【エンタープライズ】 †
enterprise.
「事業」や「冒険心」などを意味する抽象名詞で、艦艇などの名称としてたびたび用いられる。
本項目では、アメリカにおける代表的な例を挙げる。
CV-6 USS Enterprise(後にCVS-6) †
ヨークタウン級航空母艦の2番艦。「ビッグE」の愛称で呼ばれることもある*1。
3隻建造されたヨークタウン級の中で、唯一太平洋戦争中の撃沈を免れた艦である。
太平洋戦争中の主要な海戦のほぼ全てに参加し、日本軍からの攻撃で十数回の損傷を被ったがその度に修理を施し、終戦までに日本の艦艇を70隻以上沈めたといわれる。
また、大戦中で最多の20の従軍星章(バトルスター)を得たほか、空母として初めて大統領部隊感状を受賞、後に海軍部隊褒章も受賞し両方を受賞した唯一の艦艇となった。
それ以外でもイギリス海軍から他国籍の海軍艦艇として唯一、英国海軍本部ペナントを受章するなど、第二次世界大戦で最も勲章を受けたアメリカ海軍の軍艦となった。
性能諸元 | |
造船所 | ニューポート・ニューズ造船所(ヴァージニア州)*2 |
設計排水量 | 20,000t |
基準排水量 (建造時/改装後(1943年)) | 19,800t/21,000t |
満載排水量 (建造時/改装後(1943年)) | 25,500t/32,060t |
全長 (建造/改装後(1943年)) | 251.38m/252.19m |
水線長 | 234.69m |
全幅 (建造/改装後(1943年)) | 33.37m/34.87m |
水線幅 | 25.32m |
喫水 (建造時/改装後(1943年)) | 7.45m/8.51m |
飛行甲板 | 全長:248.07m 全幅:29.73m |
主缶 | バブコック&ウィルコックス社製重油専燃ボイラー×9基 |
主機 | パーソンズ式蒸気タービン×4基 4軸推進 |
出力 | 設計:120,000馬力 公試:120,517馬力 |
速力 | 設計:32.5ノット 公試:33.65ノット |
航続距離 | 12,500海里/15kt |
乗員 | 士官/兵員2,279名(士官:49名、艦船:1,519名、航空:711名) 士官/兵員2,919名(ピーク) |
艦載機*3 | 固定翼機:80〜90機 最大98機 F4F/F6F/F4U/SBD/SB2C/TBD?/TBFなど |
レーダー | CXAM-1 2次元レーダー |
設備 | エレベーター×3基 カタパルト×2基(飛行甲板) |
装甲 | 舷側:102mm 甲板:38mm 司令塔:102mm |
母港 | サンディエゴ(カリフォルニア州) |
武装 | |
建造〜 | Mk.12 38口径5インチ(127mm)単装砲×8基 75口径1.1インチ(28mm)機銃×16門(4連装×4基) ブローニングM2 12.7mm単装機銃×24基 |
1942年 4月〜 | 5インチ単装砲×8基 28mm機銃×16門(4連装×4基) エリコン FF 20mm単装機銃×30基 |
1942年 6月〜 | 5インチ単装砲×8基 28mm機銃×20門(4連装×5基) 20mm単装機銃×32基 |
1942年 9月〜 | 5インチ単装砲×8基 ボフォース 40mm機銃×16門(4連装×4基) 28mm機銃×4門(4連装×1基) 20mm単装機銃×44基 |
1943年 10月〜 | 5インチ単装砲×8基 40mm機銃×40門(4連装×6基、連装×8基) 20mm単装機銃×50基 |
1945年9月〜47年2月 | 5インチ単装砲×8基 40mm機銃×54門(連装×5基、4連装×11基) 20mm単装機銃×16基 |
CVAN-65 USS Enterprise(後にCVN-65) †
世界初の原子力空母。上記のCV-6と同様に「ビッグE」と呼ばれることがある。
キティホーク級の船体設計をもとに、8基のA2W型加圧水型原子炉を搭載して建造された。
化石燃料による蒸気タービン推進では成し得なかった長大な航続能力と加速力を実現し、原子力艦船のメリットを証明した。
しかし、8基もの原子炉を搭載する本艦はコスト・パフォーマンスが非常に悪く、同型艦が建造されることはなかった。
このため、続くニミッツ級では、大型化した原子炉を2基搭載した。
当初は艦橋の周囲に"SCANFAR"フェイズドアレイレーダーシステム*4の電子走査アレイアンテナを固定装備し、艦橋上には「ウェブ」と称されるECMアンテナに囲まれた仏塔型構造物が設置され、外観上の大きな特徴となっていた。
しかし、SCANFARシステムは巨大で整備性も悪く信頼性に問題があったため、1982年の改修時に撤去され、代わりにAN/SPS-48 3次元レーダーおよびAN/SPS-49 2次元レーダーに換装された。
2009年にキティホークが退役した後、本艦はアメリカ海軍最古参の現役軍艦となり「OLD NAVY JACK」の艦首旗*5を掲げていた。
2015年に予定されていた「ジェラルド・R・フォード」級航空母艦の就役まで現役にとどまることとなっていたが、方針の変更により、2012年12月1日付けで不活性化され、事実上の退役となった(書類上での除籍は2017年2月3日)。
今後は「原子力艦再利用プログラム」により、原子炉の廃炉処置及び撤去を行い、その後、船体は解体される予定である*6。
