社によりライセンス生産された。

    • サーブ35FS:
      フィンランドに売却されたJ35F1の名称。

    • サーブ35BS:
      フィンランドに売却されたJ35Bの名称。
      上級練習機や整備士の教育用として使用された。

    • サーブ35CS:
      フィンランドに売却されたSk35Cの名称。訓練機として使用された。

  • サーブ35XV:
    ベネズエラ向け輸出型。計画中止。

    • サーブ35G1:
      戦闘機型。

    • サーブ35G2:
      サーブ35XDをベースにした攻撃機型。

    • サーブ35GT:
      複座練習機型。

  • サーブ 35Ö(Östen):
    スウェーデン空軍のD型を再生整備したオーストリア向け輸出型(戦闘機型)。

  • 西ドイツ空軍(当時)向け輸出型(型式不明):
    核兵器の運用能力を与えられた戦術攻撃機型。
    ミラージュ3ライトニング等とともに提案されたが、西ドイツ空軍はF-104Gを採用した。


*1 後のボルボ・エアロ→GKNエアロスペース。
*2 automatkanon(自動砲)の略称。
*3 raketkapsel(ロケットポッド)の意。
*4 sprängraket(高火力ロケット)の略称。
*5 トムソンCSF社の「シラノ?」レーダーをエリクソン社がライセンス生産したもの。
*6 efterbrännkammare(アフターバーナー)の略称。
*7 機首に5台、胴体に4台(直立と斜めに設置)。

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