Last-modified: 2023-01-22 (日) 19:08:15 (138d)
【チーフテン】 †
FV4201 "Chieftain*1".
1960年代に英国で開発・生産された主力戦車。
英国陸軍には1963年から配備が始められ、1971年までに約900両が生産・配備された。
本車は元々、英国陸軍の主力戦車だった「センチュリオン」とその支援用重戦車「FV214『コンカラー』」の両車を統合するという目的で開発が始まった。
開発当時、対戦車ミサイルや歩兵用の携帯対戦車火器が急速に発達したことにより、西側諸国の主力戦車*2は軒並み105mmライフル砲を装備し、防護を機動力で補おうとしていた。
しかし、本車はその潮流に反して強力な55口径120mmライフル砲L11A5を備え*3、強力な防護装甲を誇る重戦車として登場した。
当時は保守的な設計と評価されたが、現代からみれば機動性を除けば、むしろ先進的と言える。
事実、現代戦の経験が豊富なイスラエルが購入を希望したほどである*4。
その後も装甲や火器管制装置の改良が加えられながら、後継のチャレンジャーが登場するまで、NATO軍の第一線で運用された。
イギリス以外ではイラン、ヨルダン、オマーン、クウェート等の中東諸国に採用された。
スペックデータ †
乗員 | 4名 |
全長 | 10.75m |
全高 | 2.32m |
全幅 | 2.82m |
戦闘重量 | 55.0t |
懸架方式 | ホルストマン方式 |
エンジン | レイランド L60No.4Mk.7A 2ストローク対向ピストン式6気筒液冷ディーゼル (出力750hp/560kW) |
登坂力 | 60% |
超堤高 | 0.9m |
超壕幅 | 3.14m |
最大速度 | 48km/h(路上) |
行動距離 | 450km |
兵装 | L11A5 55口径120mmライフル砲×1門(弾数54発) L7 7.62mm機関銃×2挺(弾数4,000発) 6連装発煙弾発射器×2基 |
装甲 | 砲塔前面:120〜145mm 砲塔側面:上端120mm〜下端196mm 砲塔後面:35mm 砲塔上面:25mm 車体前面上部:127mm 車体前面下部:76mm 車体側面:50mm 車台側面:38mm 操縦席上面:35mm 機関室上面:20mm 底面:16mm 装甲スカート:13mm |
派生型 †
- 基本型
- FV4201P1〜P7:
プロトタイプ。エンジンはL60Mk.1またはMk.4(出力485hp(362kW))を搭載。
- チーフテンMk.1:
試験・訓練用の先行量産型。L60Mk.4エンジン(出力585hp(436kW))を搭載。
11両がチーフテンAVLBに改造された。
- チーフテンMk.1/2:
チーフテンMk.2基準に改良した型。L60Mk.4A2エンジン(出力650hp)を搭載。
- チーフテンMk.1/3:
エンジンをL60Mk.5A(出力650hp)に換装した型。訓練専用。
- チーフテンMk.1/4:
エンジンをL60Mk.6A(出力650hp)に換装し、改良型の測距機関銃を装備した型。
訓練用のみ。
- チーフテンMk.1/2:
- チーフテンMk.2:
初期生産型。主砲はL11A2またはL11A3を搭載。
エンジンはL60Mk.4A2(出力650hp)を搭載する*5。
- チーフテンMk.3:
指揮官用の新型キューポラや2段式エアクリーナー、コヴェントリー・クライマックス社製H30補助発電機を装備した改良型。
エンジンはL60Mk.6A(出力650hp)を搭載。
装備の違いにより、Mk.3/2、Mk.3/3とイラン向けの輸出型であるMk.3/3(P)がある。
- チーフテンMk.4:
イスラエル国防軍向けにチーフテンMk.3の燃料搭載量を増加させた型。試作のみ。
2両制作されたうちの1両はクレーンを装備し、Kirkcudbright訓練場で使用された。
- チーフテンMk.5:
最終生産型。
チーフテンMk.3/3をベースにエンジンをL60Mk.8A(出力750hp(560kW))に換装し、NBC防護に改良を施した。
- チーフテンMk.5/5(P):
Mk.5のイラン向け輸出型。
エンジンは後にL60Mk.10A(出力750hp(560kW))に改良された。
- チーフテンMk.5/2K:
Mk.5のクウェート向け輸出型。
- チーフテンMk.5/5(P):
- チーフテンMk.6:
Mk.2をMk.5規格に改修した型。