また、艦名の「エンタープライズ」は、現在開発中のジェラルド・R・フォード級航空母艦の3番艦(後述)に命名される予定だという。
性能諸元 | |
艦名 | エンタープライズ(CVAN/CVN-65 USS Enterprise) |
艦種 | エンタープライズ級原子力空母 |
起工 | 1958/02/04 |
進水 | 1960/09/24 |
就役 | 1961/11/25 |
不活性化 | 2012/12/01 |
退役 | 2017/02/03 |
造船所 | ニューポート・ニューズ造船所(ヴァージニア州) |
排水量 (基準/満載) | 75,700t/93,284t |
全長 | 336m |
全幅 | 76m(艦幅:40m) |
喫水 | 10.7m |
機関 | ウェスティングハウス A2W加圧水型原子炉×8基 ウェスティングハウス製ギヤードタービン×4基 |
推進器 | スクリュープロペラ×4軸 |
出力 | 280,000hp(210MW) |
速力 | 33.6kt |
乗員 | 士官/兵員4,600名 |
武装 | 竣工時:非武装 改修(1967年)時: Mk.25 8連装SAM発射機×2基(シースパローBPDMS用) 改修(1979〜1982年)時: Mk.29"GMLS" 8連装SAM発射機×3基(シースパローIBPDMS用) ファランクス20mmCIWS×3基 最終改修(2005年)時: RIM-116「RAM」21連装発射機×2基 ファランクス20mmCIWS×2基 |
艦載機 | 固定翼機/回転翼機×84機 |
レーダー | 竣工時: SCANFAR 3次元レーダーシステム -AN/SPS-32捜索用×4面1基 -AN/SPS-33追尾用×4面1基 AN/SPS-12 2次元(対空捜索用・SCANFARのバックアップ。1968年に搭載) 改修後: AN/SPS-48? 3次元式×1基 AN/SPS-49? 2次元式×1基 AN/SPS-65 捕捉用(シースパロー用。AN/SPS-10 2次元レーダーのアンテナを流用) 最終改修(1991〜1994年)時: AN/SPS-48E 3次元式×1基 Mk.24"TAS"捕捉用×1基 |
電子戦・ 対抗装備 | AN/SLQ-32? 統合電子戦装置 Mk.36"SRBOC"デコイ展開システム |
航空設備 | 飛行甲板(長さ×幅):331.6m×76.8m 蒸気カタパルト:C-13 mod.1(90メートル長)×4基 (飛行甲板上×2基、アングルドデッキ上×2基) アレスティングギア:Mk.7-3 アレスティングワイヤー:5本(後に4本に削減) ブライドル・リトリーバー×3基(艦首甲板×2基、アングルドデッキ×1基)*7 エレベーター×4基(長さ×幅:26×16m) |
母港(最終) | ノーフォーク海軍基地(ヴァージニア州) |
所属(最終) | 艦隊総軍 第12空母打撃群 |
CVN-80 USS Enterprise †
ジェラルド・R・フォード級原子力空母の3番艦に予定されている艦名。
2015年に建造が開始され、2025年の就役を予定している。
1960年代のジョン・F・ケネディ(CV-67)以後、アメリカ海軍の航空母艦には大統領経験者や海軍の功労者に由来する命名がなされてきているが、予定通り命名されればこの慣例を破るケースとなる。
OV-101 Enterprise †
NASAのスペースシャトル計画において製作された「オービター(軌道船)」1号機。
アメリカの人気TVドラマ「スタートレック」に登場する、同名の宇宙船にちなんで名づけられた。
当初はアメリカ合衆国憲法発布200年を記念して「コンスティテューション」と名づけられる予定だった。
スタートレックのファンがNASAに「エンタープライズ」と名付けようというキャンペーンを張ったという逸話がある。
本機は実用機ではなく、実用機が地球に帰還・着陸する際の滑空飛行を試すための試験機。
外観はほぼ同一だが、宇宙に飛び立つための設備は備えていなかった。
実用機として改修する予定があったが、予備部品の枯渇により実装は見送られた。
当初は地上試験機「チャレンジャー」の改修が優先された。
その後、チャレンジャーが爆発事故で喪失。補填として「エンデバー」が建造され、これにより予備部品が枯渇した。
退役後はワシントンD.Cにある国立航空宇宙博物館で展示された後、イントレピッド海上航空宇宙博物館へ移された。
*1 他に「ラッキーE」、「グレイゴースト」、「ギャロッピングゴースト」の愛称がある。
*2 現:ノースロップ・グラマン・ニューポート・ニューズ。
*3 露天駐機を含む。
*4 AN/SPS-32監視レーダーおよびAN/SPS-33追尾レーダーから成る。このシステムを搭載したのは本艦と原子力巡洋艦ロングビーチ?のみである。
*5 現在、この旗は原子力空母「ニミッツ」(1975年就役)に承継されている。
*6 「世界初の原子力空母」という点から、博物館船として保存すべきとの意見もあるが、原子炉を取り出す際に船体を切断せねばならないため、船体丸ごとの保存は難しいという。
なお、2024年現在、解体工事は止まっているという情報もある。
*7 1964年の第1回燃料棒交換の際にアングルドデッキ側のみ撤去。