Last-modified: 2017-01-26 (木) 13:26:01 (241d)

【ゲリラ戦】(げりらせん)

進撃してくる敵軍に対し、小規模な待ち伏せ奇襲遊撃を頻繁に行う戦術
鬱蒼とした森林や建て込んだ市街地といった、見晴らしが悪く交戦距離が短くなりがちな地形が好まれる。

襲撃回数を増やすために兵員が各地に分散し、それぞれが散兵戦を行う。
小銃手榴弾程度の軽武装で素早く敵を不意打ちし、即座に逃亡に移る。
攻撃すればどうしても居場所が発覚するため、逃走時に不便な重火器はほとんど使わない。

ただし、現代戦ではRPGSAMなどの歩兵携行火器も必要とされる。
徒歩移動が難しい環境では民間車両と見分けのつかないテクニカルで重火器を運ぶ事もある。

大部隊の侵攻を食い止めるには力不足だが、長期の消耗戦では一方的に敵戦力を減耗させる事ができる。
兵力や兵器の性能差もあまり問題にならないため、特に非対称戦争において有利となる。

逆に言うと、自軍が極度に不利な情勢でなければ実行する意味がない。
兵士が逃げ隠れするという事は、統率が行き届かず、情報共有が遅く、集結が困難である事を意味する。
つまり、正規軍が前線に集結して戦う場合に比べれば明らかに展開が遅い。
展開が遅いという事は、戦争全体を通じて摩擦が増え、無意味な流血が増える事を意味する。
これは防御に徹する限りは有効だが、ゲリラ側が攻勢に出る場合には致命的な弱点となる。

ゲリラは本質的に散兵戦であり、敵軍による占領を遅らせる防御の戦術である。
敵地を奪還して逆転勝利を目指すつもりなら、攻勢のための戦力と兵站は別途に用意する必要がある。
ゲリラはあくまで再編成や停戦交渉まで保てば良い人間の盾であって、戦争を終わらせる戦力ではない。

これは必然的に、温存すべき精鋭・最新鋭はゲリラには回されないという事を意味する。
ゲリラはしばしば正規軍の兵士ではなく、民兵レジスタンスによって組織される。
そしてまた兵站資源は可能な限り節約され、ゲリラには雑多で劣悪な装備が渡される。
任務に必要ないというのも一面の事実だが、必要な物資についても枯渇状態に陥る事は珍しくない。

関連:ベトナム戦争

ゲリラ戦と戦争犯罪

ゲリラは偽装と隠蔽工作を行動の主軸とし、それが成功するか否かがほぼ生死の境目となる。
よって、ゲリラは死にものぐるいで逃げ、隠れ、群衆に紛れ、そして物陰から突然の狙撃を仕掛けてくる。
一般的に言って、こうした態度は戦術に関する見識のない人々から見て「卑劣」に見える。
そう見えるだけでなく、実際に非合法戦闘員とみなされて略式の処刑に処される事も少なくない。

ゲリラに遭遇した侵攻側にも「卑劣」な敵に対する憎悪が醸成され、これを抑えるのは極めて困難である。
目の前の現地人が全てゲリラに見えるほどの深刻な心理状態に置かれる兵士も決して少なくない*1
こうした極限状況下で行動するにあたって、軍隊に理性的自制を期待するのはどうあっても無理がある。
すなわち、無意味な*2虐殺や破壊行為、捕虜の虐待などの戦争犯罪を誘発する事になる。

加えて、そもそもゲリラを組織し運用する側にも構造上の犯罪性がある。
ゲリラは可能な限り決戦兵力の損耗を抑えて戦況を維持するための人間の盾である。
当然ながら人命の損耗もこれに勘案されるから、ゲリラに用いるべきは軍事的利用価値の低い人間である。
それが予備役であるなら、まだ良い。だが大抵は子供や老人を使う所まで追い詰められる。
これは十分な訓練を受けていない素人が戦う事を意味し、それは必然的に戦争犯罪を助長する。
多くのゲリラは戦闘員テロリストの区別を知らないし、戦争法規を守らないどころか知りもしないのだ。

実際のところ、侵略者が村落を攻撃して放火・虐殺・強姦に及ぶ事例は枚挙に暇がない。
だから「侵略者から身を守るために市民も武器を手に取れ」というのは不自然な主張ではない。
なぜ村落が攻撃されるかといえば、そこにゲリラが潜んでいる可能性があるからだが。

こうしたリスクを鑑みて、現代の列強はゲリラ戦という戦術自体をテロ行為として非難する。
ただし、これを人道的見地からの主張であると考えるのは必ずしも正しくない。
そうした主張を行う国家は、ゲリラ戦を批判する事によって明白な戦略的利点を得ているからだ*3

だからといって、ゲリラ戦に対抗するための虐殺や破壊行為が正当化されるわけでもない。
敵がテロリストであろうと、国際法違反の攻撃や民間人への誤射は厳然として戦争犯罪である。
侵攻側はそうした暴虐を可能な限り抑止・黙殺しようとする一方、ゲリラ側はこれをプロパガンダとして最大限に利用する。

結局の所、そのような事態を招いた責任が誰に帰結するかは政治工作と戦争の成果に左右される。
ゲリラ側の指導者が捕縛されて絞首刑に処された場合、侵攻側の罪はほとんど問題にならない。
一方、戦線が膠着したまま講和する必要に迫られた場合、ゲリラ戦による罪はおおむね許容される*4
潔白な当事者は存在しないものと推定されるため、法的な正義が徹底的に追求される事はまずない。


*1 なお悪い事に、民間人のふりをして偵察や破壊工作を行う非合法戦闘員も皆無ではない。
*2 偽るべからざる戦争の現実として、軍事的意味のある虐殺はおおむね許される。そして軍法会議が「意味」を捏造するための会議と化す事もある。
*3 相手国がゲリラ戦を躊躇うなら戦術的有利は明白である。
  一方で、相手国がテロ行為に踏み切るならば、相手国首脳をテロリストとして断罪する法的根拠を得て戦後処理が有利になる。

*4 外交的には。自国民に「多大な付帯被害を承知の上でゲリラ戦を行った責任」を問われて政権が倒れる可能性は大いにあり得る。

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