TLSを装備した型はMk.6/Lと呼ばれる。
- チーフテンMk.7:
Mk.3およびMk.3/SをMk.5規格に改修した型。
TLSを装備した型はMk.7/Lと呼ばれる。
- チーフテンMk.7/2C:
Mk.7のオマーン向け輸出型。
- チーフテンMk.7/2C:
- チーフテンMk.8:
Mk.3/3をMk.5規格に改修した型。
TLSを装備した型はMk.8/Lと呼ばれる。
- チーフテンMk.9:
Mk.6の射撃統制装置を改良型に換装した型。
- チーフテンMk.10:
Mk.7にMk.9相当の改修を施し、主砲前半部にゴムを使用した複合装甲「スティルブリュー(Stillbrew)(SCPP*7とも)」を付加した型。
- チーフテンMk.11:
Mk.8の近代化改修型。
Mk.10相当の改修に加え、NBC防護の改良および砲塔左舷のサーチライトをTOGS(Thermal Observation and Gunnery System,熱線探知・火器管制装置)に変更した。
- チーフテンMk.12:
Mk.5にMk.11と同様の改修を実施した型。
- チーフテンMk.12/13:
Mk.11からの改良が計画されていた。
チャレンジャー2が開発されたことでキャンセルされた。
- FV4201P1〜P7:
- 試作型
- チーフテン800:
チーフテンMk.3/3Pをベースにしたテスト用車両。試作のみ。
チョバムアーマーを装備し、新型パワートレイン*8を搭載した。
- チーフテン900:
チーフテンMk.3/3Pをベースにしたテスト用車両。試作のみ。
チョバムアーマーを装備し、新型パワートレイン*9と「センタウロ(Centaur)」火器管制装置を搭載した。
- チーフテン マインクリーナー:
地雷処理車型。試作のみ。
- チーフテン セイバー:
2連装の30mm機関砲を装備した砲塔を搭載した自走対空砲型。試作のみ。
- チーフテン ウェポンキャリア:
155mm榴弾砲を搭載した型。
- チーフテン クレイジー・ホース:
チーフテンMk.1から砲塔を撤去し、"Skyleader"無線操縦装置を搭載した自走標的車型。
ストーマー?指揮車と組み合わせて使用される。
- チーフテンSID*10:
視認性低下、ステルス性増強を目的としてチーフテンに刷毛状の泥除けを追加するなどしたデモンストレーション用車両。
- チーフテン800:
- 派生型
- 輸出・海外型
- ハリド:
「シール1」がヨルダンで採用された際の呼称。
- シール1:
イラン向け改修型。走行装置をチャレンジャー1と共通化する改良が行われている。
イラン革命により契約がキャンセルされた。
- シール2:
イランでの独自改修型。
車体後部が傾斜しており、砲塔側面のサーチライトが無くなっているなどの違いが見られる。
- Mobarez:
イランでの独自改修型。
車体側面の装甲およびサイドスカート形状が異なり、エンジン出力が強化されている。
- ハリド:
*1 「族長」もしくは「酋長」の意味で、イギリスで「Chieftain」と言った場合、特にスコットランド高地氏族をはじめとする大英帝国隷下の族長や酋長を指す。
*2 M60(米)・レオパルト1(旧西ドイツ)・AMX-30(フランス)・74式戦車(日本)など。
*3 しかし、この砲は分離弾薬方式で弾頭と装薬が分離しており、装填手の負担を軽減する様に配慮されていたが、結果的に発射速度は低下してしまった。
*4 ただし、イギリス政府は本車の輸出を許可しなかった。
*5 1969年に改良型のL60Mk.5A(出力650hp)に換装された。
*6 Tank Laser Sight(戦車用レーザーサイト)の略。
*7 Stillbrew Crew Protection Package.
*8 ロールス・ロイス?社製 CV8 TCAエンジン(出力800bhp(600kW))とTN12 Mk.5全自動変速機。
*9 ロールス・ロイス社製コンドル900Eエンジン(出力900bhp(670kW))とTN12-1000完全自動変速機。
*10 Signature Integration Demonstratorの略。
*11 Armoured Vehicle Royal Engineersの略。
*12 Armoured Recovery Vehicleの略。
*13 Armoured Recovery and Repair Vehicleの略。
*14 Armoured Vehicle-Launched Bridgeの略。