【スラヴァ】 †
カーラ級の後継として開発された、旧ソ連/ロシア・ウクライナのミサイル巡洋艦*1。
ロシアではProject1164(1164号計画)型「アトラーント*2」と呼ばれ、「航空母艦の撃滅者」の異名を持つ。
1番艦の名称が判明する前はNATOコードでは「クラシナ級」と呼ばれていたが、判明後は旧名を取って「スラヴァ級*3」と呼ばれる事になる。
対空・対艦攻撃能力を重視して設計されたこの艦は、1976年にニコライエフ造船所で起工・1979年に進水・1983年就役と実戦配備までに7年の歳月がかかった。
なお、本級の設計は多くの面でカーラ級(1134B型)をベースとしている。
より大型のキーロフ級とともに強力な防空力・打撃力によって、仮想敵の空母機動部隊への対抗兵力の一翼を担うよう構想されていた。
そのため、武装面でもS-300V「フォールト」(SA-N-6『グランブル』)SAM・9K33M「オサーM(SA-N-4『ゲッコー』)」短SAM・P-500「バザーリト(SS-N-12『サンドボックス』)超音速SSM(18発)・553mm対潜魚雷等と対水上戦を重視した構成となっている。
特にP-500については最高速度M2.2で飛行し、射程も550km以上(OTH目標)と、脅威的な性能を持っている*4。
この連装発射機は中央両舷甲板上に4基ずつ並べた独特の外見となっている。
甲板後部には飛行甲板があり、Ka-27/Ka-28「ヘリックス」/Ka-25「ホーモン」等の対潜ヘリコプター1機を搭載出来る。
現在のところ4隻が建造*5*6され、うち3隻はロシア海軍で、1隻はウクライナ海軍で使用されている。
なお、艦名は2番艦「アドミラル・フロタ・ロボフ」が1986年に「マーシャル・ウスチーノフ」に、1995年に1番艦「スラヴァ」と3番艦「チェルヴォナ・ウクライナ」は、「モスクワ」「ヴァリャーク」へとそれぞれ改名された。
性能諸元 †
艦級 | スラヴァ級ロケット巡洋艦(ミサイル巡洋艦) |
主造船所 | ニコラーエフ第200造船工場(現:61コムナール記念造船工場) |
全長 | 187m |
全幅 | 20.8m |
喫水 | 7.5m |
排水量 (基準/満載) | 9,300t/11,300t |
推進方式 | COGAG推進 |
機関 | M70ガスタービン×2基(10,000shp/7,500kW)(巡航機) M8KFガスタービン×4基(27,500hp/20,500kW)(加速機) 補助蒸気タービン×2基(8,000hp/6,000kW) |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 |
機関出力 | 110,000shp |
速度 | 32Kn |
航続距離 | 7,500海里/18ノット巡航時 |
定員 | 476名 |
兵装 | AK-130 70口径130mm連装速射砲×1基 AK-630M 30mmCIWS×6基 B-203A 8連装VLS×8基 (S-300F「フォールト」(SA-N-6『グランブル』)SAM用) ZIF-122 連装ミサイル発射器×2基 (4K33「オサーMA(SA-N-4『ゲッコー』)」短SAM用) SM-248 連装ミサイル発射機×8基 (P-500「バザーリト」(SS-N-12『サンドボックス」』)SSM用*7) RBU-6000「スメルチ2」?対潜迫撃砲×2基 5連装553mm対潜魚雷発射管×2基 |
艦載機 | Ka-25/27対潜ヘリコプター×1機 |
レーダー | MR-600「ヴォスホード*8」Lバンド3次元レーダー×1基 MR-710「フレガートM*9」Sバンド3次元レーダー×1基 (3番艦以降はMR-750「フレガートMA」を搭載。) MR-212*10航海用レーダー×1基 |
FCS | MR-184*11×1基(主砲用) MR-123*12×3基(CIWS用) 3P41*13×1基(SAM用) 4P33*14×2基(短SAM用) アルゴン*15×1基(SSM誘導用) |
ソナー | MG-335「プラーチナ*16」船底装備ソナー×1基 MG-325「ヴェガ*17」可変深度ソナー×1基 |
同型艦 †
ロシア海軍 | |||||
艦番号 | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 | 所属艦隊 |
121 | モスクワ <<Москва>>*18 | 1976. | 1979. | 1982.12.30 | 黒海 (旗艦*19) |
055 | マーシャル・ウスチーノフ <<Маршал Устинов>>*20 | 1978. | 1982. | 1986.9.15 | 北洋 |
011 | ヴァリャーク <<Варяг>>*21 | 1979. | 1983. | 1989.12.25 | 太平洋*22 |
- | ロシア*23 | 1988. | 建造中止 1990.解体 | ||
- | アドミラール・フロータ・ソヴェーツコヴォ ・ソユーザ・ゴルシュコーフ <<Адмирал Флота Советского Союза Горшков>> | 1990. (計画) | 建造中止 | ||
- | ヴァリャーク(I) <<Варяг>> | キャンセル | |||
- | セヴァストポリ <<Севастополь>> | キャンセル |
ウクライナ海軍 †
*1 ロシアではロケット巡洋艦と呼ばれる
*2 Атлант:ギリシア神話の巨人「アトラス」のロシア語読み。
*3 Слава:ロシア語で「栄光」の意味。
*4 あくまでカタログスペックで、詳細は不明。
*5 当初は8〜20隻の製造が予定されていたが、財政的な理由により4隻に留まる。
*6 また、改良型の11641型は5隻が計画されたものの、ソ連崩壊により1番艦「ロシア」が起工された段階で計画中止となり、同艦も解体された。
*7 更新後はP-1000「ヴルカーン」SSMを搭載。
*8 NATOコード「トップ・セイル」
*9 NATOコード「トップ・プレート」
*10 NATOコード「パーム・フロント」
*11 NATOコード「カイト・スクリーチ」
*12 NATOコード「バス・ティルト」
*13 NATOコード「トップ・ドーム」
*14 NATOコード「ホップ・グループ」
*15 NATOコード「フロント・ドア」
*16 NATOコード「ブルー・ホーン」
*17 NATOコード「メア・ティル」
*18 旧名スラヴァ<<Слава>>。
*19 管理上は、第30艦艇師団の第11対潜艦旅団に編入されている。
*20 旧名アドミラル・フロタ・ロボフ<<Адмирал флота Лобов>>。
*21 旧名チェルヴォナ・ウクライナ<<Червона Украина>>。
*22 管理上、沿海州諸兵科連合小艦隊に編入されている。
*23 旧名オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ<<Октябрьская революция>>
*24 旧名:コムソモーレツ→アドミラル・フロータ・ロボフ <<Адмирал Флота Лобов>>。
*25 2001年就役予定だったが、予算不足で完成度95パーセントの最終艤装状態のまま係留・放置されている。